「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

今のモラルで戦前を見る過ちをおかすな 2005・11・24

2005-11-24 06:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「教科書問題は一言で尽きる。日本の悪口を書いた教科書を日本の中学生に与えるわけにはいかぬと

 一蹴すればいいのである。」

 「戦後五十年のうち、四十なん年だまっていてにわかに騒ぎだしたのは首相や大臣が侵略云々と謝罪

 したのがきっかけで、謝罪するなら補償せよと言いだしたのである。」

 「今ごろ騒ぎだしたのは『金ほしさ』のためだといえばこれも誰もうなずく。

  こんなことみな知っているのにマスコミの多くは言わない。一犬虚に吠えて万犬実を伝う。慰安婦を

 軍が強制連行したというのはその虚である。

  戦前は貧しかったから娘を売る親がいた。娘は器量次第で安くまた高く売れた。むろん金は前渡しで

 年季奉公である。一人前の芸娼妓は外地ならはるかに高く売れたから自分から進んで行くものもあった。

  朝鮮は内地より貧しかったから募集すればいくらでも集まった。集める男は女衒また桂庵のたぐいで

 ある。慰安婦は部隊ごとにいたが従軍看護婦、従軍記者とはちがう。従軍というのは間違いである。

 兵隊は一回いくらで買うと娼婦はそれをためて郷里に送金した。

  これがないとどこの国の兵士も強姦略奪をほしいままにする。それを防ぐために軍は民間人に任せて

 商売させたのである。応募するものがいくらでもいるのに強制連行するわけがない。

 連行ならソ連が本家で、六十万人あまりの兵士をシベリアへ連行して過酷な労働を強い六万人以上を死

 なせた。ソ連は詫びたか、わが新聞は補償せよというキャンペーンをしたか。」


 「人も国も平気であざむきあう。」


 「今のモラルで戦前を見る過ちをおかすな。」


  (山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)



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