「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・03・30

2014-03-30 07:00:00 | Weblog


今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

「目下の急務大型間接税について言う。
 賛成である。むしろ超大型にして全部間接税にしてくれ。中途はんぱは失敗する。間接税には酒がある、タバコがある、ガソリンがある、ほかにまだあるだろうが知らない。ウイスキー日本酒しょうちゅうの如きは半ばは税金であるが、誰も税金を飲んでいるとは思わない。ひたすらメートルをあげているだけで、なかの一人がその半ばは税金だぞと言っても相手にしない。なお言いつのれば腹をたて、よせ、酒がまずくなるとけんかになるから言うものはない。そもそも言う発想がない。
 全部間接税にすればこの世は無税国家になる、税を払いながら払っている感じが絶無なのだからこんないいことはない。その代り例外があってはならない。マッチひと箱ローソク一本買ってもなかに間接税がふくまれている。ふくまれていることが大事なので、同じ間接税であっても料飲税のように勘定にあとから加えてはならない。加えるから気がつく。気がつけばいやな気がする。ごまかそうとする。
 ためしに大蔵省の役人に試算させたらあらゆるものから三%とれば日本国はそれだけで運営できるという。いや一%でいいという。
                                     〔Ⅴ「『無税国家』への一案」昭63・3・10〕」

(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)



1946年生れの作家の猪瀬直樹さん、1969年の学生時代に、信州大学の全共闘議長として「白ヘル」のリーダーだった人です。人みな心変わりする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする