今日の「お気に入り」は、結城昌治(ゆうき・しょうじ)さん(1927-1996)の「死もまた愉し」から。
「十七、八年前ですから、私が五十になるかならないかのころです。ある人の年譜を調べ
ているうちに、いろいろな人の享年が気になってしようがない。思いつくままに調べはじ
めたら、あれもこれもで際限なく広がってしまいましたが、意外な発見もあって、けっこ
う楽しみました。メモが残っているので、主だった人を紹介します。
二十代では樋口一葉、立原道造が二十四、北村透谷二十五、石川啄木二十六、吉田松
陰、小林多喜二が二十九。三十代に入って、三十一が中原中也とシューベルト、坂本龍馬
三十二、近藤勇三十四。正岡子規三十五―――よく知られている子規の写真を見ると、病身
のせいか六十か七十くらいに見えます。子規がいなかったら、現在の俳句があるかどうか
疑問です。三十五までに、それだけの業績を残したというのは脱帽するしかありません。
芥川龍之介は自殺ですが、やはり三十五歳です。尾崎紅葉、モーツァルト、モジリアニも
三十五。ロートレック、マリリン・モンロー三十六。太宰治三十八、ショパン、キューバ
革命のチェ・ゲバラ三十九。
四十歳にはポー、カフカ。」