「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

カタリコトリ夜の風 Long Good-bye 2021・09・14

2021-09-14 05:06:07 | Weblog


   今日の「 お気に入り 」は、「 放哉俳句 」を 、「 句稿 」から 、いくつか 。


    「 用事の有りそうな犬が歩いてゐる 」

    「 奥から奥から山が顔出す 」

    「 風よ俺を呼んで居るな風よ 」

    「 机の足が一本短かい 」

    「 犬のお椀に飯が残つて居る 」

    「 噴水力のかぎりを登りつめる 」

    「 ゐもり冷やかな赤さひるがへす 」

    「 蛙蛙にとび乗る 」

    「 嫁入りのお供が山みち酔つてもどる 」

    「 吹けばとんでしまつた煙草の灰 」

    「 うす霜の朝脊中こ寒く」

    「 きかぬ薬を酒にしよう 」

    「 一人の道が暮れて来た 」

    「 墓にもたれて居る脊中がつめたい 」

    「 一枚の舌を出して医者に見せる 」

    「 一丁の冷豆腐たべ残し 」

    「 元日のみんな達者馬も達者 」

    「 芸者の三味線かついで行く月夜 」

    「 お医者の靴がよく光ること 」

    「 ことこと番茶を煮てもてなす 」

    「 たもとになんにもは入って居ない 」

    「 星がふるやうな火の見やぐら 」

    「 お月さんもたつた一つよ 」

    「 白壁雨のあとある 」

    「 カタリコトリ夜の風がは入つて居る 」


  ( 出典:「 尾崎放哉句集 」池内 紀編 ( 岩波文庫 ) ㈱岩波書店 刊 )





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