今日の「 お気に入り 」は 、種田山頭火 ( 1882 - 1940 ) さん の 小文 「 歩々到着」 。
「 禅門に 『 歩々到着 』といふ言葉がある 。それは一歩一歩がそのまゝ到着であり 、一歩は一歩の脱落
であることを意味する 。一寸坐れば一寸の仏といふ語句とも相通ずるものがあるやうである 。
私は歩いた 、歩きつづけた 、歩きたかつたから 、いや歩かなければならなかつたから 、いやいや
歩かずにはゐられなかつたから 、歩いたのである 、歩きつづけてゐるのである 。きのふも歩いた 、
けふも歩いた 、あすも歩かなければならない 、あさつてもまた 。――
木の芽草の芽歩きつづける
はてもない旅のつくつくぼうし
けふはけふの道のたんぽぽさいた
◇
どうしようもないワタシが歩いてをる 」
( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )


