今日の「 お気に入り 」 。
「 げんのしようこ といふ草は腹薬として重宝がられるが 、何といふつゝましい草であらう 。梅の花を
小さくしたやうな赤い花は愛らしさそのものである 。或る俳友が訪ねて来て 、その草を見つけて 、子
供のために摘み採つたが 、その姿はほゝゑましいものであつた 。
げんのしようこのおのれひそかな花と咲く
萩がぼつぼつ咲き初めた 。曼殊沙華も咲きだした 。萩の花は塵と呼ばれてゐるやうに 、曼殊沙華の
やうに 、花としてはさまで美しくはないけれど 、何となく捨てがたいところがある 。私は萩を見る
たびにいつも故人一翁君を思ひ出す 。彼の名句 ―― たまさかに人来て去ねば萩の花散る ―― は歳月
を超えて私たちの胸を打つ 。」
【 筆者註: 文中の「故人一翁君」とは、「 清水一翁( しみず いちおう )、
? – 1928 )」、一翁は出家後の法名 。大正時代の初め 、
層雲で活躍 。】
「 今日はあまりの好晴にそゝのかされて近在を散歩した 。そして刈萱を頂戴した 。
素朴な壺に抛げこまれた刈萱のみだれ 、そこには日本的単純の深さが漂うてゐる 。何の奇もないと
ころに量ることのできないものがある 。
露草の好ましさも忘れてはならない 。まいあさ 、碧瑠璃の空へ碧瑠璃の花 、畑仕事の邪魔になら
ないかぎりはそつとしておきたい 。
だんだん月が澄みわたつてくる 。芋が肥え枝豆がおいしくなるにつれて 、月も清く明らかになる 。
とかく寝覚がちの私は夜中に起きて月を眺める 。有明月の肌寒い光が身にも心にも沁み入つて 、お
もひでは果もなくひろがる 、果もない空のやうに 。
欲しいな 、一杯やりたいな 、 ――そんなとき 、酒を求めないではゐられない私は 、亡き放哉坊の
寂しい句をくちずさむ 。 ―― こんなよい月をひとりで観て寝る 。
私にもひよいと戯作一句うかんだ 。芭蕉翁にはすまないが 。 ――
一つ家に一人寝て観る草に月 」
( 出典: 種田山頭火著 村上護 編 小崎侃・画 「 山頭火句集 」ちくま文庫 ㈱筑摩書房 刊 )
子供のころ 、母が土瓶で煮出していた「 ゲンノショウコ 」、部屋に漂う薬草の独特の匂いを思い出す 。
明治生まれの母は 、右手に煮沸消毒した注射器を持って、自らの左腕に漢方薬「 ミノファーゲン 」の
「 静脈注射 」をする 、今にして思えば変わった人 、医者でも 、看護師でもないのに 。
因みに 、インターネットの フリー百科事典「 ウィキペディア( Wikipedia )」には 、以下の解説があり 、
とても興味深い 。漢方じゃないんだ 。 夏の季語 。・・・ 飲んでみようかな ・・・ お薦めかも 。
「 ゲンノショウコ( 現の証拠 、学名: Geranium thunbergii )は 、フウロソウ科フウロソウ属の
多年草 。日本全土の山野や道端に普通に見られる 。中国植物名は 、童氏老鸛草(どうしろうかん
そう)。近い仲間にアメリカフウロ 、老鸛草 などがある 。」
「 名称
古来より 、下痢止めや胃腸病に効能がある薬草として有名で、和名の由来は 、煎じて飲むとその
効果がすぐ現れるところからきている 。和名ゲンノショウコは「 実際に効く証拠 」を意味し 、
「 現(験)の証拠 」と漢字書きにされる 。日本では 、現の証拠 のほか 、玄草(げんそう)と
いう名でも流通している 。
別名として、果実の形をろうそくに見立ててロウソクソウや 、種子を飛散させた後の果実の形が 、
神輿の屋根のように見えることから 、ミコシグサ( 神輿草 )、フウロソウとミコシグサを合わ
せてフウロソウミコシグサ( 風露草神輿草 )とも呼ばれる 。また 、葉の形にちなんでネコアシ
( 猫足 )、ウメに似た花形と茎が細く伸びる姿からウメズル( 梅蔓 )ともよばれることもある 。
花言葉は 、『 心の強さ 』である 。」
( 中 略 )
「 薬草
ゲンノショウコはドクダミ 、センブリなどと共に 、日本では古くからの三大民間薬の一つに数え
られ 、下痢止めの薬草として知られている 。江戸時代から民間薬として用いられるようになり 、
『本草綱目啓蒙』( 1803年 )にも取り上げられ 、『 根苗ともに粉末にして一味用いて痢疾
( りしつ )を療するに効あり 、故にゲンノショウコと言う 』との記載が見られる 。
現代の日本薬局方にも『 ゲンノショウコ 』として見える 。ただし 、伝統的な漢方方剤(漢方薬)
では用いない。」
( 中 略 )
「 採取と飲用
一般に開花期である 7 - 8 月頃に根を除いて刈り取り 、洗って十分水気を除いて 、天日で乾燥
させたものが生薬になり 、ゲンノショウコ と呼んでいる 。日本薬局方 では茎・葉をゲンノショ
ウコ 、その粉末をゲンノショウコ末という 。若葉のころは 、トリカブトやキンポウゲ類の有毒
植物に似ているため注意するが 、夏の開花期であれば花で確認できる 。
優れた健胃・整腸作用を持ち、下痢、便秘、食あたり、慢性の胃腸疾患に効能があり、時間をかけて
十分煎じることで薬効成分が抽出される 。下痢止めとしては 、ゲンノショウコ 1日量 10 - 20 グラム を
約 500 - 600 cc の水で煎じ約半量まで煮詰めたものをさらに濾して、温かい状態で1日3回分けて服用
する方法が知られている 。下痢に使用するときは 、なるべく量を多くした方が良いと言われ 、便秘に
使用するときは 、1日量 5 - 10 グラム と量を減らして煎じ服用するとされる 。冷えた煎じ汁は 、整腸
薬となる 。扁桃炎 、口内炎 、のどの痛みには 、煎じ汁をうがい薬として使用することが知られている 。
湿疹やかぶれには 、煎じ液を冷まして冷湿布に用いられる場合もある 。慢性的な胃腸の弱い状態など
ではお茶代わりに飲用する場合もある 。利尿目的の場合は 、1日 10 - 15 グラム を、500 cc の水で 、
5 - 10分 煎じ 、3回に分けて食間に服用する 。高血圧予防には 、ゲンノショウコ10グラム 、ドクダミ
10グラム 、少し炒った決明子 5グラム を煎じて常用すると効くとされる 。また 、ゲンノショウコ
100グラム 、ヨモギ 100グラム を混ぜて浴湯料として使ったゲンノショウコ風呂は 、冷え性 、しぶり腹
に効くとされる 。
下痢 、便秘に使用するのは日本独特の使い方で 、中国ではこのような症状には使用されていなかった 。
中国には日本のゲンノショウコはないが 、キクバフウロ 、ミツバフウロ 、イチゲフウロなどを老鸛草
(ろうかんそう)と称して 、神経痛に用いる 。」