今日の「 お気に入り 」は 、作家 司馬遼太郎さんの 「 街道をゆく 」から
「 大和石上 ( いそのかみ ) へ 」の一節 。
備忘の為 、ついでのことに 抜き書き 。
脇道ながら 、京都の「 深泥池 ( みどろがいけ ) 」の話題 。
いずれ 古代 出雲族 や 鴨族 の話が出てくる予感 。
引用はじめ 。
「 ・・・ 深泥池のことである 。京都から鞍馬へゆく街道が上賀茂
に入ったあたりにある古い池で 、池の面に蓴菜 ( じゅんさい ) が
繁茂している 。蓴菜とは汁の み につかうあのトロリとした粘液質
の物質をかぶった食用水草のことで 、上方では如才のない 、いい
加減な口上手のことを『 あの人はジュンサイなお人や 』という 。
『 ジュンサイなこと言いなはんな 』など『 増補俚言集覧 』とい
う本に 、『 じゅんさいとは大阪詞 ( ことば ) 。じゃらじゃら言う
こと 。蓴菜より出たる詞なり 』とあるから 、ひょっとするとジュ
ンサイを口中に入れたときの感触から 、ある種の人間典型を連想
してできたことばかもしれない 。上方語には 、そういう感覚的な
ことばが多い 。
『 深泥池とは 、カモの ? 』
『 ええ 、カモの深泥池です 』 」
( ´_ゝ`) ^^^ ( ̄- ̄)
「 京都の北郊の土着のひとびとは 、下鴨 、上賀茂という 、古代鴨族
が住んでいたと思わしいこの地域を総称して単にカモという 。モに
アクセントがあって 、カモゥと聞える 。近江の鴨地帯は古くから蒲
生の字をあてた 。あの発音である 。ついでながらカモとは 、出雲族
のことであろう 。
ところで 、
『 カモの空を飛んでいるスズメもツグミもみなわしの所有 ( もん )
やどう 』
と 、明治のころカモの在所在所に触れまわった商業上の傑物がいて 、
そのあたり一帯の捕鳥権 ( ? ) を獲得したという 。ついでにその
傑物は深泥池の土手に立ち 、青みどろの淀む池の面を指さし 、
『 この池に生えとる蓴菜もわしのものやど 』
と 、宣言した 。当時 、カモのひとびとは不覚にもツグミや蓴菜が
金になるとは考えていなかったらしく 、カモの村々は彼の独占的採
取権を黙認した 。
『 それがわしの祖父や 』
と 、カモにうまれた私の古い友人が 、カモを駆けずりまわった祖
父君のことを英雄伝を語るかのように語ってくれたことがあって 、
そのとき私は大いに感心した記憶があるが 、要するに深泥池につい
ての私の知識はその程度のものである 。 」
引用おわり 。
寡聞にして 、この本を読むまで 、古代イヅモ族のことも古代カモ族
のことも 何一つ 存じませんでした 。