お昼の休憩のため、ふとテレビをつける。半端にニュースが聞こえてきた。
なんでもトラックに乗せられたヒツジを狙った犯行があったとか…。
バイク二人乗りが後方から走るトラックに近づき、ひとりが荷台に乗り上がる。
ヒツジをひきおろすといったスタントマン顔負けの犯行のようす。
盗まれたヒツジ何と2◯◯匹?だったか?
テレビでは イスラム圏で近づく犠牲祭に使うヒツジを盗んだと言う。
犠牲祭と言うと。昨年十二月にイラン入りした際、モサッハム月にあたり、アーシューラーを経験。
何日も前から街を練り歩く楽隊。
アーシューラーの一週間も前になると、夕刻にはヒツジのは行った煮込みライスがふるまわれる。
アーシューラー前日にはモスク前でも 人々は菓子や食べ物を振る舞う。
バラ水を人々や地に振りかけ、まるでケガレを浄化しているように感じる。
男たちはホセインの痛みを自分にも受けるためか、左胸を右手げんこつで強く撃ったり、あるものはチェーンで体を打つ。
基本通り、真冬だが、裸足の男。
女たちは男たちの群れとは離れ、涙ながらに右手で左胸にリズムを取る。
「あぁ!ホセイン!」(言葉はわからない)
熱気あふれる ひげ面の男。
それをみまもる眉深き女。
何の疑いも無い、大きな目のこどもたち…。
アーシューラー前日、午後八時。
トラックに積まれたウシ二頭、ヒツジ三頭が広場に引きずられて皆の前によこたわる。
脚は縄でしばられ、身動きはとれない。
それでも何かを感じてか、足掻き、モウモウと地響きのような声を出す。
人々に深刻な表情はなく、皆、笑っている。
なぜなら 地を穢し、犠牲を捧げることによって、いいことが起こると信じて止まないのだから。
しばらくして「ウシ解き」がニ人ばかり現れる。
ウシを取り巻く輪ふたつ。
輪は少しあとずさりし、ウシは素早く首をかっ切られる。
輪の真ん中にはどろどろとした血が流れ、たまっている。
人の輪はすぐにふたつ目の輪に流れる。
夜、モスクの薄明かりに光る血は 宗教の重みを感じさせる。
次は ヒツジ。
ウシと同じように素早く機微をきられ、素早くトラックに積み込まれる。
けしてその場で血を滴らせよう(血抜きしよう)という訳では無いが、動脈からは値が滴り落ちるようだ。
何とも初めて見たアーシューラー前日の神事は、わたくしには印象が強すぎて、その夜は眠れなかった。
イスラム圏で近づく犠牲祭に使うヒツジを盗んだと言うニュースを見て、何となく損なことを思い出した。
アーシューラーは毎年日が変わる。
今年は十二月十六日頃。
今年もイランに行くが、私がテヘランに着いた頃には アーシューラーも落ち着いた頃だろう。
ただ五日間続くであろうタージイエ(受難劇)は地方でもみつかるかもしれない。
危険が無さそうであれば見学可能かもしれない。
だが年々親日感情が薄れるので、期待はできない。
無事一番を願って、無理はしない予定。
そういうと イスラエルでは家電18万円分を買うと、ヒツジをプレゼントされると言う。
イスラエルではイスラム教徒17%。
イスラエルのニュースはネット検索で出てきてくれた。
学生時代 奄美大島郡 喜界島に行った折、島民に 驚くばかりにもてなされたことが有る。
「次に来た時にはヒツジかヤギをつぶすから…。」
と島民たちは口を揃える。
ヒツジは日本の南の島までも特別の食べ物のようだ。