2010年度 170冊目 『江戸の性風俗』笑いと情死のエロス
氏家幹人 著
講談社
現代新書 1432
1998/12/20
222ページ 756円
去年も一昨年も経験したが、今年も読書スランプの谷間に入り込む。
こんな時は焦らず慌てず…だ。
だが、今日はとりあえず 『江戸の性風俗』笑いと情死のエロスを読了。
結構まじめに描かれているが、この本は電車の中では読めないな^^
菱川師宣の浮世絵(Ahaha) や曲亭馬琴『小説比翼文』の挿絵など、さほどと言うか全くきわどくない絵が本のわずか挿入されているだけで、後は著者 氏家幹人さんの記述。
良寛のひとり遊びの二十代の著者の深読みの正当性始まり、後家の川柳のそこぬけなおもしろさ、複数回に渡る徳冨蘆花への思い入れ、宮田登『ケガレの民俗誌』、中国医学に置けるケの部分の薬化(ふんどしなど)、男性愛、柳田國男『のしの起源』青年団の肌合わせ、口のもの→同じ釜の飯 など、関心のある記述が多い。
大正昭和初期といったつい最近までの 痴漢的感覚(? Ahaha) は、民俗学者である赤松啓介の『夜這いの民俗学 夜這いの性愛論』 筑摩学芸文庫、 『差別の民俗学』 筑摩学芸文庫などで、詳しく触れられている。
死体見物云々では心中に触れられていたが、多くの歌舞伎や文楽での「心中もの」が好まれた背景を考えると納得がいくところである。
数日ぶりで本を読んだが、『江戸の性風俗』がきっかけとなり、読書スランプ打破を目指したい。マイペースに戻れることを望む。
内容紹介
猥談に興じ春画を愉しむおおらかな性。男色は輝きを失い恋は色へとうつろう。性愛のかたちから江戸精神史を読みかえる。
[武士道的エロスの残り香]――美少年から美女へ。性の嗜好の変化といってしまえばそれまでです。しかし、衆道の世界で彫琢された恋の作法は、それが完成度の高いものだっただけに、対象が美少年から美女に変わったからといって、容易に新しい作法を生み出し切り替えることができなかったのでしょう。かくして男と女の色恋の世界が本格的に花開くようになってからも、究極の恋のゆくえはいつも死に向かわざるをえなかったのだと思います。元禄16(1703)年初演の近松門左衛門作「曾根崎心中」の結びは「未来成仏疑ひなき恋の手本となりにけり」。このあからさまに仏教的な鎮魂の言葉の背景にも、私などは、どうしても武士道的エロスの残り香を嗅ぎ取らずにはいられないのです。――本書より
目次
●良寛さんと「ひとり遊び」
●川路家の猥談
●京都慕情――雅びとエロス
●春画の効用
●薬としての男と女
●男色の変容
●肌を許すということ
●恋のゆくえ
●日本性愛史における江戸の可能性