8/12
「天皇のお供をしたる夫のこと追いかけたくも躊躇いつると()」
「天皇オホキミの 行幸イデマシのまに 物部モノノフの
八十伴男ヤソトモノヲと 出でゆきし 愛ウツクし夫ツマは
天アマ飛ぶや 軽の路より 玉たすき 畝火を見つつ あさもよし
紀路に入り立ち 真土山 越ゆらむ君は 黄葉の 散り飛ぶ見つつ
親しけく 吾アをば思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと
あそそには かつは知れども しかすがに 黙モダも得あらねば
我が背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど
手弱女タワヤメの 吾アが身にしあれば 道守ミチモリの 問はむ答を
言ひ遣らむ すべを知らにと 立ちてつまづく
(神亀元年甲子キネエネ冬十月カミナツキ、紀伊国に幸イデマせる時、
従駕ミトモの人に贈らむ為、娘子に誂アツラへらえて笠朝臣金村がよめる
歌一首、また、短歌 #4.0543)」
「夫送る郎子の身になりかわり笠金村が読める歌なり()」
「後れ居て恋ひつつあらずば紀の国の妹背の山にあらましものを
(反し歌 #4.0544)」
「留守をして恋しがらずにあなた行く紀の妹背山ならましものを()」
「我が背子が跡踏み求め追ひゆかば紀の関守い留めなむかも(#4.0545)」
「わが夫を追い求めては行ったなら紀伊の関守われ止めんかも()」