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「筑前の志麻に至りて船泊し月の明かりに心緒を詠う(筑前国ツクシノミチノクチノクニ志麻郡の韓亭カラトマリに舶フネ泊てて三日ミカ経ぬ。時に夜月ツキの光、皎々流照テリワタレリ。奄タチマち此の華ケハイに対ヨりて、旅の情ココロを悽噎カナシみ、各オノモオノモ心緒オモヒを陳ノべてよめる歌六首)」
「おほきみの遠の朝廷ミカドと思へれど日ケ長くしあれば恋ひにけるかも(歌六首 1/6 #15.3668 右の一首は、大使ツカヒノカミ)」
「大君は遠くのに朝廷と思っても長くたったら恋しくもあり()」
「旅にあれど夜は火灯し居る我を闇にや妹が恋ひつつあるらむ(歌六首 2/6 #15.3669 右の一首は、大判官オホキマツリゴトヒト)」
「旅といえ夜灯をともしいる吾を闇で吾が妻恋しがるかな()」
「からとまり能古(のこ)の浦波立たぬ日はあれども家に恋ひぬ日はなし(歌六首 3/6 #15.3670)」
「韓泊まり能古の浦波たたない日あっても家を恋ぬ日はなし()」