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「海の神の櫛笥クシゲにしまいたる真珠のような大事な娘(海ワタツミの神の命のみ櫛笥クシゲに貯ひ置きて斎イツくとふ玉にまさりて思へりし)」
「わが子だが世の道理とてあなたとともに雛に離れる(吾が子にはあれどうつせみの世の理コトワリと大夫マスラヲの引きのまにまにしなざかる)」
「越をさし延ハふ蔦のごと別れては沖の船さえ面影に見えます(越道をさして延ハふ蔦の別れにしより沖つ波撓トヲむ眉引マヨビキ大船のゆくらゆくらに面影にもとな見えつつ)」
「このように焦がれていては老いぼれの身には堪える耐えられぬかも(かく恋ひば老いづく吾が身けだし堪アへむかも()」
「海ワタツミの 神の命の み櫛笥クシゲに 貯ひ置きて 斎イツくとふ 玉にまさりて 思へりし 吾が子にはあれど うつせみの 世の理コトワリと 大夫マスラヲの 引きのまにまに しなざかる 越道をさして 延ハふ蔦の 別れにしより 沖つ波 撓トヲむ眉引マヨビキ 大船の ゆくらゆくらに 面影に もとな見えつつ かく恋ひば 老いづく吾が身 けだし堪アへむかも(京師ミヤコより来贈オコせる歌一首、また、短歌 4220)」
「かくばかり恋しくしあらば真澄鏡見ぬ日時なくあらましものを(反し歌一首 4221 右の二首は、大伴氏坂上郎女が、女子ムスメの大嬢オホイラツメに賜ふ。)」
「このように恋しいのなら真澄鏡見るごとあなたを見ていたいもの()」