9/25
「廣縄と池主遇って宴して萩を愛でては歌をうたえり(正税帳使掾マツリゴトヒト久米朝臣廣繩、事畢りて退任マケトコロニカヘれり。越前国コシノミチノクチノクニの掾大伴宿禰池主が館に適ユき遇ひて、共に飲楽ウタゲす。その時久米朝臣廣繩が、芽子ハギの花を矚ミてよめる歌一首)」
「君が家に植ゑたる萩の初花を折りて挿頭カザさな旅別るどち(#19.4252)」
「池主の家に植ゑたる萩の花を折って挿頭カザそう旅出するとき()」
「立ちて居て待てど待ちかね出でて来て君にここに逢ひ挿頭しつる萩(大伴宿禰家持が和ふる歌一首#19.4253)」
「そわそわと待ちかね来たがここで逢い萩を挿頭しにしてるあなたは()」
9/24
「家持が都に行かん前日に縄麿宴設け送らん(便ち大帳使を附サヅけ、八月の五日に、京師に入ノボらむとす。此に因りて四日、国の厨クリヤの饌モノを介内藏伊美吉繩麻呂が館に設マけて、餞ウマノハナムケす。その時大伴宿禰家持がよめる歌一首)」
「しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも(#19.4250)」
「雛びたる越に五年も住みました立ち別れるが惜しい宵です()」
「旅立ちは皆集まって縄麿が盃捧ぐに答える歌と(五日、平旦ツトメテ上道ミチダチす。仍カレ国司次官スケより、諸の僚ツカサッカサまで、皆共ミナ視送りす。その時射水イミヅの郡コホリの大領オホキミヤツコ安努君廣島アヌノキミヒロシマが門の前の林の中ウチに、預め饌餞の宴マケを設ナす。時に大帳使大伴宿禰家持が、内藏伊美吉繩麻呂が盞サカヅキを捧ぐる歌に和ふる一首)」
「玉ほこの道に出で立ち行く吾アレは君が事跡コトトを負ひてし行かむ(#19.4251)」
「都へと旅立つわたしは君がした業績もさげ報告をせん()」
9/22
「秋彼岸菩提の種を巻く日かな()」
「子供らと遊びまろびつ貌もなき仏となりぬ円空仏()」
「御菩提のたねや植えけん此寺にみのりの秋ぞ久しかるべき(宇喜多秀家、関ヶ原で破れた武将、八丈島に流された)」
9/22
秋の心情を思いつくまま歌にしました。
「彼岸過ぎ異人が闇に現れて昔のままに微笑みており()」
「汗かいて林の歩道を歩ければ風に混じりて落ち葉が舞える()」
「身体には得体の知れぬものありて苛立ち物を投げるわたしは()」
「ねばならぬことを悔いいる秋の夜に老いと一緒に持ち行く覚悟()」
「『できることだけやればいい』阿闍利いう『そうなんですか』と生返事する()」
9/21
「天雲のそきへの極み吾が思モへる君に別れむ日近くなりぬ(#19.4247)」
「天雲の遠くの果てにわが思モえる君と別れる日が近づきぬ()」
「老人の代わりに種麻呂伝えたる唐に行く別れ悲しみ(阿倍朝臣老人オイヒトが、唐モロコシに遣はさるる時、母に奉れる悲別カナシミの歌一首 右の件クダリの八首歌ヤウタは、伝へ誦める人、越中の大目オホキフミヒト高安倉人種麻呂なり。但し年月の次ナミは、聞ける時の随マニマ、載アげたり。)」
「(七月の十七日、少納言に遷任ウツされて、悲別カナシミの歌を作みて、朝集使掾久米朝臣廣繩が館に贈貽オクれる二首 既に六載の期に満ち、忽ち遷替の運に値ふ。是に旧に別るる悽かなしみ、心中に欝結ムスボホれ、涕の袖を拭ノゴふ。いかにか能く旱カハかむ。因カレ悲しみの歌二首を作みて、莫忘の志を遺せり。其の詞ウタに曰く 右、八月の四日贈れりき。)」
「あら玉の年の緒長く相見てしその心引き忘らえめやも(#19.4248)」
「あらたまの長い年月会ってきたその心引かれて忘れられない()」
「石瀬野イハセノに秋萩凌シヌぎ馬並ナめて初鷹猟ハツトガリだにせずや別れむ(#19.4249)」
「石瀬野イハセノに秋萩押し付け馬並べ鷹狩りもせず別れるんだね()」