真鶴は遠くに鳳凰木の赤い花が咲き乱れているのを見つめた。
今、雅博の元にいけばきっと女として最高の幸せを得られるだろう。
しかし、国土は真鶴という女よりも、
寧温という偽りの性を必要としていた。
「真鶴、寧温、私は今、誰になればいいの?」
「テンペスト(上)」より
雅博は鳳凰木の花が満開に咲き誇っているのを見届けるために、
ここを訪れた。
残された最後の思い出を懐かしむように雅博の手がそっと垂れた枝先に触れる。
「不思議なものだ。
想い出は色褪せると思っていたのに、ますます鮮やかに蘇る。
私は捨てた心に今でも囚われているのかもしれない…」
「テンペスト(下)」より
雅博は何度も想い出を振り払おうとする。
しかし癒えない傷は化膿したまま塞がる気配もない。
痛みだけが雅博の気持ちを知っている。
苦しみだけが雅博の過去を覚えている。
雅博は寧温に見られていることも省みずに鳳凰木に額を押しつけて崩れた。
「真鶴さんに会いたい。
一目、一目会えば琉球から去れるのに……」
「テンペスト(下)」より
今日、キレイに咲いている鳳凰木を見つけました。
あいにくの曇り空がちょっと残念でしたが
鳳凰木はテンペストのキーモチーフの一つ。
テンペストの恋模様のメイン舞台は三重城となっていますが
「鳳凰木の下」は第2の舞台といってもいいでしょう。
デイゴ、ハイビスカス、ブーゲンビリア、
そしてこの鳳凰木。
沖縄にはやっぱり「朱」が花がよく似合います。