■西のアザナ■
那覇港を埋め尽くすように碇泊する大艦隊は王宮からもはっきりと肉眼で捉えられた。
「おいおい今度は大艦隊だぞ」
多嘉良が物見台の西のアザナから那覇港を見下ろしている。
黒い船団に埋め尽くされた那覇港は無数の橋が架かっているように見えた。
すぐに多嘉良の袖が引っ張られ、交代しろと次々と役人たちが這い上がってくる。
列強の船には慣れている王府だが、これだけの大艦隊の入港は前代未聞だ。
那覇港の収容能力を遥かに超えている。
「一体今度は何を要求するつもりだ?」
「大丈夫。評定所筆者たちが今度も上手くやってくれるさ。
おい、喜舎場親方だ。道を開けろ」
噂を聞きつけ西のアザナにやってきた朝薫は、硬い表情をしていた。
―――寧温。君の言う通り、王宮が狙われたよ。
「喜舎場親方、なに暗い顔してるんですか。
いつも通りのらりくらりとかわしてやればいいじゃないですか。
がはははは」
多嘉良も他の役人たちもいつもの列強訪問だと高をくくっている。
だが、朝薫にはこれが通常の異国船入港でないことはわかっていた。
「評定所筆者と表十五人衆をすぐに全員招集しろ。
非番の者も呼び出すんだ!」
「テンペスト(下)」より
はい、幕末の重要なターニングポイント、ペリーによる黒船来航。
黒船艦隊が浦賀湾に現れる前に、琉球に来ている…というのは有名な史実。
その黒船来琉の場面からお届けしました~。
那覇の町並みが一望でき、その向こうの海と、慶良間諸島、 沖縄はどこにいても海が見えます。
さて、西のアザナは展望台みたいになっています。
視線を右にやるとなんとまぁ読谷村の残波岬まで見えます