道徳心・背徳心

2時半の就寝だったのに、3時半に目が覚めた
もう一度寝ようと努力するも、目は冴え渡る
不幸中の幸いに、休みの日なのでそのまま起きていることにして
いつものデニーズへ

自転車にまたがり、ペダルを漕ぎ出してすぐ
道路の真ん中に財布を発見した
COACHの長財布だった
ドキッとして辺りを見回した
夜明け前の4時、こんな時間にその道には滅多に人は通らないのだろう
だから道のど真ん中に、財布が落ちたままになっている
拾い上げ、胸の高鳴りを感じながら自転車置き場に戻る
（誰もいないが、さすがに道の真ん中で財布をあける勇気はなかった）
入っている金額によっては、もっらってしまおうかな…なんて考えながら財布を開く
……
現金は数千円しかはいっていない

「チッ」と、心の中で舌打ち

免許証もある
クレジットカードもある
印鑑証明のカードもある（これははじめて見た）

中身を見ているうちに、とてもネコババする気になれなくなった


とりあえずデニーズいこうか…

しかし、デニーズで勉強をしていても頭の片隅に財布のことがちらついている
部屋に戻り、食事を済ませ、交番へ行くのに重い腰を上げようとしたが

「なんで、拾ってからすぐに持ってきてくれなかったの？」

持っていったら、警官からそんな言葉をかけられるんじゃないかと思い
行くのが億劫になってきた
しかし、拾った責任もあるし
（悪いことしてないのに、気が重くなるのはなぜだ？）


通勤時間帯の駅前の交番
外から丸見えのパッション
知っている人が通らないとも限らない
悪いことしてないのにバツの悪い気持ち…
交番内は、必要以上の圧迫感がある

幸いにも警察官は、不必要な質問は一切してこなかった
マニュアルから一歩も踏み外さないような淡々ぶりで話を進めていく
絶対にレールから逸れることのない運転のようだった


「拾得物件に対し報労金を受ける権利」
よくいわれる、落し物を届けたら一割もらえるというシステム
実際のところ、一割ではなく5％～20％らしい
確かに拾って届けて交番で手続きを取って、時間も小一時間かかる
それに対しての報労金だとも考えていいだろう

しかし
「受け取ります！」と、言うのもなんだかカッコ悪い
「一割もらえるからきちんと届けにきました」的な邪な気持ちが露呈する
（まったくないとは言えないが…）




まぁ、滅多に経験できないことできたからいいかな…
財布落とす側には、ならないように気をつけなきゃね