小野美沙子 主婦 66歳 大分県由布市 朝日新聞 2011年10月1日 ひととき
実家で母の洗濯物を取り込んでいて驚いた。「こんなにヨレヨレになるまで着こんでいたなんて」。フリル付のゆったりした母手作りのネグリジェは、私ももらって愛用している。おしゃれで読書家で手仕事好きの母。私が若い頃からスカートもワンピースもブラウスも手作りしてくれていた。どこかにひと工夫をして。だから自分のものもこまめに作っていると思っていた。
パーキンソン病を患う母の「作るのが生きがい」「着てくれるのがうれしい」という言葉をうのみにして、「ありがとう」と気安く受け取っていた自分のうかつさに気づき、申し訳なさでいっぱいになった。
自宅に帰ってさっそく寝間着作りにかかった。型紙は数年前に作ってもらっている。実物も私のものがある。大丈夫、すぐできる。ところが大間違いだった。見返しや襟付け、フリル付けはさっと見ただけでは理解できない。裏から見て表から確認し、2日がかりで何とか仕上げた。
買えば簡単に手に入る寝間着。でも、手作りには手作りの楽しみがある。そして縫い物には、ひと針をおろそかにしない母の生き方と、家族への思いが詰まっていることを知った。
---
母、父の思い。
子供への思い。---。
写真はハクサイ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます