回想記・その14、八十五才象牙の水無瀬駒・続
川井さんのお宅で拝見したのは、黒塗りの総箱に入った、盤と駒でした。
(もう少し詳細が分かる大きな映像を張り付けようと思います。しばらくご辛抱を)
駒は、重量感ある象牙の水無瀬駒。長年使われてきた歴史を物語るように、文字はところどころ摩耗した部分も見受けるが、兼成卿の筆跡だとわかる。まさに「将棊馬日記」の慶長3年の項に記録された「象牙、道休」の駒の違いないと思った。
一方、蒔絵の盤は、唐草が4つの盤側に描かれていて、葵紋が3つずつ描かれている。一見しただけで江戸時代の豪華な婚礼道具だとわかる。材は、まぎれもない本物の榧。盤面には凹みキズが一面に。これは象牙の駒で幾度となく使われた痕跡ではあるが、盤の厚さは4寸。その厚さと蒔絵の印象からは駒ほどの古さはない。私の見立てでは歴史はおよそ200年。19世紀に作られたものであろう。
盤側の3つの葵紋、左は金無垢の光そのものであり、真ん中が明るい金蒔絵。右は、やや鈍い金蒔絵と、それぞれの色が違えてある。唐草の葉も同様に3種類の光の違いがあって、駒箱も同様である。
この映像は、この地域のNHKニュースで、流れたのは言うまでもない。
それにしても、400年前の古文書に記してある駒の実物がここにあって、しかも、一つ一つ我が手に取っていることに、大きな感動さえ覚えた。それは鬼頭さんも同じ思いであられたに違いない。
後日談として、盤と駒は自宅よりも安全に保管でき、いずれは公開する考えもあって、福井県立博物館に寄託されることになった。
されたのかもしれません。が、たいへん貴重なもの
なのでしょう。ですからこれ以上は、本文御記載のよう
な状況で、特別な硬い将棋駒で叩くなどして劣化させ
ないよう、くれぐれも大切に保管してほしいものだと
私は考えます。