ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

お灸をすえられて

2007-04-17 11:37:13 | 日記・エッセイ・コラム

手首から足の甲まで40本の鍼を打たれる。
さほど痛いものではないが、
たまに電気が奔るので
打たれるたびに体がこわばる。

気分を和らげようと治療室にはBGMが流れている。
きょうはカーペンターズだ。
鍼灸師がぼくと同じ歳なので
音楽にも時代的共通点がある。

あの頃は毎晩あそびほうけて
年寄りの言う「光陰矢如」なんてへのかっぱであった。
人生ばら色、
時間は湯水のように使い放題。
まさか、今日の様に背中でもぐさが燃えている姿など
想像だにしなかった。

ゴールが見え始まった下り坂にさしかかり
ようやくあの年寄りの言った言葉が身にしみてくる。

フランスのアルタミラと同質の紀元前の洞窟が発見され、
壁には次のような象形文字が書かれていた。

  「まったく、今の若者は・・・」  と。


朝湯

2007-04-15 11:56:49 | 日記・エッセイ・コラム

ぼくは口笛で鶯の鳴き声を真似るのが上手。

朝湯に浸りながら
(風呂は母屋の外にある)
通りの向うの藪と啼きくらべ。

はじめは怪訝な声で応えていたが
そのうち本気になってくる。
啼きながら徐々に近づいてくるのが判る。
正体がバレないようにぼくも本気だ。
幸い、風呂場は共鳴するので音色がとても艶っぽい。

ひとしきり啼き競ったあと、
急に黙してしまったので藪の奥に退散したかと思ったが
突然、今度は近くで烈しくさえずる。
ぼくも負けずにさえずる。

しばらく男同士の闘いがつづいたが、ひたと静かになる。

・・・どうだ、参ったか・・・

お互いの様子を探り合っている気持ちが
長い沈黙の間を流れている。

なぁ、この辺でドローにしようじゃないか。
湯のぼせしてきた。



喫茶店の日

2007-04-13 14:29:54 | 日記・エッセイ・コラム

きょうは喫茶店の日。
1888年
(明治21年)4月13日、東京上野に始めての
喫茶店「可否茶館」がオープンした。
コーヒー一杯が1銭5厘であった。

1966年、24歳で郊外レストランのオーナーに就いた当初
ぼくはコーヒーの淹れ方も知らなかった。
もちろん、ハンバーグの中身も分らなかった。
レストランをやりたいという、只それだけの理由で
オープンしてしまった。

当時はイザナギ景気の右肩上がり。
ビートルズが来日し、グループ・サウンズがブームとなり
カラーテレビ・カー・クーラーの新三種の神器が売れ
前田美波里の水着ポスターの盗難が相次ぎ
「こまっちゃうな」と山本リンダが大ブレーク。
アメリカが月面軟着陸を果たし
UPI通信のカメラマン沢田教一が
ベトナム戦争報道でピュリッツア賞。
夜の巷にはロス・プリモスの「ラブユー東京」が甘く流れ
即席麺サッポロ一番・明星チャルメラが売りに売れた。

日本一美味しいコーヒーという評判の喫茶店が
神戸にあると聞き、わざわざ出かけていったことがある。
若造のぼくにはコーヒーの味がさっぱり判らず
仕方なく、その水を頂くことにした。
美味い! 
六甲からの石灰質を含んだ水と
瀬戸内海からの塩分を含んだ水とが
灘の地域でみごとにブレンドされ染み出してくる水。
つまり日本酒の元となる「宮水」である。

微かに甘く、舌にからむような密度。
それ以来、
コーヒーにはほんのちょっと塩を入れて飲むことにしている。


またしても

2007-04-12 11:00:16 | 日記・エッセイ・コラム

こんどはチーチャンがトラブル。
チーチャンとは、一昨日出て行ったポールの妹。
風邪が原因で育ちおくれ
兄弟の中でいちばん体が小さい。
それがかえって可愛い!

そのチーチャンが死産した仔猫を
お勝手の軒先にくわえてきた。
動かないのでどうにかしてくれ、というのだろう。
お尻にもう一つ、逆子がぶら下がっている。
手伝ってやろうと手を伸ばすと
爪を立て、歯をむき出して威嚇してくる。
小さいのにいちばん気が荒い。

屋敷に棲みつき、旨いアラを毎日もらって
悠々と暮らしていても
体に触れることは決して許さない。

思いきり身をあずけてしまえば楽になるものを・・・・

ノラの哀しいプライドである。


さよなら・ポール

2007-04-11 23:56:48 | 日記・エッセイ・コラム

さむい!
昨日からでは10度も低い。

ポールが寝ていた段ボールが夕べから空っぽ。
ノラたちに餌をやりながら
妻がポールの名を呼んでいるようだが・・・。

とうとう出て行ったか。
かつての猫たちの場合もそうだったように
新しいグループを探している期間
週に一度ぐらい、ふっと姿を見せる事がある。

空腹に我慢できず
もしかして戻れるかしら、と様子をうかがいに、こっそり。
でも戻る事は絶対できない。
ボスに見つかると更に烈しい攻撃を受ける。
爪を立てられたり、噛まれたりして大怪我をすることもある。

それでももし姿を見せたら、たっぷり食わせてやろうと
旨いアラをいつでも用意してある。