広東名菜「赤坂璃宮」(アカサカリキュウ)銀座店。再訪。
予約名を告げ、案内されたのは、レセプションすぐの円卓を有した個室。
テーブル・セッティングは、位置皿、飾り折りナプキン、カトラリーレスト、スプーン、箸(縦置き)。
着座後には、茶杯(ソーサー付)で中国茶が置かれた。
某日は、譚 彦彬(タンヒコアキ)氏と親交の深い、小山氏が主催する会食。
メンバーが揃ったところで、ミントの香りのする、ふかふかのタオルおしぼりが
トング掴みで供された。
さて、卓上に用意された菜譜によると、
潮莲烧鹅(ガチョウのロースト)
辣味烧排骨(スペアリブの辛味焼き)
秘製脆腩肉(皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き)
漢方燉馬鞭(薬膳蒸しスープ)(北芪・當参・竜眼肉・鹿茸)
美極煎金蠔(干し岩牡蠣の香り焼き)
塩焗龍崗鶏(龍崗鶏の塩窯焼き)
蒜茸蒸魚腩(クエのアラのガーリック蒸し)
栗蟹炒鮮奶(トゲ栗蟹のフレッシュミルク炒め)
恙汁炒芥藍(カイランの生姜炒め)
脆皮炸乳鴿(乳鳩の丸揚げ)
紅烧大摩加翅(特大毛鹿ザメのフカヒレの姿煮)
蝦子乾伊麵(海老子入り煮込みそば)
自選凍甜品(本日のデザート) という計13品のコース料理。
開宴に先立ち、オーナーシェフ(譚 彦彬氏)よりご挨拶があり、菜譜を片手に料理説明を
受けられた。この後に、各自希望するドリンクを聞かれ料理がスタートする。
なお、料理は、大皿で供されるものと、各人ごとのポーションで供されるものが入り混じった
スタイルで、基本、大皿の場合はお披露目後に店側で取り分けてくれた。
あめ色に美しく焼きあがった1品目のガチョウがお披露目される。
立派なおでこのコブはガチョウのシンボル♪ アヒルにはコブありませんから。
隣の円卓では、香港から招聘した焼味師・梁偉康氏による解体デモンストレーションが行われます。
主催者の方のお話だと、梁氏は日本一の焼味師。
この道を極めたナンバーワンと称される人物で、色々なお店にも技術を教えに
行かれているのだそう。
その鮮やかな手捌きに、譚シェフの熱い視線が送られています。
近くに寄ると、漬け込み焼かれたガチョウのローストはすごく良い香りがする。
ザク、ザク、ドン、ドン、ドン!!
中華包丁を巧みに操り、心地よいサウンド音とともに、どんどん切り分けられていく。
首回りそして、皮の下のぷるんと白い脂肪部分、これがまた美味いのだ。
頭もずばっと!白子のような味わいの脳ミソも、ご馳走なのだ。
「OK!」
梁氏の言葉を受け、スタッフさんがタレをかけて出来上がり。ターンテーブルに運ばれます。
潮莲烧鹅(ガチョウのロースト)
ガチョウは香港より(梁氏が)仕入れてきたそう。
冷凍焼けを起こしていないため、肉質の良さはそのままに、特に脳ミソはその違いがわかる部位。
甘酸っぱい梅醤は、各自分にサーブされるのでお好みで。
完璧な火入れ具合。当店は焼き置きをせず、予約注文が入ると(来店の)時間を
逆算して焼き、肉を少し休ませ味が回った最高の状態で提供するとのこと。
皮目はぱりっと、肉は味が濃厚で、じゅわじゅわ溢れ出す肉汁と滴り落ちる脂が超絶に美味い。
フィンガーボウルもセットされるので、骨周りは当然手掴みでいただく。
一皿目から、本場香港の焼味の凄さを見せつけられた感じだ。
辣味烧排骨(スペアリブの辛味焼き)
辛味焼きといっても、ほんのりとした品の良い辛さに噛みしめると甘みが追行する
肉々しく、骨格の太さを感じさせる焼味だ。
秘製脆腩肉(皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き)
赤坂璃宮の看板料理。皮目がサクサクと香ばしい皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き。
個人的には若干バラ肉に塗り込んだ塩がきつくも感じたが、脂身は舌の上で
とろけるように甘く、肉質そのものは最高である。
各人に運ばれる自家製甜麺醤は、ベタな甘さのないまろやかテイスト。
これをクリスピー焼きに活用することで味の変化をつけられる。
(ノブロー) 今夜はすんげえ、ご馳走焼物のオンパレードだで。大興奮だよ。
次は蒸しスープの登場です。
漢方燉馬鞭(薬膳蒸しスープ)(北芪・當参・竜眼肉・鹿茸)
仕入先は熊本からという馬鞭(馬ペニス)と漢方食材の蒸しスープ。
ちなみに鹿茸(ロクジョウ)は鹿の角である。
スープは素材力を生かし、塩を入れずにそのままの状態で供されるため、
(各人に)好みで手もと塩を使えるようサーブ。
そのほか、胡椒はターンテーブルに用意される。
12時間蒸したというスープは、透明感のある黄褐色。
まずは、レンゲで口に運びオリジナルの味を楽しむ。
――う~ん、美味い。
何と表していいか分からないが、すべてのエキスが入りこんだ滋味深いスープは、
香り良く、素材の持つ甘みがあり、奥ゆかしさの中にしっかりとした芯の強さ、生命力を感じた。
ここに塩を入れて味の引き締めを図るのも自由だが、スープから発せられる豊満な
エネルギーをダイレクトに受け止めたい衝動にかられることでしょう。
スープの途中で運ばれてきたのは、醤油をベースに唐辛子を浮かべたタレ。
次いで、薬膳蒸しスープに使った食材は、スタッフさんによって引き上げられ
各人にサーブされる。長時間蒸され、全てを使い果たした、とは言えど、
馬鞭はコラーゲンと肉の繊維もしっかりと。これらをタレで味をつけ食す。
この蒸しスープのパワーは凄かった。
食べ進めるにしたがい、体の中からぽかぽかと温まり、気がつくと額にはじんわりと汗が。
余すことなく英気を取り込み、驚くほど活力がみなぎってきた。
美極煎金蠔(干し岩牡蠣の香り焼き)(各人ごと)
岩牡蠣を干してから、醤油味で煎り焼きにしたもの。最近の香港のブームらしい。
(ノブロー) ビジュアルからして違うな。圧倒的な威厳を放つ干し岩牡蠣だで。
青森産の岩牡蠣で、後に聞いたところ、干した日数は2~3日。
ぷっくりとした岩牡蠣の中心部分はしっとり柔らかく、噛みしめるほどに凝縮された旨味を
味わえる至極の逸品だ。
塩焗龍崗鶏(龍崗鶏の塩窯焼き)
同様に香港から仕入れてきたという龍崗鶏は中国の地鶏。梁氏の得意料理だという。
説明によると、梁氏の岩塩包みはオーブンで焼かず蒸して作るとのこと。
美麗な岩塩富士から顔を出す龍崗鶏。お披露目後は再び梁氏による解体デモンストレーション。
龍崗鶏(ロンコンガイ)の中には、ネギ、生姜などの香味野菜が詰められています。
ザク、ザク、ドン、ドン、ドン!!
豪快な包丁音が、個室に響き渡り、一同の興奮度もアップ。
熟練された包丁捌きに見入ってしまいました。
「OK!」
梁氏の言葉を受け、作業終了。大皿はスタッフさんにより運ばれます。
ターンテーブルには辣椒醤が用意され、
葱生姜ソースは各自にサーブ。
完璧な火入れ加減で、鶏肉はふっくら、しっこり、コク豊か。
塩加減も絶妙で皮や脂身も嫌味がなく、すっと胃袋に落ちていく感じ。
龍崗鶏の包容力のあるふくよかな身質に魅せられました。
用意されたソースや調味料の使用は好みですが、そのままでパーフェクト。
魂を揺さぶられるほど感動値の高い美味さだった。
蒜茸蒸魚腩(クエのアラのガーリック蒸し)
中央には香菜が盛られ、春雨、ブラウンエノキがガーリックソースを吸い込む。
ゼラチン質がたっぷりで、淡白だけれどコクのある身質のクエにぴったりの調理法。
盤石の旨さである。
栗蟹炒鮮奶(トゲ栗蟹のフレッシュミルク炒め)(各人ごと)
青森県のトゲ栗蟹(毛ガニの仲間)は味噌がたいへん美味しいため、ボイルした後、
その蟹味噌と内子を足して、生クリームで炒めたものだそう。
表面にはクラッシュ・カシューナッツが散らされている。
蟹肉みっしり。その風味も濃厚でふわふわぽってりとした口当たり。
ナッツが食感のアクセント的な役割を果たし、コクもプラス。
細部にまで計算されたリッチな炒めである。
脆皮炸乳鴿(乳鳩の丸揚げ)
円卓へのプレゼン後、揚げ直し作業に入ります。 それにしても見事だ。
(乳鳩) ちょっと!あんたたち。やだわ、脳ミソ、狙っているわね(汗)
乳鳩さんの抵抗も虚しく、頭はズバッと割られました。
皮目はぱりっと揚がり、肉はキュッとしまって独特の濃さがあり、しっとりと旨味ジューシー。
脳ミソも滑らかな舌触りで、非の打ちどころ無し。
その美味しさは、今までいただいた鳩の丸揚げの中で1番では?と思えるぐらいだった。
恙汁炒芥藍(カイランの生姜炒め)
油が回り艶やかなグリーンが目にも美しいカイラン。
生姜はざくっと厚切り。
カイランの火入れも上々で、頼もしい食感を楽しめた。
紅烧大摩加翅(特大毛鹿ザメのフカヒレの姿煮)
フカヒレ姿煮のプレゼン。1.3キロあるとのこと。
「これから、お野菜を添えますので」とスタッフさん。
隣の円卓で盛り付け作業が行われる。
青菜、もやし、黄韮、金華火腿をのせて出来上がり。
フカヒレの繊維1本1本がくっきりと太くて上等品。
私が普段いただくフカヒレとは、次元が全然違う。
噛み切るというより、つるつる飲みこんでいく感じ。まるでヌードルですよ。
醤油風味で煮込まれ、この過程での調味加減は良好ですが、後のせした
金華火腿の塩分がややきつかったかな。生意気を申してすみません。
蝦子乾伊麵(海老子入り煮込みそば)(各人ごと)
乾麺の一種、幅の広い平打ち麺(乾伊麵)を使用。
具材の干しシイタケの風味に乾燥させたエビの卵(蝦子)の旨味が合わさり、
濃いめの味付けで、これだけ単品でいただくには良いが、
当該コースの流れで考えると〆として、私には口当たりが甘く、少し重たさを感じた。
(ノブロー) 中国茶は黄金桂だよ。デザート前に1品追加をお願いしただ。
細い香港麺を使った中国醤油風味の焼きそばには、大フンパツで叉焼もたっぷり。
さすがに、お腹も一杯だ。
自選凍甜品(本日のデザート)
6種からのデザートチョイス。
①金木犀のゼリー、②タピオカ入りココナッツミルク、③黒胡麻プリン、④杏仁豆腐
⑤マンゴープリン、⑥タピオカ入りカスタードミルク、
可愛らしい細工がほどこされたスイーツも各人にサーブ。
右側はハリネズミを模してるのかな。
青森のりんごを使ったアップルパイ(左)とカスタード揚げ饅頭(右)です。
タピオカ入りカスタードミルク(楊枝甘露)をチョイス。
中には、フレッシュマンゴー、さくさくとしたピンクグレープも入り贅沢な甘さを伝える。
厳選した食材を取りそろえ、各持ち場の専任調理人が腕をふるい、実力を発揮した
料理の数々はまさに圧巻。1品1品、真剣勝負のご馳走オンパレードでした。
価値観は人それぞれですし、この度の集まりの会費は一概にお手頃とは
言い難いかもしれません。
しかし、実際参加させていただき、15品という品数に内容の充実度から判断しても、
とても高いとは思えずでありました。
これも入念な打ち合わせをされたという主催者の尽力によるものが大きく、
スケールの違いをみせつけられた会食であり、自身にとって貴重な体験となりました。
ありがとうございました。
特に記憶に深く刻み込まれたのは、日本で並ぶもののない焼味の第一人者、
梁氏の焼物は本当に素晴らしかった。脱帽です。
赤坂璃宮(アカサカリキュウ) 銀座店
東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル 5F
TEL 03-3569-2882
営業時間/ 月~土 11:30~15:00(L.O.)/17:30~22:00(L.O.)
日・祝 11:30~16:00(L.O.)/16:00~20:30(L.O.)
http://www.rikyu.jp/ginza.html
※お店の方々をはじめ、ご尽力頂いた小山さんに感謝であります。
中国料理満足度数は、当然別格