中華料理「の弥七」(ノヤシチ)
オープンは2014年7月10日。オーナーシェフ、山本眞也氏は「御田町 桃の木」出身とのこと。
場所は、東京メトロ丸の内線、四谷三丁目駅、4番出口より外苑東通りを曙橋方面に進行し、
杉大門通りに入る入口のビル。路面店。
この近くには、「峨眉山」さん、「蜀郷香」さんという美味い四川料理店があり、
中華好きにはたまらないエリアだ。
当店の夜は、コース料理のみ。6,500円と9,000円の2コース。
予約時に違いを聞いたところ、扱う食材の内容が異なるとのこと。
初回は様子見を兼ねて、6,500円でお願いした。
店の前に到着すると、割烹風の佇まいに意表を突かれた。
暖簾をくぐって入店すると、まだ新しく、白木の香りがにおうような清潔感溢れる和空間。
正面には厨房を配置し、中にはシェフともう一人男性が入っていて、
店内の雰囲気からも板前さんと見誤りそうだ。
茫然として立ち尽くしていると、フロアで接客を担当する女性が予約名を聞いてきた。
客席は厨房前のカウンター席(3)と片側ソファのテーブル席は4卓というレイアウト。
先客はカウンターに2名とテーブル席に4名、2名。私達が入店したことで打ち止め状態だ。
利用は、真ん中のテーブル席。
テーブル・セッティングは、半月会席盆、カトラリーレスト、割り箸、スプーン、コースター。
そして、ドリンク用のお品書き。着座後にタオル地のおしぼり(トレー置き)をいただき、
スタッフさんから、苦手なものやアレルギーの有無を再確認される。
幸いにして、何もない。
「では、順番にご用意させていただきます」
本日は、魔神さんとの会食。
コース料理にお品書きはなし。口頭説明で、茄子の唐煎りと釜炊きご飯以外は、
全て各自分ごとの提供になる。
飲み物は、サッポロ黒ラベル中瓶@680、関帝陳年十年花彫酒@3,850、
孔府家酒グラス@550×2を注文。
紹興酒は、上記以外に、紅桜夢陳年六年@3,200、甕だしはグラスで@600
ほか、種類は少ないが、日本酒、焼酎、果実酒、ソフトドリンクの用意もあった。
胡麻豆腐
茹でたまごをイメージさせる、つるんとしたビジュアル。薬味は、緑が生山椒、赤は紅蓼。
カツオや昆布を沸騰させず、旨味のみをいれた出汁に、金華ハムを加えた“清湯”を
合わせているとのこと。
「お出汁と一緒にお召し上がりください」
――ああ、美味しい。
ナチュラル感があり、胃にストンと落ちて、たちまちに心を奪われ、のめり込む。
和の一皿に息づく清湯が、名状しがたい味の深みを加え、
はっとするほどに美味で、クリアな味の余韻が続いた。当店、間違いなしだ。
広東風豚肉の揚げワンタンと枝豆の炒めもの
かりっと揚がったワンタンは、唐辛子と炒め辛味を移したスパイシーな枝豆と共に。
里芋の含め煮、ケシの実揚げ
ねっとりとした里芋と中国醤油を使った上品なあんが調和を果たす。繊細な味わいに驚いた。
三段前菜
手提げ三段重を使用。
演出効果も効いて、三段前菜が運ばれた他の客卓からも歓声があがる。
女性の心を惹きつける見目麗しい前菜たちだ。
博多産白イカと根室産ウニの老酒漬け
ウニはさっと蒸しているのではないだろうか。
柔らかい博多産白イカの持ち味を大切に、浅い漬け加減。これも素材への愛だ。
よだれ鶏
山梨県の銘柄鶏、美桜鶏を使用。
中国醤油、自家製辣油、鎮江香醋、花椒ほかで味を整え、ピーナッツ、
香菜を散らしている。味のバランスが良い。感服した。
木の芽を添え、まるで、和食のミニ懐石のよう。
中の器も全体としての色味を考えているのだろう、色彩豊かだ。
①炙りとうもろこし・・・香ばしさをプラス。
②揚げ皮蛋・・・ネギ、生姜をみじん切にした、ほんのりと甘酢っぱいソースを合わせて。
③清湯を使った出し巻きたまご・・・美味“清湯”がベースに入る料理は鉄板だと実感。
④黄ニラともやしの湯葉巻・・・丁寧な仕事ぶりを窺わせる湯葉巻。旨い。
⑤自家製叉焼
⑥自家製腸詰
自家製の叉焼も腸詰めも噛むごとに、じわじわ旨味がしみだしてくる。
中華使いに強弱をつけたセンセーショナルな三段前菜は、目でも舌でも楽しめた。
翡翠碗
中国では、翡翠と赤は縁起の良い色とされており、ここでは、翡翠の緑をモロヘイヤ、
赤をビーツで表現。
勿論、ベースは当店の生命線とも言える“清湯”。
程よい粘り気のモロヘイヤに、甘く炊いたビーツ、山椒が浮かぶスープを
匙で掬い、口に含み、胃袋へゆっくりと流し込む。
じんわりと身体に染み渡り、奥行きのある味わいは、人を唸らせ本気にさせるものがある。
筆舌に尽くしがたい旨さだ
エゴマの朝鮮漬け
中には高知産のカツオ。クリームチーズをサンドした辛し和えになっている。
朝鮮漬けのぴりっとした辛さに、クリームチーズのねっとりとした旨味が合わさる。
さんまの燻製と栗のかき揚げ
季節感を盛り込んだ一皿。
①さんまの燻製・・・しっとりとソフトな食感。噛みしめるほどにじわじわと濃厚な旨味が広がる。
懐の深い味わいだ。
②栗のかき揚げ・・・栗はラム酒につけてからという、手の掛けよう。ホクホクだ。
茄子の唐煎り(2名分)
茄子は高知県産。
「料理長の出身が高知なので、ちょいちょい出ますね」とスタッフさん。
料理について尋ねると、彼女もまた、不明な点は厨房に聞きにいってくれ、
きめ細やかな心配りで充実した食事の時間を供してくれた。
「茄子だけお召し上がりください」
粉をまぶし別揚げした茄子を、唐辛子、山椒と合わせ煽ったもので、
見た目のインパクトほどに辛さはない。
ふっくら揚がった茄子に香りを移したものになる。
桃のシャンパン漬け
フレッシュな青山椒入り。爽やかに甘さを引き立てて。
釜炊きご飯(2名分)
米は、北海道のミルキークイーンとコシヒカリのブレンド米とのこと。
蓋を開けて、炊き立ての飯を覗き見る。このビジュアルに胸が高鳴った。
正しくオコゲもできている
漬物は、ツボ漬け、青ザーサイ、蓮の根。
麻婆豆腐
豆腐、赤こんにゃく、牛すじ、豚挽肉、高菜。
アレンジの効いた麻婆豆腐は、ベースの出汁がしっかりしているので、無敵。当然ながら旨い。
これを釜炊きの白飯ON!
なんという贅沢なのだと、顔を綻ばせながら、口へ運ぶ。
――んんっ!いい!
新鮮な衝撃だった。
赤こんにゃくの食感に、これもまた(赤こんにゃくと)相性の良い牛すじがコクを深め、
濃厚でありつつ、あっさりと、巧妙なバランス感で胃袋に届いてくる。
「白髪ネギは、麻婆豆腐と一緒に」と言って出されたものだけれど、
夢中になっていて、のせるのを忘れた。失態。
再び、至福のひと時を過ごす。満足。
高知産紅巨峰とお茶
デザート時には、おしぼりの差し替え有り。
自家製杏仁豆腐ココナッツミルクがけ
美味。そつが無く、淑やかな味わい。満足である。
(ノブロー) 手応えありまくりの、コース料理だったで。
ゆっくり酒を飲みながら、食事を楽しむ大人仕様の店だな。オラ、おすすめするよ
聞くと、ランチは定食で、日替わりの用意。
この日のランチは油淋鶏、麻婆豆腐、カツオの刺身だったそうで、
刺身は、中華調味料を入れ、自家製ポン酢、ニンニク、豆板醤を使うという。
やはり、和の技法を組み入れ、中華のエッセンスで、巧みに融合させているのだ。
いいとこ取りの美味さだが、少しも浮ついていない。
真面目さが伝わり、これも磨き抜かれた技量があってこその、本物。抜群のセンスだ。
また、当該コース料理では、胡麻豆腐のように精進料理の要素も取り込んでおり、
展開がどうなるのか、最後まで興趣が尽きず、感動の大きい素敵な中華だった。
お会計は、1人当たり10,000円(千円未満四捨五入)。
「お気をつけて、ありがとうございました」
会計を済ませ、シェフを含めスタッフさん一同で丁寧なお見送りを受けた。
大切な人だけに、そっと教えたい価値のある、たいへん魅力的な店である。
※話し声が反響し、料理説明が聞き取りづらい場面もあった。
そのため、当該レポは魔神さんからのメモも活用させていただいた。感謝。
の弥七 (ノヤシチ)
東京都新宿区荒木町8 木村ビル 1F
TEL 03-3226-7055
営業時間/11:30~13:30/17:30~21:30(L.O)
定休日 日曜日
※中国料理満足度数は、4.8~5.0 必再訪
の弥七 (中華料理 / 四谷三丁目駅、曙橋駅、四ツ谷駅)