中国東北料理「味坊鉄鍋荘」
神田の羊料理の有名店「味坊」さんの姉妹店でグランドオープンは2016年1月。
オーナーの梁さんが中国・黒竜江省のチチハル市の郷土料理を紹介したいと
はじめられたようで、目玉は何といっても鉄鍋で供される煮込み料理。
最寄駅は湯島になりますが、店が面する通りは夜の人通りも少なく、控えめな外観のため
見過ごしてしまいそう。某日は付近に住む友人との会食で、予約も全て任せしてしまった
のですが、第一希望日は既に満席で断念。週を遅らせることで予約が成立出来ました。
すっきりと、いい意味でぶっきらぼうな店内の最も入口に近い卓に、先に到着していた
友人を見つけ着座。奥には厨房と客席が数卓あり、総席数は20席ほど。
テーブル・セッティングは、取り皿(2)、箸(横置き)、使い捨て紙おしぼり。
また卓上には黒醋とテッシュボックスも置かれていますが、ここで目を引くのは、
卓に埋め込まれた2つの鉄鍋と天井から下がる排気フードだ。
友人同様、ビールを注文し、料理を検討しようと思いましたが、肝心のメニューというものが
見当たらない。厨房前の短冊から選ぶのかと、店のお姉さん(中国人)に尋ねると、
現在店は5,000円と3,500円のコース料理のみとのこと。
――しまった。自分も店の情報を事前確認しておくべきだった。
2人なので、鉄鍋とアラカルトで酒を飲もうと思っていたのだけれど、こうなったら
本気を出して食べなければならない。
5,000円コースは前菜7種、鉄鍋料理2種、饅頭、餃子、デザートという内容構成で
3,500円コースとは前菜と鉄鍋料理の品数に違いがあるとのこと。
(※3,500円は前菜5種、鉄鍋料理1種)。
卓に2つ鍋が置けるようになっているのだから片方休ませては勿体無い。
やはりここは2種の鉄鍋料理がいただける5,000円コースが良いと、友人とも意見が一致。
また鉄鍋料理は客側で選べるので、たどたどしい日本語ですが、口頭で一生懸命説明
してくれる内容をしっかりと聞かなくてはならない。
この日の鍋は5種、うち肉が2種と魚が3種だった。
ほうれん草とピーナッツの和え物
前菜たちはテンポよく次々に登場してくる。トップバッターはほうれん草とピーナッツの和え物。
トマトの冷菜
白胡椒を効かしたあっさり味。
羊のアキレス腱
ゼラチン質豊富なアキレス腱は旨味たっぷりで、酒との相性も抜群。
よだれ鶏
下には茄子が敷かれ、鶏肉の上にはナッツや胡麻、刻みネギがふりかけられたスタイル。
爆発的な辛さや味に四川独特の奥行き感はないのですが、品よく仕上がり悪くはない。
野菜の合わせ(ニンジン、大根、胡瓜、ネギ、パプリカ)
野菜はごろごろっとした肉入りの濃厚な甘辛味噌をつけて食べる。
旨味の強い味噌なので、これを日本の食卓に置けば、ほかほかご飯の良きパートナーとなり、
おかず力を発揮しそうです。
塩タマゴ、皮蛋豆腐、胡瓜の和え物
「よく混ぜて召しあがってください。」
柔らかい豆腐に、カットした皮蛋、塩タマゴ、キュウリ、パプリカ、長芋が彩よく散りばめられた
見目良いビジュアル。混ぜることにより塩タマゴのコクが味に深みを与え、また瑞々しい
野菜たちの食感が立体感を生み出し、あっさりとした口当たりですが物足りなさなし。
鍋の前だから控えめに食べておこうという自身の計算とは相反し、食の進む味わいです。
木耳の冷菜
肉厚ぷりぷりのキクラゲ。
以上で計7品。このあと、2種類の鍋が運ばれてくるのであります。
前菜は味付けも極力シンプルに提供され、ご馳走すぎないバランス感が素晴らしい。
大豆の煮もの
これは箸休め的なものでしょうか、飛び入り参加の大豆たちは唐辛子を担いで登場です。
さて、鍋にそなえての酒選び。
ドリンクは、ワインに力を入れていて、店内中ほどの冷蔵庫に取り揃えられ、
各ボトルには値段が記されています。
「味坊」さん同様、自分で冷蔵庫から選び取り出すもの、と思っていたところ、
今回たまたまなのかはわかりませんが、赤ワインを希望すると店のお姉さんが
卓上に並べてくれました。
紹介のあったワインの値段は3,000円~4,000円台が中心。
選んだのはモルドバ共和国の赤。
これはお客様に人気が高いという話ですが、確かに香り高く、美味い!
なお、紹興酒はショット売りでいただけます。
魚と発酵高菜の煮込み鍋
お姉さんがコンロに火をつけ、卓上に鍋をセット。
ぐつぐつと煮立ってきたら、食べられるとサジェスチョンが有り、待機時間は5分ほど。
魚は青森県産のソイを使用。シメジ、ネギ、香菜、細モヤシも入って、発酵高菜は毒々しい
酸味ではなく、程のよい旨酸っぱさ。
淡泊な味わいのソイは身もふかふかで、さっぱり飲めて後味の良いスープが
めちゃくちゃ美味いから、お替わりを求めて争奪戦になりましたよ。
この日、他に説明のあった魚の鍋は、唐辛子煮込み鍋、東北風煮込み鍋でしたが、
好みの味をチョイスできたと自分を褒めてやりたいわ。
ラムと大根の煮込み鍋
肉の鍋は豚のスペアリブと隠元の煮込み鍋からの2択。当然初回は羊肉を外せない。
しかし、こちらの鍋は蓋をして思いっきり待ちの態勢。
立ち上る湯気からスパイスをまとった羊肉の馨しい香りがしますが、じっと我慢。
お姉さんは大根に火が入ったかを確認しているようだけれど、彼女が蓋を開けるたびに、
GOサインがでるのではないかと、顔色をうかがう我々はおあずけをくらったワンコのよう。
やっと蓋が開けられたと思ったら、ここからが正念場。
「味坊」さんでも見学させてもらいましたが、鍋にトウモロコシ粉でできた生地を貼りつけ
肉の上には花巻の生地をのせ、再び蓋をして蒸すことにより完成させるのです。
――うおぉぉぉー!仕上がったぞー!
お姉さんから、OKをもらったときは絶頂感有り!これは盛り上がるわ。
同時に、梁さんは、鍋貼を各卓の鉄鍋でやりたかったんじゃないかしらと思った瞬間です。
見守り続け育てた感のある煮込みはじっくり煮詰められたことで、味がしみこみ濃厚。
羊肉の旨味を吸い込んだ大根も家常的な美味しさで好感度が高く、この時を待った
甲斐があったというもの。
「トウモロコシパンと花巻、汁つけて食べるとおいしくなります」
お姉さんのアドバイスに従い、鉄鍋を駆使して作った花巻、鍋貼玉米餠(トウモロコシパン)を、
羊の脂や旨味エキスが混じり合った煮汁につけ口に運ぶ。
こうしてチチハル的食べ方を実践できるし、お楽しみが満載だ。
水餃子(各人に1個)
「お待たせしました。ラムの水餃子でございます。」
2種類提供される水餃子は小ぶりなボディですが、ボリュームのあるコース料理の〆には
丁度良し。もっちりとした皮にキュートな羊肉の餡が包まれています。
ここでセットされるのは青森県産のニンニクを漬けた黒酢。
つけていただくと、味がキリリと引き締まって美味しさ&満足度もアップ。
次は醗酵白菜と豚肉の水餃子。
同じく黒酢と好相性。仄かな酸味が豚肉の甘みを引き立て、餃子に関してはこちらの方が好み。
白キクラゲの糖水が食後のデザートでした。
お会計は、酒代を含め、1人当たり8,000円(千円未満四捨五入)。
梁さんの故郷、チチハルの家庭の味、鉄鍋を使った煮込み料理をコースで堪能でき、
結果的には大満足。日本の食材を厳選して仕入れ、味付けはワイルドな魅力をもつ
「味坊」さんより品よく仕上がっていると思います。
当店は、4名以上で来店し卓を囲む方が効率よく食べられ話も弾む店。
またキャパシティ的に予約は賢明です。
味坊鉄鍋荘
東京都台東区上野1-12-9
TEL 03-5826-4945
営業時間/ 18:00~23:30
定休日 無休 -店舗情報「食べログ」より-
味坊鉄鍋荘 (中華料理 / 湯島駅、上野広小路駅、上野御徒町駅)
夜総合点★★★★☆ 4.2