中華街本通りの「大珍樓」(ダイチンロウ) 新館。再訪。
中華料理に広い見識を持ち、当店とも親交の深い幹事さんのお声がけにより
「上海蟹宴会2018」が開催されました。
今回は参加メンバー10名でターンテーブル付きの円卓を囲みます。
テーブル・セッティング:位置皿、飾り折りナプキン、湯呑み、グラス(2)、カトラリーレスト、スプーン、カニハサミ、カニフォーク、箸、ガラ入れ
テーブルクロス:有り
卓上調味料:なし
その他:菜譜
着座後:タオルおしぼり(トレー置き)
金色のまばゆい位置皿にどぎまぎ。ラグジュアリー感漂う仕様に
普段では体験できないスペシャルな展開を期待してしまうのでありました。
各人ごとに置かれた菜譜によると以下の10品が提供料理。
・話梅酔大閘蟹
・大閘蟹蟹粉排翅
・龍眼燉大閘蟹
・大閘蟹羅白糕
・蟹粉扒鮮帯子
・鴛鴦蒸大閘蟹
・大閘蟹烩粉皮
・蚧粉小籠包
・姜茶滑湯丸
・双輝美甜点
驚くべきことに、大閘蟹と蟹粉のラッシュアワー。
これらが登場しないのは最後の2品。デザートだけ、という黄金宴会であります。
料理は大皿で供されるものと、各人ごとのポーションで供されるものが入り混じった
スタイルで、大皿の場合はお披露目後に店側で取り分けてもらえます。
話梅酔大閘蟹(各人ごと)
先手必勝とばかりにトップバッターを飾るのは熟成と凝縮が決め手となる酔蟹。
解体作業は各自の作業。ハサミを使い解体し、カニスプーンを駆使していただくのです。
もちろんこの時点でフィンガーボウルがセットされます。
酔蟹は雌(メス)。
オレンジ色のミソと黒い内子(卵)がみっしり詰まった大豊作状態に狂喜乱舞!
やっぱり酔蟹は雌でなくっちゃ。正しいわ~♬
この酔蟹は、活き上海蟹を話梅入りの調味液に漬けたもの。
熟成させタレの染みこんだ身は舌に絡まるようにねっとりとして、ふわりと紹興酒が香る。
柔らかな甘みが繊細な身の甘みにマッチし、その後味もエレガントです。
また、とろんとしたミソに、内子はねっちりとへばりつくような重厚な食感で
凝縮された旨味がたっぷり。
無言で解体し、一片たりとも逃すまじと、ちゅぱちゅぱ吸い付き倒す!
まだ宴は始まったばかりだというのに、主役級の大物の登場に
度肝を抜かれ、脳天直撃の快楽に酔いしれました。
大閘蟹蟹粉排翅(各人ごと)
フカヒレの上海蟹味噌煮込み。
はじめは沈みこんでいるのでフカヒレの大きさがわからなかったのですが
スプーンで持ち上げるとずっしりと重量感があります。
こんな立派なフカヒレは随分と久しぶりだ。
カニミソのナチュラルな甘味とコクが旨味の源泉。フカヒレを崩していただくと、
リッチなソースが繊維1本1本に絡みつき、まろやかなコクが余韻へと続き、
箸の止まらぬ甘美な味わいで
「美味しい~!」と、思わず声が漏れるほど。
大事に食べようと思っているのに、休むことなく食べ続けあっという間の完食。
瞬殺級の美味さは我を忘れさせてしまうのです。
龍眼燉大閘蟹
上海蟹と龍眼の蒸しスープ。
幹事さんのお話では当店でしか味わえないスペシャリテなのだそう。わくわく。
カボチャをイメージさせる大きな器にはお宝がザクザク!
ぶつ切りの上海蟹と竜眼がふんだんに使われ、いい香りがします。
茶色味がかったスープは龍眼の甘みと上海蟹の甘みが協調し、仄かにぴりっと。
容器ごと蒸す広東スタイルのスープは素材の力を余すことなく使い、旨みや栄養も
スープにぎゅーっと入りこみ、丸みのある口当たりで滋味豊か。
さらに驚いたのは、蟹の身自体、まだ力を使い果たしきっていない事に歓喜。
そうなると必然的にほじり出し作業に突入。至福の時を過ごすのでありました。
大閘蟹羅白糕
上海蟹と大根餅の炒め。
大根餅デラックス!揚げた上海蟹を甘辛く味付けソースごとその風味を移した夢の競演。
醤油ベースのタレにちょいつけして食べるものとは一線を画し、もっちりした大根餅が
旨味ソースを吸い込み、別次元の美味しさで新鮮な衝撃を受けました。
ここでもカニスプーンをフル活用。ホジホジすれば、身はまだまだ採れるのです!
蟹粉扒鮮帯子
ブロッコリーの鮮やかなグリーンが皿を彩る生ホタテ貝柱の上海蟹味噌炒め。
再度、大閘蟹蟹粉排翅でも使われたリッチな蟹味噌ソースに絡めいただくと、
肉厚のホタテはぷっくりとして中心部が見事なまでにレア。
噛みしめると仄かな甘みがあり、厳選された食材であることは明白です。
またブロッコリーはシャキッと感を残す火入れで申し分なし。
素材力と技量の高さに感じ入りました。
鴛鴦蒸大閘蟹1
「菊黄蟹肥」(菊の花が咲く頃、蟹が太って食べ頃を迎える)
大皿に盛りつけられた菊の花に上海蟹宴会の趣を感じ、場の雰囲気も盛り上がります。
蒸蟹は雌と雄で供される鴛鴦スタイル。
まずは蒸蟹(雌)から。ここでも解体作業はセルフ。
フィンガーボウルを脇に置き上海蟹との格闘がはじまるのですが、
手に持つとずしっと重く、のっけからみっしり詰まっている感ひしひし。
脂肪分をたっぷりと持っているのでしょう甲羅に艶もあります。
凛々しいお顔とご対面。
店の会長さんが部屋を訪れてくれたとき教えてもらったのだけれど雌は170gとのこと。
酔蟹では黒い内子(卵)が、蒸すことで鮮やかで濃いオレンジ色に変わります。
その内子にへばりついている黄色みがかったオレンジがミソ。
しっとりとした身も独特の甘みが強く、至福に浸る甘美な味わいなのですが
そこに輪をかけて、この内子がホクホクとしてめちゃくちゃ美味い。
1匹を平らげたころには、蟹の脂ですでに指はてかてか。
提供されたグラム(g)以上の中身の濃さに、一仕事終えた感があるのですが、
しかし、ここで休んでいるわけにはいきません。
鴛鴦蒸大閘蟹2
蒸蟹(雄)は270g。宴会は11月20日過ぎだったのですが、この時期オスの最盛期。
MAXの状態のものを用意してもらえました。
雄も甲羅が艶々。
先の雌も手応えを感じましたが、雄はさらにずしずしっと重量感があります。
対面するとミソ?溢れ出ている??
雌は撮り忘れてしまったのですが、万歳ポーズで腹部を激写!
――もはや逃げることもできず、私の手中に落ちた!!
と、密かにほくそ笑む自分が怖い(汗)。
さて、三角形のふんどし(雄)を外し、胴体を左右、真っ二つにバキッと割るのです。
その前に雄の濃厚でねっとりとした白子とミソを確認。
さすが270gだけあって爪もデカイ。
そしてMAXの雄は身がしっとりというよりもっと潤いが深く、きぬかつぎを食べて
いるようにねっちりで、味も雌に比べ濃い。こんな美味い雄の蒸蟹を食べたのははじめて。
私自身いつも重視していた白子より身の質感に驚き、感銘を受けました。
なお、店側では蒸蟹用に黒酢も用意してくれたので、試してみると角がなく甘くまろやか。
これだけのボリュームですから、そのままで食べるのも良いですが、
味覚の切り替えにちょいつけも有りかと。
大閘蟹烩粉皮
粉皮と上海蟹の煮込み。
濃厚な蟹味噌ソースをちゅるんとした食感の板状の春雨に絡め和えていただく贅沢な1品。
このソースが使われるのは3度目です。
ご馳走ソースの再々は喜ぶべきなのでしょうが、蒸蟹でも蟹ミソは摂取していますから
正直なところ、少々ヘビーに感じられ、個人的にはもっとあっさりしたものを
組まれたら嬉しかったかも。かなり蟹ミソが蓄積しています。
しかし、最後まで上海蟹に拘るのがこの宴の本質であり醍醐味。
もちろん、これ単体でいただくのであれば、文句なしのコクリッチな煮込み。
温かいうちが最も美味しくいただけるタイミングです。
蚧粉小籠包
上海蟹味噌入り小籠包。
小さな蒸籠で各人にサーブ。下には針生姜が隠れています。
蟹ミソ入りですが、大閘蟹烩粉皮の迫力に圧倒され、それほどインパクトは感じず、
すっかりセレブ舌になっていますわ(汗)。
さりとて小籠包の完成度は高く、端正な見た目の期待を裏切らない美味しさで、
柔らかい肉餡とその旨味を含んだスープをバランスよく楽しめました。
上海蟹は身体を冷やす食べ物なので、コース料理の合間には
身体を温める効能がある生姜茶が供されていますが、別腹のデザートタイムには、
姜茶滑湯丸
白玉団子入り生姜茶も。
作りたて感のあるモチモチとした白玉団子に、生姜がきりっと効いた
甘みの強いデザートスープが美味い。
双輝美甜点
正式名は不明ですが、蓮蓉酥と香蕉酥。
後に知ったのですが、上海蟹がパレードするこの宴会では1人あたり5匹を
食べたことになるのだとか。
いやあ、贅沢贅沢。ご馳走三昧に私の胃袋もさぞびっくりしたことでしょう。
采配に長けた幹事さんと店の信頼関係から生まれたシーズンが雌から雄に切り替わる
ギリギリの時期を設定し、吟味した、まさに上海蟹を食べ尽くすための黄金宴会。
気迫のこもった料理の数々をいただけ、来シーズンまで上海蟹を食べずとも
何ら不足なく大往生。とても貴重な体験になりました。
これは、お留守番の拙ブログのマスコットも参加したかったみたいです。
大珍樓 新館
神奈川県横浜市中区山下町143
TEL 045-663-5477
営業時間/11:00~14:00(LO) 11:00~22:00 21:30(LO)
定休日 無休 -店舗情報「食べログ」より-
※お店の方々をはじめ、ご尽力頂いた幹事さんに心底感謝であります。