このブログでは、3月の始め頃から、疑問視されてきた調査数の少なさを実数としてつかまえるために、厚生労働省の数字を直接公式サイトから拾い上げ、公表してきた。そして、(その不親切な資料の出し方、公表を避けたいものは表面から隠すようなやり方、1部を除き統計を累積の数字のみだすことで分かりづらい統計にしていること)を伝えてきた。
さらに、途中からは、感染拡大が心配される東京に注目。厚生労働省だけでなく、東京都が公表している統計も使い、東京の検査数の220件~多くても500件あたりではないか?との驚愕の数字に確信をもつようになり、それを確認するために自分で統計から1日あたりの検査数を表でまとめて公表するようにも工夫してきた。
そして、検査数の少なさや手法から、東京の感染者は検査ができて陽性と判断された数字で、感染者数とはほど遠いこと。見ても一目でおかしいと思える感染者数の棒グラフの意味する上下を繰り返す理由が検査体制の不備にあること。感染者が多すぎて検査が追いついていない疑い。検査件数が民間検査会社の参入で大幅にのびないままでは、感染者数は200人前後を天井にウロウロするばかりなのではないか。それを、感染が広がっていないと思うことが、いかに重大な誤解であるか。逆に、この事実こそが、東京都の検査数があまりにも低いことによって医療崩壊をもたらす警告なのだと警鐘を鳴らしてきた。
そして、現実は今も懸念したとおり、東京の陽性患者数の棒グラフ(表1)は200を超えることができずに、ウロウロと上下を繰り返し、下落傾向さえ見せる。勿論、これが本当の感染者の下落なら大歓迎の話だが、正直とてもそう思えない現実がある。
今日の東京都の数字を見てみよう。
表1 表2
学校の休校は早かったものの、他の社会活動は他国に比べ極めて動きが鈍く、緩やかだった日本。こんな感染者数で済むとは思えない。でも、小池知事もいろいろな放送局のコメンテーターも、この表を出しながら説明をする場面が最近は多くなった。「検査数の問題もあって、上下したり抑えられている。この数字だけで安心してはいけない」と皆 付け加えはするものの、危機感がまったく伝わってこない。時に、「この表をみると、少し外出自粛の効果も見えてきているようにもみえる」とコメントする人があると、背筋が凍る。
この表に含まれる本当の日本の危機的な状況を本気で説明し訴える気がないなら、このグラフは人々に誤解を与える危険な表だ。自粛の気持ちをゆるめこそすれ、引き締める効果はない。
大切な統計は堂々と公表すべきだというのが、私の基本姿勢ではあるが、自粛強化がさらに必要な危機的状況の今は、「累積感染者の棒グラフ」(表2)を使用し、どんどん右肩上がりに増大していく感染者の様子を伝えるのが大事と思っている。
このコロナウィルスはしぶとさを特徴としている。陰性で安心して退院すると、身体に潜んでいたウィルスがまたゾンビのように蘇り陽性にもどる例もある。軽症と思われる人が、突然重篤化する例もみられる。ひとたび重症化した患者が入院すると、特効薬がないだけに入院期間は長期化しベットは占有され続け、病床不足は目に見えている。人工呼吸器、人工肺不足も深刻だ。
すでに都市部では軽症患者をホテルに移したり、自宅待機が進められているが、このウィルスの感染力の強さは、防具の絶対的不足も手伝ってプロの医療関係者すら感染者が続出。累積感染者はどんどん表2のように増大し「医療崩壊につながる」ではなく、現実にもう「医療崩壊が起こっている」と見るべきだ。
そして、検査が少ないといいつつ、検査数について突っ込んだコメントやグラフをみせてくれる局がほとんどないのも不思議だった。そんな中、先日、「検査は多い時で1400件でしょ?」と、後ろの担当者に確認しながら頼りなげに小池知事が言っているのを見た。「!?」私の見てきた都の発表した統計の検査数は、最高でも400件に達したことがないのに・・・。
そして、さらにテレビで、突然したのような東京都の検査数の棒グラフをみせるようになった。都庁が公表したのか、この局以外でも同様の1400件を頂点にしたグラフが出たのをみた。
表3
私は、東京都の統計には4月11日から注目しだし、記事にも東京都の下のような統計を使ってきたが、保存しておいた4月11日の東京都のサイトでの表示(表4)は下のようになっていた。
表4
陽性患者数は4/11の数字だが、検査実施人数と検査実施件数は4/9の日付。テレビで見せていた棒グラフ(表3)の4/9の数字を見ると935件となっているが、上の東京都が発表していた検査実施件数は362件だった。この差はどこから来ているのだろう?
私も、この1ヶ月統計を見てきてようやく慣れてきたが、統計数字は注意書きに抜け道がいろいろあるのだ。
下にだした表5の東京都のサイトの数字が、ちょうど上のテレビの(表3)の検査数と一致していたので、これと4/9の上の検査実施件数とどこの違いで急に数字に上乗せが発生したかを確かめてみた。
表5
4/16の(注)医療機関が保険適用で行った検査については、4月15日分までを計上(毎週金曜日に、前週木曜日から当該水曜日までの日々の件数を反映)
なるほど、この数字が加算された数字だ。確かに、(表5)の4/9の 362件の方には、(注)医療機関が保険適用で行った検査はふくまれていない。とあった。では、医療機関が保険適用で行った検査が何件なのか。935ー362=573件か?
これは、2月29日の会見で首相相が「来週中に、PCR検査に医療保険を適用いたします。これにより、保健所を経由することなく民間の検査機関に、直接、検査依頼を行うことが可能となります。民間検査機関の検査能力も大幅に増強されます」「この1か月間、試薬の開発、精度向上などに取り組んできたところであり、3月中の利用開始を目指します。こうした取組を総動員することで、かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします。」と約束した3月5日にはじまった医療保険適用分のことだ。
では、よく注意書きに、「速報値のデータなので、後日確定データに修正される」というのもあるので、厚生労働省のデータも最新版のものを下に出して、この保険適用の数字を確認してみよう。これは、「国内における新型コロナウィルスに係わるPCR検査の実施状況」という表4月20日時点のものだ。
表6
(表6)の下のところに **4 民間検査会社分の斜体は、医療機関からの受託分のため全て保険適用分としている。とある。
では、4月9日の医療機関が保険適用で行った保険適用分は6.医療機関 230 件のことだろうか? それとも、「4、民間検査会社分の斜体は医療機関からの受託分で保険適用」とあるのだから、これも加えるのだろうか? 1094件。 可能な限り多く両方の合計をとれば、1324件と出た。ただ、これは国内検査数なので、東京分がこの中の約半数の573件とみればよいのか?
それで、思い出しました。「東京都のPCR検査が感染者に追いつかない」で書いた時に67件という少ない日が4月12日にあったこと。それで、上の表とみると、その4月12日は日曜日で、4.民間検査会社も12件、6.医療機関も保険適用分は77件。合計しても国内で89件。なるほど、テレビので見た4月12日だけ、112件と検査がへこんでいるのは、民間検査会社が日曜休みだったので減っていたのですね。そうみると、4日、5日をみても土・日だったのでへこんでいたんだと納得できた。
*因みに、(表3)の604件と東京都の検査数が減っているところですが、(表5)の604件の数字の下を見て下さい。「医療保険適用分が含まれていません」と書いてあります。つまり、これも翌週金曜日になると遡ってこの数字もこの木曜日~水曜日まで棒グラフがのびることになるようです。統計の読み方、ちゃんと知っていないと分かりませんね。
東京都が、嘘を言っているわけでないことは、確認できました。
そのかわり、ここからが重要なところです!
是非、ついでに上の表の斜線の保険適用分の増加したのがいつかに注目してみて下さい。「来週中に、PCR検査に医療保険を適用いたします。これにより、保健所を経由することなく民間の検査機関に、直接、検査依頼を行うことが可能となります。民間検査機関の検査能力も大幅に増強されます」の2月末の会見が実現されたのは、いつでしょう?
6.民間会社の保険適用が安定して100件を越える数字になったのは、3月25日以降。1000件を越えて4桁になったのは4月8日以降です。それまでは、どうやら、私が作ってきた表の通りに、東京都の検査数は、1日1000件はなかったと思われます。
検査の数字のグラフをずっと見せてこなかった東京都が、なぜここにきて検査のグラフを出すようになったかは、明白です。4月1日の489件の検査数は低いものの、切りよく4月1日のグラフにすれば、検査数はその左のグラフに比べてまだマシになったからでしょう。検査数を知りたいという都民の圧力が強くなってきていることもあるでしょう。
でも、都民の方や国民の方、もう1回 先ほどの検査実施件数(表5)をお見せしましょう。今度は棒グラフの4月1日以前にしっかり注目してみて下さいね!
3月24日のオリンピックの延期が決まる前までの東京都のPCR検査数は、200件を1回も超えていないのです!!!!!
「3月には感染者がいなかったから、検査数の実施が東京都内で200件を超えなかった」と思った方は、「帰国者・接触者外来相談センター」に寄せられた相談件数がココにでています。 例によって、厚生労働省のリンクはすぐ失効するので下にも東京の分かる部分のみ掲載してみます。
表5 (表7)
この数字が、私には悲鳴が聞こえてきますが、聞こえますか? 2月・3月の2ヶ月で4万人が相談して指定病院にたどり着いたひとが1727人、PCR検査ができた人がたったの964人なんですよ!!!!
「熱があって検査を受けたいのに、いろいろな医者をまわっても断られ続けた」。 クラスターで濃厚接触者と分かった人と、帰国者に限定されて、よほど危険な状態でないと検査を受けられなかったこと。「37.5度の熱が4日続くか、高齢者か持病のある人」しか受け付けられないと言われて、どの位の人々が不安におびえながら苦しい日を過ごしたのでしょう。自分はコロナウィルスに感染していて家族に感染させてしまうのではないかと心を痛めながら耐えたのでしょう。
そして、今はどうなのでしょうか?検査が3月24日以降は伸びてきたから安心といえるでしょうか?ドライブスルーPCR検査が始まったところがあったり、少し改善の兆しはありますが、病床が足りずに軽症で自宅待機していた人が、今日自宅で死亡しているのが発見されたとのニュースが流れました。感染者があちこちの病院でみつかり、機能不全になる病院のニュースが連日報道されています。クラスターで濃厚接触者と分かった人と、帰国者に限定されて、よほど危険な状態でないと検査を受けられない現実が、今は本当に改善されているのでしょうか。
「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします」と言う約束は、もう2ヶ月になろうとしているのに・・・。
もう、これ以上待てない! そう思った自治体や人々が動き出しているのが現実です。
さあ、民間検査会社の動きもようやく出てきたところですが、「自己責任」という言葉が大好きで、自分はまったく「責任」を取った試しのない首相のもとで、私たちはこの国難をどう乗り切っていけばよいのでしょうか?
政権のしてくれることを待つことではなく、個人や、地域や、自治体や、企業が、自分たちの足下で手を繋いで頑張っていくことだけです。「私には何ができるだろう」ひとりひとりが、まず感染をしないために家に留まりながら、自分のできることを少しずつ踏み出していくこと。