私の最後の教え子の一人、郁真君のおばあちゃんから郁真君が志望校に合格した旨の喜びのお電話を一昨日の午前中にいただいた。
移住を決断する際、最も胸を痛めたのが塾を閉じなければならないことだった。途中で放り投げてしまうことの後ろめたさと申し訳なさで心苦しかった。
それを彼らに伝える日、私は重い心を抱いて彼らの前に立った。どんな反応をするのだろう。彼らの怒りを買うのを覚悟しつつ、塾を閉鎖しなければならなくなった経緯を率直に告げた。
驚くことに彼らは笑顔で私の話を受け入れてくれた。露骨に嫌な顔をされたり、ふてくされたりされても仕方がないと思っていただけに意外だった。嬉しかった。
当時、郁真君は中学2年生だった。彼のお母さんも、叔母さんも私のもとに通って来てくれていた。
彼は寡黙な少年だった。塾に通って来るのが楽しいのか否か。私のことをどのように受け止めていてくれるのか知る由もなかったが、彼のお母さんやおばあちゃんからは、私のことを気に入ってくれている旨、時折伺っていた。
塾の閉鎖を告げた数日後の授業の時、彼は世話になったお礼だとプレゼントを渡してくれた。ハンカチだった。自分のことより、新しい生活を始めようとする私に対してのはなむけを用意してくれたのだ。
私は、このような塾生と共に時間を過ごすことの出来た幸運を改めて噛みしめた。
余談だが、彼のおばあちゃんには引っ越しの際の片付け時にも大変お世話になった。また、こちらに越してきた後も何かと気にかけていただいている。感謝の外ない。
合格発表の日の午後、郁真君自身からも合格の報告をもらった。
郁真君、合格おめでとう。よかったね。