一昨日の日曜日、私の暮らす佐々町の町政施行70周年記念式典が盛大に挙行された。
平成の大合併で近隣の北松浦郡の旧町は離島の小値賀町を除き、すべて佐世保市に吸収合併されてしまった。だが、どっこい佐々町は単独で生きている。そして今、時代に即した新しい町づくりを始めている。
この日は、教室で長崎学習塾主催の秋期模試を行う日でもあった。
会場の文化会館まで私の家から車で5分とかからない。式典は午前10時からだから、会場に10分前に到着することにして9時45分に家を出ればよい計算になる。模試の開始時刻は午前9時、1時限目の英語の冒頭のリスニングテストを終えたところで女房どのに後を託し、例のごとくあわただしく支度をして家を飛び出た。
会場の向かい側の住民センターの駐車場に車をとめ受付に向かう。雨の中、役場の職員が総出で交通整理・受付・案内、その他にと動いていた。地方分権、行政のスリム化は時代の要請だが、特に私たちの町のような規模の小さな自治体における職員1人ひとりの果たすべき役割は今後益々大きくなる。研鑽を積み、さまざまなことで町のために力をふるってもらいたい。私たち町民も共に汗を流そう。
あいにくの雨の中、雨合羽に身を包み、笑顔で応対してくれる若い職員のみなさんのはつらつとした仕事ぶりに嬉しくなり、会場の中へと向かった。
間もなく開式。古庄町長の式辞、福田町議会議長の挨拶の後、各種功労者の表彰が続いた。
この表彰について、事前に「町民表彰候補者の推薦について」という文書が町長名で届いていた。表彰基準が11項目あった。その中の「町民の規範となる善行者」に該当するとして、私の暮らす町内会のHさんを推薦していたところ、過日、Hさんが表彰される旨の連絡が入っていた。
10年ほど前の一時期、私は子供たちの交通安全の一助にと小中学生の登校時に横断歩道に立っていたことがある。その横断歩道の近くに屋根付のバス停があった。横断歩道への行き帰りにそのバス停を通るのだが、そこはいつもタバコの吸殻や空き缶が散乱していた。見かねた私は、やがてちりとりとほうきを持参し、子供たちを見送った後、バス停の清掃をしてゴミを自宅まで持ち帰っていた。
その後、地域のいろいろな役割を担うようになった私は、3,4年で横断歩道に立つのを卒業させていただいた。
そのバス停周辺の清掃を継続していただいているのがHさんである。特に、私がお願いをしたわけではない。Hさんが自発的になさっていることだ。
80歳近くになるHさんは市井【しせい】の人としてご家族と静かに暮らしておられる。バス停の清掃も目立たぬようなさっておられる。
2年前だったか、長崎県保健環境連合会での表彰候補者に推薦したところその対象になられた。しかし、その表彰式には出席されなかった。晴れがましい所に出るのは苦手だとおっしゃる。
このたびも、事前に表彰の候補者に推薦させてくださいと申し出たところ渋っておられた。そこを半ば強引に了承を得て、推薦していたのだが、やはり欠席なさっていた。
式典には地元選出の衆参両議員、近隣の市町の首長及び議員等のみなさんの他、町の名士も多数出席しておられた。私のような凡人ならば鼻高々で臨むところだがHさんは違うのだ。
私も、80歳になる頃にはHさんのように気高く生きてみたい。