のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

カレッジ・オブ・ザ・ウィンド(1992年版)

2009年12月14日 22時15分05秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■ストーリ
 年に一度の家族旅行で事故にあい、家族5人を失ってしまった
 女子高生のほしみ。ほしみ自身も頭の怪我で入院するが、
 なぜか家族もついてくる。幽霊となって、ひとりぼっちになった
 ほしみを見守ろうというのだ。
 一方、ほしみの伯父の鉄平も、夜中に病院に現れる。
 警察に追われている鉄平を、ほしみは匿うが・・・。
 家族で過ごす、最後の夏。ほしみたち家族に別れの日が
 少しずつ近づいてくる。 

■感想 ☆☆☆☆☆*
 キャラメルさんの作品の中で、たいそう評価が高い
 「カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」。
 今年、久々にに再々演し、それに伴い、DVDが発売されました。
 1992年にヒロインを演じられている町田久美子さんは
 キャラメルボックス初期に最も人気が高かった女優さんらしく
 噂によくあがる名前だけに楽しみで、楽しみで。

 ・・でしたが。
 残念ながら、私は町田さんの演技、どうにもこうにも苦手でした。
 うん。アイドル的な人気だったんだろうなー、とか
 確かにかわいい女優さんだよねぇ、とか
 ヒロインの役がとっても似合ってるよね、とか思うのですが。
 でも、苦手。
 大げさすぎる感情表現がぶりっこ口調にしか聞こえず、
 途中で心底嫌になりました。
 喋り方がNHKの子供向け番組の歌のお姉さん風?
 うたのおねえさんは大好きだけど、
 なんだか舞台上で、演技でこの喋り方はとっても苦手・・・。

 ただ、脚本がすばらしくて、中盤以降は彼女の演技が
 まったく気にならなくなりました。
 クライマックスでは、彼女の「家族を思う気持ち」に
 涙が止まらなくなったほど、物語にのめりこみました。
 優しくて、あったかくて、かわいらしい登場人物ばかり。
 それなのに、どうにもうまくいかない人間関係。
 お互いがお互いを思いあっているのに、すれ違ってしまう関係性とか
 すれ違ってしまったが故に、過ちを犯し、
 結果的に大好きな家族を傷つけてしまう登場人物たちとか
 「優しい」だけでは済まされないシリアスな話の展開もあり、
 でも、そのシリアスな話の展開が実に「キャラメルらしい」
 温かい結末に昇華されていて、長年、キャラメルファンに
 愛され続けている作品のことだけはあるなぁ、と思いました。

 これは、ぜひ2009年版も見たい。
 でも、一番見たいのは、エリーがほしみを演じた1996年版かな。
 あのほわんとした笑顔で温かい雰囲気を醸し出していたエリーが
 どんなふうにほしみを演じていたか非常に見たいです。
 願わくば、こちらのDVD発売もお願いいたします。

きみがいた時間 ぼくがいく時間

2009年12月12日 01時19分45秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■ストーリ
 住島重工の研究員・秋沢里志(上川隆也)は、海外派遣留学を終えて、
 5年ぶりにニューヨークから帰国した。空港で待っていたのは、
 5年前に別れたはずの恋人、梨田紘未(西山繭子)だった。自分の帰りを
 待ち続けていた紘未に里志は激しく心を動かされる。
 一方、里志は住島重工の子会社P・フレックで、新しい機械の開発に
 携わることになる。それは、物質を39年前の過去に送り出す機械、
 クロノス・スパイラルだった。最初の実験の日、里志の元に電話が
 かかってくる。紘未がトラックに撥ねられ、病院に運ばれたのだという。
 紘未を亡くした里志は、彼女を救うため、クロノス・スパイラルに
 乗り込むことを決意する。

■感想 ☆☆☆☆☆☆
 出演者速報を見た時、「久々の上川さん主演!」と大興奮でしたが
 まさかこれが「キャラメル最後の上川さん!」になるとは。
 でも、今までもめったにキャラメルさんの舞台には出演されていなかったし
 今後、二度とキャラメルさんの舞台に出ないわけではないし
 2010年度クリスマス公演には既に出演決定だし
 今までと変わりなくキャラメルさんとの関係を築いてくれるんだろうな
 と安心しています。

 そんなこんなで「きみがいた時間 ぼくがいく時間」。
 「演劇ブック」にて、2008年度上演舞台において
 作品賞ナンバー1、そして主演男優賞ナンバー1に選ばれていました。
 まして、主演は上川さん。
 いやがおうにも期待が高まるわけですが・・・・。

 その期待を全く裏切ることない素敵な舞台でした。
 キャラメルの核となっている「人が人を思う気もち」が
 至るところに溢れていて、これぞ、正統派のキャラメル舞台!
 という感じです。

 ただ「クロノス」シリーズなので、タイムトラベルが
 話の核になっており、どうしてもタイムパラドックスが
 生じてしまうこと。
 話のつじつまがあわなくなってしまうこと。
 仕方がないところではあるのですが、この二点が
 やはりどうしても気になります。見終わって冷静に考えると
 突込みどころがたくさんあるなぁ、と。

 でも、そういった細かい「気になる!」ことを
 あっさりと無視できるだけの勢いと感動が詰まった舞台でした。
 もう、とにもかくにも上川さん。
 上川さん祭りの2時間半です。
 上川さんを中心に話が構成されていて
 そして、その構成や役柄に上川さんのキャラクターや演技力が
 見事に合致していて、彼の魅力がこの舞台を仕上げているといっても
 過言ではない出来でした。
 (って、冷静に考えると、「ファンの欲目」という気もしますが。)

 ヒロインを演じていた西山繭子さんはとにかく美しい。
 美しい上にかわいらしい!気が強そうなのに健気!
 初めてこの方の演技を拝見したため
 彼女の魅力が彼女の持つ演技力のなせる業なのか、
 それとも彼女のキャラクターが役柄とよく合っていたのか
 どちらなのかが不明ですが、ものすごく素敵なヒロインでした。
 上川さんととてもお似合いでした。

 キャラメルで美しいヒロインと言えば、岡内さんだけれど
 私はどうにもこうにも岡内さんの演技が(というか、声の出し方が)
 苦手なだけに、今回のヒロインを岡内さんではなく、
 客演に託してくれたことに感謝です。

 そして、その岡内さんは上川さんの妹役。
 どちらかというと、演じている、というよりは
 「ナレーション」のような役柄で、あまり感情が表立つことはなく
 それゆえに安心してみることができました。
 彼女にはこれぐらいの淡々とした感情の放出のほうが似合う気がします。

 でもって、大好きな岡田達也さんは今回も見事な悪役を披露。
 最近、岡田さん、大内さんは悪役がコンスタントに回ってきてます。
 もっとも、冷静に考えると、岡田さんはタイムトラベルをしてきた
 上川さんに運命を狂わされた人であって、決して悪い人ではないのです。
 どちらかというと、少し弱くて、少しずるくて、だからかわいそうな人。
 クライマックスで彼がしたことは卑劣だし、立派に犯罪だけれど
 見終わって冷静に考えると、「分からないでもないな」と
 彼の逆切れぶりを納得してしまう自分もいました。
 クライマックス後、まるで「なかったこと」のように
 彼の存在が消えていたのは、脚本としていかがなものかな
 とも思いました。ここは、この作品の中で最も納得がいかない部分です。

 そしてそして上川さんの最大の理解者役を演じた坂口さん!
 すごいです。さすがの演技力です。
 ワタクシ、キャラメルでもっとも好きな女優さんは岡田さつきさんですが、
 坂口さんの演技力、演じる役の幅の広さは抜群だな、と思うのです。
 切ない切ない純子役を好演。ものすごく泣けました。

 あぁ。生で見たかったな。
 DVD購入して、本当によかったなぁ、と思った作品でした。
 (もう4回は見返しました。)

最近のキャラメル熱

2009年12月12日 01時16分38秒 | 舞台(キャラメルボックス)
キャラメルさんが福岡からの撤退宣言をしました。
撤退ではなく、機会さえあれば、また戻ってきたい
いつだって、福岡公演は検討中、と書かれていましたが、事実上の撤退宣言。
過去のキャラメル福岡公演は、
上川さん主演の「太陽はいつもひとり」以外すべて赤字だったんだとか。
そう言われると、辛いというか
撤退もいたしかたない気がするというか。

・・・でも、今後は生キャラメルを見る機会がないのかと思うと
本当に本当にさびしい・・・。
そのうえ、上川さんもキャラメルさんを退団してしまうし。

とは言え、来年はキャラメル25周年。
そして、私が深夜のNHKでキャラメルさんを知った
記念すべき舞台「サンタクロースが歌ってくれた」が上演決定!
上川さん、西川さん、近江谷さんら主要出演陣はそのまま!!
という嬉しい嬉しいニュースが既に発表されているので
来年のキャラメルも楽しみです。
確実に発売されるであろう今回の公演のDVDとか
もしかすると発売されるのでは・・・と期待している過去公演の
(つまりNHKで放送されたバージョンの)DVDとか
福岡公演がなくても、お金を使ってしまうこと間違いなしです。

それに。
「少年ラジオ」「トリツカレ男」のDVDも欲しいのよねー、
と、只今、財布の中身と(というよりは、理性と)
相談しながら考え中。
ボーナスが出た気の緩みからうっかり購入してしまう可能性80%くらいです。

それにしても・・・。
返す返すも惜しいのは、「太陽はいつもひとり」が百道であっていたとき
私はその舞台会場の目の前を通って、高校に通っていたわけで・・・。
いくら舞台に興味がなかったからと言って
いくらお小遣いにまったく余裕がない学生時代だったからと言って
なんてもったいないことをしたんだ!と未だに悔やまれます。
後悔先に立たず、の見本のような悔やみ方ですが。

五右衛門ロック

2009年09月23日 23時09分43秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■劇団新感線2008年夏公演「五右衛門ロック」
■脚本:中島かずき
■演出:いのうえひでのり
■キャスト
 古田新太、松雪泰子、江口洋介、川平慈英、橋本じゅん、濱田マリ
 北大路欣也、粟根まこと、森山未来、高田聖子

■ストーリ
 豊臣秀吉の時代、稀代の大泥棒・石川五右衛門(古田新太)は
 役人・岩倉左門字(江口洋介)らの手でお縄となり、釜茹の刑に
 処されるが、謎の美女、真砂のお竜(松雪泰子)に助けられる。
 そこに現れたのは、南蛮人ペドロ・モッカ(川平慈英)たち。
 彼らに乗せられた五右衛門一味は、南の果てのタタラ島に眠る
 神秘の石「月生石」を求めて船出する。
 しかし彼らを追う左門字もろとも猛烈な暴風雨が襲い、南の島に
 流れ着いた彼らを待ち受けていたのは、タタラ島国王、
 クガイ(北大路欣也)だった。
 月生石を狙う五右衛門一味、五右衛門を追いかける左門字、
 月生石と島を守ろうとするクガイ、グガイを倒そうとする元手下の
 ボノー将軍(橋本じゅん)とその妻(濱田マリ)、母親を殺した
 父親を憎み続け、復讐を誓うクガイの息子カルマ(森山未來)、
 そして、すべてを裏で操る死の商人、ペドロ。
 様々な人々が入り乱れ、タタラの最後の戦いが始まる。
 果たして、五右衛門の運命やいかに!

■感想 ☆☆☆☆☆☆
 約1年ぶりの新感の舞台。
 3時間半という上映時間に恐れをなし、危うく諦めるところだったが
 いざ見てみると、まったく長さを感じさせない舞台だった。
 開始と同時に舞台に引き込まれ、そのまま舞台上の登場人物と
 共に過ごすことができた3時間半だった。

 新感線の公演の中でも特に音楽にこだわったというこの舞台。
 生バンドが舞台の上で演奏し続け、その音楽に合わせて役者が
 歌い上げるミュージカルスタイルだ。しかし、流れる音楽は
 すべてロック。迫力満点のロックに乗せ、歌あり踊りあり、
 おちゃらけあり、笑いも涙も勿論、あり、のスペシャルな舞台。
 「夏公演」ならではの「お祭り気分」あふれる
 贅沢なエンターテイメントだった。
 その壮大な舞台に鳥肌が立ちっぱなしの3時間半。

 特に主役を演じる古田新さんのかっこよさが際立つ。
 舞台を見るたびに、そのかっこよさと色気、身のこなしの美しさに
 くらくらする。普段、テレビで見る彼と舞台上の彼はまったくの
 別人ではないかと思うほど、舞台で映える役者さんだと思う。
 そして、様式美を追求した「いのうえ歌舞伎」の身のこなしが
 最も似合う役者さんだと思う。

 勿論、ゲスト陣、そして新感線の看板役者さんたちも
 彼に負けない熱演を繰り広げている。
 狭い舞台の中を縦横無尽に駆け抜け、暴れまわる。
 特に濱田さん、高田さんの歌唱力、森山さんの声の力強さ、
 川平さんの1秒たりともじっとしない身のこなしと
 そのバイタリティは圧巻。ミュージカルの似合う役者さん、
 というのは確かにいるのだと思った。
 そして、橋本さんのキュートな小悪党ぶりときたら!
 彼ほど小悪党が似合う役者さんはいないんじゃないかな。
 憎めない「ちっちゃい」オトコをくどくキュートに演じていた。

 この迫力を一度、生でも見てみたい。そう思わせてくれた舞台。
 来年のゲキ×シネも楽しみだ。

髑髏城の七人

2008年10月09日 00時08分59秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■劇団新感線「髑髏城の七人」
■脚本:中島かずき
■演出:いのうえひでのり  
■キャスト
 古田新太、水野美紀、佐藤仁美、坂井真紀、橋本じゅん
 河野まさと、川原正嗣、佐藤正宏、山本亨、梶原善

■ストーリ ☆☆☆☆☆
 天正18年、本能寺の変で織田信長が明智光秀に討ち取られてから
 8年が経過した時代。
 天下統一を目前とした豊臣秀吉の支配がいまだ届いていない関東は、
 「天魔王」と呼ばれる仮面の男が率いる「関東髑髏党」に支配されていた。
 なりゆき上、関東髑髏党に追われていた少女、沙霧(さぎり)を助けた
 「玉ころがしの」捨之介(すてのすけ)は、偶然知り合った
 「牢人」狸穴二郎衛門(まみあなじろうえもん)とともに、旧知の
 無界屋蘭兵衛(むかいやらんべえ)を頼って色街「無界の里」へと向かう。
 しかし、無界の里で沙霧を匿ってもらおうと思っていた矢先、
 里は髑髏党の襲撃を受けてしまう。
 天魔王と戦うことを決意する捨之介たち。
 果たして捨之介や蘭兵衛と天魔王との因縁とは?

■感想
 前回「メタルマクベス」で新感線の舞台に感銘を受けたものの
 「でも、前回は脚本がクドカンさんだったし。キャストも豪華だったし。」
 と、まだ新感線自体の魅力については半信半疑のまま、
 新感線さんの代表作と言われている「髑髏城の七人」を鑑賞。
 幕間で我にかえり、確信した。
 私は新感線の作り出す世界がとてつもなく好きだ。

 徹頭徹尾「エンターテイメント」と「分かりやすさ」にこだわった姿勢や
 舞台への想いはキャラメルと共通するものを感じる。
 しかし、提供されるものはまったく異なる。
 スケールの大きさ、躍動感、勢いすべてが破格だ。
 キャラメルは良くも悪くも「親近感を覚える舞台」。
 ファンタジー作品が多いのに、「身近な世界」を感じさせられるものが多い。
 でも新感線は「まったく異なる世界」だ。
 現実世界をすべて忘れて、目の前に提供される世界に入り込んでしまう。

 広い広い舞台に作り込まれた世界で颯爽と走り抜く役者たち。
 彼らが本当に「全力で走っている」姿を見て、
 私が今まで見ていた舞台とはそもそもスケールが全く違うのだと思い知った。

 「髑髏城の七人」。
 織田信長亡きあとに、織田信長が目指した世界を夢見続ける影武者。
 彼の野望を打ち砕くために立ち上がる七人。しかし、誰が「七人」なのかは
 舞台の中盤過ぎまで、予測がつかない。誰が味方で誰が敵なのか。
 誰が立ち上がり、時代に刃向かうのか。
 時代に翻弄され、大切な人を失っていく登場人物たち
 それでも自分の信じる者を守り続けようとあがき続ける登場人物たちに
 胸が熱くなる。

 主役を演じる古田新さんのかっこよさに鳥肌が立った。
 古田さんは大好きな役者さんだけれど、今まで一度たりとも
 「かっこいい」なんて思ったことなかったのに。
 彼の表情や立ち居振る舞いから立ち上る色気とか、
 切れ味のよいアクションが与える美しさに目が離せなかった。
 すごい。とにかくすごい。

 そして、愛すべきキャラを楽しそうに演じていた橋本じゅんさん。
 たまにドラマで癖のある役柄を演じているところをお見かけして
 いたけれど、今回もやっぱり癖がある人物。
 でもたまらなくかわいらしい。
 きっと、こういう役柄が持ち味なんだろうな。
 田舎出身の単なる百姓。品性とは無縁だけれど、
 そこらへんの武士より数千倍も武士としての心構えや信条を
 持ち合わせている。弱きを助け、強きをくじくことができる。
 賢くはないし、かっこ悪いところもたくさんある。だけど、かっこいい。
 中盤で彼が見得を切るところがクライマックス開始の合図だった。
 「よし、行こうじゃないか。七人で。
  まさか天魔王もこの七人が何かできるとは思うまい。
  あいつが相手にもしなかった雑魚の力を思い知らせてやろうぜ。」
 そして、七人は私たちに背を向け、舞台の奥に向かうのだ。
 7人が並んで背中を向けるので、こちらに表情は見えない。
 なのに、間違いなく七人の熱い視線が見えるこの場面で鳥肌が立った。

 「いのうえ歌舞伎」と言われているこの舞台では
 役者たちが歌舞伎を思わせる見得の切り方や立ち居振る舞いを披露し
 それら様式美の美しさ、力強さが舞台に与える迫力を見せ付けてくれる。
 もう一度見たい、そう思った作品だった。

劇団新感線「メタルマクベス」

2008年09月25日 22時34分19秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■劇団新感線「メタルマクベス」
■脚本:宮藤官九郎
■キャスト
■ストーリ
 西暦2206年。繰り返される戦争によって瓦礫の荒野と化した未来。
 レスポール王(上條恒彦)率いるESP王国が誇る無敵の将軍
 ランダムスター(内野聖陽)は、親友エクスプローラー(橋本じゅん)と
 共に城へと帰る途中、三人の魔女にこう告げられる。
 「万歳!マクベス!いずれは王になるお方」

 居城で待つランダムスター夫人(松 たか子)は、夫がやがて王となる
 という予言を知り、それを確実に実現させるため、王を殺すことを
 けしかける。
 ためらうランダムスター、短剣を差し出すランダムスター夫人。
 「やるなら今しかないのよ、ランディ」
 その言葉に、ランダムスターは意を決し、しっかりと剣を握りしめ
 王の寝室へと向かった。

■感想 ☆☆☆☆☆
 今年は予定があわず、実に4年ぶりぐらいに、キャラメルボックスの
 舞台を見に行くことができませんでした。キャラメルさんたちが
 福岡に来ているとき、ワタクシは東京へ。すれ違いも甚だしい。
 というわけで、寂しく悲しい夏でした。

 そんなとき、舞台を撮影したDVDを映画館で上演する
 「ゲキ×シネ」というイベントが今年も行われることを知りました。
 キャラメルと縁がなかった今年ですが、ずっとずっと見てみたかった
 劇団新感線の舞台をとうとう見ることができる!!と
 喜び勇んで、仕事帰りに見てきちゃいました。
 劇団新感線に興味はあったものの、まったく見たことがないと
 それはそれで劇団のカラーが見えず、DVD購入はためらわれるのです。
 なんてったって、DVDは7,000円以上。
 (新感線さんは、比較的有名な俳優さんも競演するため
  DVDはかなりお高いのです。)冒険で買える値段ではありません。
 でも「ゲキ×シネ」なら大スクリーンで見て、2,500円!!
 素敵過ぎる!!

 第1弾は「メタルマクベス」。
 シェークスピアの名作「マクベス」を現代版に、そしてミュージカル風に
 アレンジしたもの。シェークスピアは大好きですが、悲劇が苦手な
 ワタクシは「真夏の世の夢」や「じゃじゃ馬ならし」などは、
 何度も読み返したものの、「マクベス」「リア王」は流し読みで
 1度読んだきり。「ロミオとジュリエット」に至っては、読み終える
 ことができませんでした。筋金入りの悲劇嫌いです。

 そんなわけで、実に先入観なく、まっさらな状態で舞台を
 楽しむことができました。

 予想以上にハイスピードな舞台と生演奏ならではの迫力あふれる音楽。
 原作が古典演劇だとは思えないほどスタイリッシュな衣装と
 斬新なアレンジ。人間味あふれる登場人物たちに共感を覚え、
 あっという間に、舞台上の世界に引き込まれました。

 息もつかせぬ展開に見入りながら感じたのは、「人間の業」。
 自分とは器が違うと分かっていても、ほしいと願わずにはいられない
 人間の欲の深さ、そして、異なる大きさの器を手に入れてしまった
 人間に与えられる苦しみの大きさ。このふたつでした。

 ランダムスター夫人(マクベス夫人)がランダムスター(マクベス)に
 語りかける「器の小さな人間が大きなものを手に入れるためには、
 器に見合った大きなことをしなきゃいけないの!!」という言葉。
 そして、主君を殺した後、眠れなくなってしまったランダムスターが
 同じように苦しんでいる夫人に囁く「器の小さな人間が大きなことを
 するのは大変なんだな」という心からのつぶやき。
 それらが表す人間の欲の深さ、可笑しさ、哀しさ、罪への恐れ。
 決して悪人ではなかったランダムスター夫妻が欲におぼれ、
 狂っていく様は、決して他人事ではなく、だからこそ、嫌いにもなれず
 見終わった後に感じたのは、ただただ「憐れみ」「哀しさ」でした。

 とはいえ、脚本家はクドカンさん。
 笑いあり、ドタバタあり、お色気あり、尻出しあり、とハチャメチャ
 な展開。3時間半、大いに笑いました。

 それにしても、改めて松さんの演技力に感動。
 前半は、色っぽく、かわいらしく、ふてぶてしいランダムスター夫人を
 とても魅力的に演じ、そして後半は狂っていく夫人をリアルに哀しく
 演じきっていました。とにかくかっこいい!
 そして、キャラメルでもおなじみ栗根まことさん!
 メリハリのきいた小気味いい台詞回しは、今回の顔ぶれの中でも
 ピカイチだったと思う。その台詞回しとコメディセンス、そして
 シリアスな立ち回りが彼の魅力を一層引き立てていました。

 初めての新感線の舞台は大満足。
 しかも、今回はゲキ×シネの舞台第1弾。
 あと4作品も見ることができるのです。今年の秋は、喜びのたくさん
 つまったゲージュツの秋になりそうです。

快傑 三太丸/1999年ファンタジックシアター

2008年07月19日 12時03分36秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■快傑 三太丸
■ストーリ
 「私は子供が大好きなんだ。
  子供の笑顔を見ると、それだけで幸せな気持ちになれるんだ」

 ナツヤスミ。中学2年のみずきは「友達なんかいらない」が口癖の
 気が強い女の子。クラスメートの野上と共同で宿題をやる事になったが
 意見が合わずに「私は一人でやる」と宣言した。みずきがテーマに
 選んだのは戦国時代。『渚姫の伝説』という本に出てくる渚姫が
 大好きだからだ。
 ある日、外国に行っていたおじいちゃんが10年ぶりに帰ってくる。
 大人には見えない真っ白い袋を持った不思議な友達と一緒に。
 おじいちゃんがみずきに言う。
 「私はサンタクロース。おまえの味方だ」

■感想 ☆☆☆☆
 久々にDVD鑑賞。
 やっぱりキャラメルが好きだー!!と再確認した。
 歌あり、踊りあり、とまるでミュージカル。
 キャラメル最大の特色「わかりやすさ」「シンプルなメッセージ」を
 前面に押し出し、見る人の胸に訴えかける舞台。

 「友達なんかいらない。」
 「人は裏切るつもりがなくても、いつのまにか変わっていく。
  少しずつ少しずつ変わって、以前とまったく異なることを
  考えるようになる」
 「裏切られるぐらいなら、信用しないほうがいいのだ。」

 友人に裏切られた過去を持つみずきと、
 忍びの者として生きてきたが故に、人を信用できない吹雪御前。
 ふたりの抱える負の感情。それに対比して描き出されるのが
 みずきのおじいちゃんと吹雪御前の妹、渚姫だ。
 幼馴染であり、初恋の人であるきよたか様に会いに行こうとする
 渚姫は、道中で初恋の人が妻をめとったことを知る。
 それでも、彼女はきよたか様に会いたいと願い続ける。
 なぜだ、と問う吹雪御前に渚姫が答えた言葉が印象的だった。

 「裏切られたほうよりも裏切ったほうの心のほうが
  傷ついているかもしれないから。
  だから私は、会って笑顔で
   「私は今幸せです。幸せになります。」
  と伝えたいんです。」

 まっすぐすぎて照れくさくなるようなテーマに、いつも真正面から
 取り組むキャラメルボックスの姿勢が好きだ。
 悪役の吹雪御前も、妹が傷つくところを見たくないと願う姉に
 過ぎない。やさしさが詰まった物語。
 ZABADAKの透明感あふれる音楽が舞台によく合っていて
 終始、胸がいっぱいになった。

ユタと不思議な仲間たち/劇団四季

2007年11月27日 22時56分57秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■ユタと不思議な仲間たち/劇団四季
■11月23日NHKにて朝、放送
■ストーリ
 東北ののどかな村に、東京からの転校生「勇太(ユタ)」がやって来る。
 新しい環境になじめず、大作を始めとする村の子供達からいじめられる
 ユタに寅吉爺さんが村に伝わる「座敷わらし」の話をする。
 言い伝え通りに、満月の夜に大黒柱のある古い家に一人で泊まった
 ユタは現れた座敷わらしと友達になり、時間を共有するようになる。
 生きたくても生きられなかった座敷わらし達の思いに触れ、少しずつ
 たくましくなっていくユタ。身体も鍛え、村の子供達に受け入れられた
 ユタに別れの時がやって来た。

■感想 ☆☆☆
 ミュージカルが大好きだ。人の声によるハーモニーがたまらなく好きだ。
 場面展開が少々不自然だろうが、話の流れがもたつこうが
 音楽によって、人の声によって、伝えられる思いはストレートプレイより
 迫力があって、より一層、胸に迫ってくる。

 このミュージカルは昭和初期の東北を舞台にしており、座敷わらしの
 姿がどこか歌舞伎を思わせたり、音楽は演歌っぽくこぶしが入っていたり
 「和」を意識したものになっている。東北なまりの科白と
 こぶしを効かせた力強い歌声が私の心にぐいっと響いた。
 この迫力がミュージカルの魅力なのだ。

 伝えられるメッセージはどれもとてもシンプル。
 生まれてすぐに間引かれたり捨てられたりした座敷わらしたちは
 生きたくても生きられずに訴える。
 「生きてると辛いこともたくさんある。だから、生きてるってことは
  ただそれだけですばらしいことなんだ。尊いことなんだ。
  何かをするために生きるんじゃない。生きるために生きるんだ。」

 けれども、やはりそれだけでは物足りない。
 人は「ただ生きる」だけでなく「何かをしたい」「認められたい」
 「誰かと思いを共有したい」と願ってしまう欲張りな生き物だから。
 でも、何かを得るためには自分から行動しなければいけない。
 待っているだけでは何も変わらない。
 「生きて何をするかは自分次第。自分の心も身体も自分で磨いて
  鍛えてやるしかないんだ。自分が何をするか、なんだ。」

 父親が亡くなって寂しくてたまらなかったユタ、新しい土地に
 全くなじめずにいたユタは「座敷わらし」という不思議な仲間を
 得て、心も身体も変わっていく。変わったユタが新たに得たものは
 「人間」の仲間。ユタが最初から最後まで求め続けたもの
 そして、ラストでみんなが高らかに歌い上げるのは「ともだち」。
 そのメロディの美しさがシンプルなテーマを一層ひきたたせている。

 喝舌の良すぎる「いかにも舞台」の話し方には、ちょっぴり違和感を
 覚えるが、流れる歌はどれも耳なじみがよく、アルバムを購入したい
 と思うほどだった。

猫と針/チャレンジシアター2007

2007年09月17日 14時12分13秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■猫と針
■ストーリ
 高校時代の同級生のお葬式帰りに集まったかつての部活仲間5名。
 彼らはとりとめもなく、思い出話や近況報告、共通の知り合いの
 噂話をつづける。

 ~人はその場にいない人の話をする~

■感想
 「チャレンジシアター」と銘打って行われた今回のキャラメル。
 脚本は恩田陸さん。それだけで期待急上昇。
 しかし、私の中には「今までのキャラメルが好き」という気持ちも
 どこかにあり、見るまでは自分が楽しむことができるのか
 やや不安だった。

 しかし。その心配は杞憂に終わった。ちゃんと楽しめた。
 確かに今までのキャラメルとは全く違う。
 「単純明快!説明不要!さあ、思う存分楽しんで!!」というような
 舞台ではない。「現代演劇」っぽく、舞台も衣装もシンプルで
 大人の雰囲気が漂う。何より、今までのキャラメルと決定的に違うのは
 「人間の影」「誰もが持っているちょっとした毒(針)」を舞台上で
 明確にしているところ。
 キャラメルの単純明快で分かりやすいところ、人間に対する希望を
 掲げ続けるスタンスが大好きだが、人間はそんなに分かりやすく
 単純なものではない。いい人でも心に闇を持っているし、人に言えない
 ヒミツを抱えていることもある。反対に心に闇を抱えている人も
 親切なふるまいをすることもある。すべてをオープンにさらけだして
 生きている人なんていない。

 そういったことを見終わってから考えた。
 キャラメルらしくユーモアはそこかしこにちりばめられている。
 けれど、見終わった後になんとなく寂しい気持ち、ものがなしい気持ちに
 なった。人はその場にいない人の話をする。その場にいない人の話をし、
 その場にいる人たちに本音をすべて打ち明けられず、
 寂しさや不安を抱えて生きている。
 そんな登場人物たちが他人事のようには感じられなかったから、
 余計に言葉では表現しにくい寂しさを感じた。

 今回の舞台は岡田さんプロデュース。「キャラメルの岡田さん」には
 珍しく癖のある、けれどもある意味等身大の役柄を楽しそうに
 演じていた姿が印象的だった。
 本当のところ、今回の舞台、見に行こうかどうしようか直前まで
 真剣に迷っていて、その迷いを断ち切ったのが「岡田さんプロデュース」
 だった。見に行くと決めてからは、会場に向かうまで真剣に
 どきどきしてしまって、そんな私の心臓に自分で呆れてしまった。

 他の4名のうち、特にすごいと思ったのは前田さん。
 前田さんは好きな役者さんなんだけれども、そこまで注目して
 見たことがなかった役者さんだった。けれど、今回の舞台で見る目が
 本当に変わった。この人、すごい!!なんてナチュラルに役柄の
 人物になりきってしまうんだろう。いかにもクラスにいそうな、
 ちょっぴり天然のオンナノコを天然だけではなく、いろんなことを
 考えているのよ、意外と一番深く物事を見つめてるのよ、という
 雰囲気をかもし出しながら演じているその姿に圧倒された。
 いつものキャラメルでは、オーバーアクションのコメディエンヌぶりを
 突き抜けて演じる姿がすがすがしくて、そこが好きだったんだけれども
 なるほど、こういう演技もするのか・・・と本当に目からウロコでした。
 こういうのもチャレンジシアターならでは、かもしれない。

 そして、石原さん!!
 実は彼の演技を見るのは初めてで、というよりも彼自体を見るのが
 おそらく初めてで、キャラメルにこんなかっこいい人がいたのね!!
 と大興奮でした。演技も好きだったし。
 もっと他の舞台にも登場してほしいな。

 またまた好きな役者さんが増えて幸せをもらった舞台でした。
 ありがとう。また福岡に来て下さい。
 と、感謝の念を新たにしながら、きゃらめるのホームページを
 チェックしたところ、なんと次回クリスマス公演は大好きな作品
 「トリツカレ男」!!あー。見たかった!
 主演は畑中さんのようですが、私としてはヒロインが気になります。
 あの純粋無垢な少女を誰が演じるんだろう。いかにもクリスマス♪
 の雰囲気漂う優しい幸せが詰まった舞台になるんだろうな。

 そして、来年は久々に上川さんがキャラメルの舞台に出演!!
 うわー。嬉しいっ!!・・・でも、まあ確実に福岡には来ませんし
 東京だろうが神戸だろうが、チケットを取ることすら難しく
 なると思われるので、DVD化を今から待ち望むことにします。
 上川さんがきゃらめるを忘れてないこと、その事実だけで
 十分嬉しいのです。

 ・・・と、喜び勇んでいたところでがっかりの事実も判明。
 どうやら来年はキャラメルさんが福岡に来るのは一度ぽっきりみたい。
 寂しい。。。

三人の探偵/劇団塾

2007年09月03日 23時28分01秒 | 舞台(キャラメルボックス)
7月末に見に行ったまま、自分の感想を文章にまとめられずにいたら
なんと、次の公演の連絡がありました。

すっごく精力的な劇団です。すごいなー。
劇団って継続して活動するために
ものすごいエネルギーが必要なのに。
なんだか次の舞台のお誘いにものすごく元気をもらいました。

勿論、次も見に行く予定です。
見に行く予定なんだけど・・・・・
ダイレクトメールを紛失してしまったのです。
一体、いつやるのか、どこでやるのか
何というタイトルの舞台なのか
そんなの何にも覚えておらず、途方に暮れております。
あぁ、せめて日程だけでも思い出せれば・・・。

というわけで、ってまったく何の関連性もないけれど
とりあえず、前回の鑑賞の際に心に残ったことを
いくつか書き留めておきます。
ものすごく考えさせられたというか、納得したというか
「ほお。なるほど。」と思ったのです。
心にすとんとおちた感じ。

それは2時間弱の舞台の中のほんの1場面。
たった5分か10分程度の場面だったんだけれど
私はこの10分程度のやりとりだけで、「来てよかった」と
心から思った。正直なところ、舞台全体のテイストや
話のキレ、テーマは前回のほうが分かりやすかったし
話についていきやすかった。
今回の舞台は推理小説風で、どこか説明調の話運びで
若干、話がもたもたしているような印象も受けた。

前回のほうが面白かったかな、と思ってしまったことは
否定しません。「どちらが好きだった?」と問われたら
間違いなく、前回の舞台を選ぶと思う。

でも、「どの場面がもっとも心に残った?」という問いかけだったら
間違いなく私はふたつの舞台を通して、今回の舞台の一場面を選ぶ。
それぐらい印象的だったのだ。

全体を通してのストーリは、ある探偵事務所に所属している
三人の探偵がそれぞれ事件を追うところから始まる。
ひとりは、マンションの一室で起きたOL殺しの犯人探し。
ひとりは、幽霊につきまとわれている銀行員のガード。
ひとりはある銀行で起きている不正の行方を追う。

三人の探偵は個人行動で、各自が抱えている事件を追うが
追っているうちに、それぞれの事件がリンクし始め
やがて、事件はひとつの結末へと収束し始める。というもの。

私が心に残ったのは、こういったストーリーの核の部分とは
まったく関係ないサイドストーリーのような部分だった。
事件に行き詰ったひとりの探偵はある晩、元上司に意見を聞きに行く。

「一体、なぜあの人は殺されたんだろう。」
とつぶやく探偵に元上司は問いかけるのだ。
以下は、ものすごくあやふやな記憶の元、私の心に残っている科白だ。

「本当は人を殺すのに理由なんてないんだ。
 殺人事件が起こると、みんな言う。「なんで?」と。
 原因を知りたがる。でも、理由があるから殺されるんじゃない。

 理由があるからといって殺されても良いわけじゃない。

 問題があったとき、それを解決する手段はひとつじゃない。
 いくつもいくつもある。問題が複雑であればあるほど、
 解決はややこしくなる。大変になる。
 そういった手間を省いて、一番手っ取り早く問題を
 取り除こうとした結果が殺人につながるんだ。

 いいかい。殺人は、問題解決のために与えられた選択肢のひとつなんだ。
 そして、これは絶対に取ってはいけない選択肢なんだ。」

なるほどね、と心から納得したし、感銘を受けた。
問題解決のための選択肢のひとつ。
最も安易な選択肢。
考えることを放棄した人が選びたくなる選択肢。
どれも納得できた。

「なぜ殺したんだろう?」という問いかけ自体がおかしいという主張は、
本当にその通りで、「殺される理由」を探して、分かったからと言って
確かに「事件解決」ではないんだな、と思った。

それでも、私たちが「原因」を追究したがるのは
せめて原因でもないとやってられないからなんだろう。
「原因も理由もなく、ただ運が悪かった」だけで殺されるよりは
まだ、原因があって、殺されたほうが残された人たちは
あきらめがつくんだと思う。
そういう事件が多くなりつつある昨今、
やるせない気持ちになりながら、思った。