昨年末から落ちている「読書」速度。特に小説からは遠ざかりがちです。
疲れてるのかな?キャパシティオーバー?
1.骸の爪
■ストーリ
ホラー作家の道尾は、取材のために訪れた瑞祥房で口を開けて笑う千手観音と
頭から血を流す仏像を見た。話を聞いた真備は、早速瑞祥房へ向かう。20年の
時を超え彷徨う死者の怨念に真備が挑むシリーズ第2弾。
■感想 ☆☆*
フィールドワークもの、うんちくものが割に好きなのにどうしてもこの世界観に
入りきれません。やはりどうしても道尾さんが苦手な模様。もっとも年末から
読書に対しての拒否反応が強いのでその(私のコンディションの悪さの)せいか
とも思ったり。時間を置いてまた読み返したいと思います。
2.阿川佐和子の会えば道連れ(この人に会いたい5)
■内容
「私、こんな正直に答えていいんでしょうか?」
江國香織、カルロス・ゴーン、浜口京子、斎藤茂太、木佐彩子、岩城宏之、
岸部一徳、平野レミ、野中広務、小倉昌男たち18名がアガワの舌に乗せられて
爆笑・感涙の秘蔵エピソードを次々開陳していく。「週刊文春」連載対談の
ベストセレクション第5弾。
■感想 ☆☆☆☆☆
いつもながらその道の専門家と読者の間を分かりやすい言葉でにとっても楽しそうに
とりもってくださる阿川さん。既に読んだことがあるにも関わらず
また手に取りたくなるのは、ジャンルを選ばない多彩な顔ぶれのゲストの方々に
対して気負うことなく自然体で接する彼女をまた見たくなるからだと思う。
素直な言葉で自分の疑問をぶつける彼女を見ていると、円滑なコミュニケーションに
「相手への好奇心」は必要不可欠なのだと納得させられる。
阿川さんの持つ好奇心と親しみやすさを感じさせる語り口のおかげで
テレビでよく拝見する方の新しい一面を知ることができ、そして今までまったく
知らなかった経済界や政界の大物の功績をきちんと理解することができた。
3.姑獲鳥の夏/京極夏彦
■ストーリ
二十箇月もの間、子供を身籠り続ける妊婦、彼女の夫は行方不明、同時期に
発生した連続嬰児死亡事件、久遠寺家に代々伝わる「憑物筋の呪い」など、
久遠寺家にまつわる事件に巻き込まれた小説家、関口。人の記憶を視ることが
できる超能力探偵・榎木津礼二郎や警視庁の刑事・木場修太郎らも巻き込んだ
この謎を解くべく、関口は「憑物落とし」の京極堂に助けを求める。
■感想 ☆☆☆☆
年末から久々に京極シリーズを読み返し始めました。・・・トイレで。
トイレで読み返すにはあまりに長大。シリーズ中最も短いこの作品ですら
読み終えるまでに1ヶ月半かかりました。久々の京極堂は相も変わらず
知的で冗長で不親切。でもこの寄り道の多さ、蘊蓄の多さがとてもいとおしい。
主人公、関口君はまだまだまっとうです。まっとうな状態の1作目ですら
読みながら「どう考えても彼を演じるのは永瀬さん(映画化の際に関口さんを
演じた俳優さん)ではないよね。」としみじみ思いました。
4.いっちばん/畠中恵
■ストーリ
兄の松之助が長崎屋を出て所帯を持ち、親友の栄吉は菓子作りの修業へ。
病弱な若だんなは周囲の人たちの新たな出発に寂しそう。妖たちは若だんなを
慰めようと、競って贈り物探しに出かけるが。長崎屋と商売がたきの品比べに、
お雛をめぐる恋の鞘当て、果ては若だんなと大天狗の知恵比べ。
さて勝負の行方は?「しゃばけ」シリーズ第7弾。
■感想 ☆☆☆*
シリーズ第7弾は若だんなよりも若だんな周辺の人々に重点が置かれているため、
若だんなの活躍は若干少なめ。それでも、体が弱いなりに自分にできることを
諦めずに探し続ける若だんなが実に爽やか。脇役を主役に据えられるのは、
シリーズものならではの安定感があってこそ。けれど、その安定した面白さが
マンネリにつながらないところが畠中作品が愛されている理由だと思う。
個人的には自分に自信が持てず厚化粧を施していたお雛さんが厚化粧から脱却し
幸せを自分の手で掴めて心の底から安心した。
5.ゆめつげ/畠中恵
■ストーリ
夢の中では見えざるものが見えるはず。小さな神社の神官兄弟、弓月と信行。
しっかり者の弟に叱られてばかりの弓月には「夢告」の能力があった。
しかしそれは全く役に立たないしろもの。ある日、ふたりは迷子捜しの依頼を
礼金ほしさについ引き受けたが・・・。
■感想 ☆☆☆
幕末の江戸が舞台。「倒幕」だの「尊王攘夷」だの色々な主義主張が横行し
彼らの言い分のどれが正しいのか、日本はこれからどちらに向かうべきなのか
まったく先が見えない不安定な時代の日本。「ゆめつげ」という特殊能力が
あっても未来はわからない。何が正しいのかもわからない。結局は自分たちが
信じる道を自分たちが信じるままに進むしかない。そう思わせられるラスト。
主人公ふたりは「しゃばけ」シリーズを彷彿させるのほほん兄弟なのに
不安な時代背景、政情が背景にあるため、「しゃばけ」シリーズとは異なる
読後感が面白い。
6.約束された場所で/村上春樹
■内容
癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行き着いたのか?
オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る。
■感想 ☆☆☆☆
オウム真理教の信者によって引き起こされた地下鉄サリン事件。
私は彼ら末端信者と自分との境界線を見つけられず、読みながら胸が苦しくなった。
出会う順番が違っていたら、私がこの作品に登場していたかもしれない。
そういった想いがどうしてもぬぐい去れない。地下鉄サリン事件は起こっては
いけない事件だった。許されてはならない事件だし、何が起こったのか、
なぜああいった事件が起きてしまったのかを丁寧に追う必要がある事件だとも思う。
けれど、それとは異なるところで、この世の中に生きにくさを感じ、まじめに真理を
追求し、何かを信じたいと願っていただけの信者たちが彼らの追求していたものと
現実に引き起こされた事件の間に起きた乖離を理解できずに苦しむ姿に共感して
しまう自分もいる。その一方で、彼らの言葉、生き方に対する違和感もやっぱり
あって、それなのにこのもやもやを未だにきちんと言葉にできない。
7.ちんぷんかんぷん/畠中恵
■ストーリ
江戸有数の大店の若だんな、一太郎は摩訶不思議な妖怪に守られながら、
今日も元気に寝込む日々。しかし、日本橋を焼き尽くす大火に巻かれ、
とうとう三途の川縁を彷徨う羽目に。「しゃばけ」シリーズ第6弾。
■感想 ☆☆☆☆
シリーズものならではの醍醐味で、登場するキャラクターみんなに愛着があって
みんなの幸せを願わずにはいられない幸せな物語。
若だんなの三途の川縁冒険譚は大好きな鳴り家の登場頻度が高めで大満足。
「はるがいくよ」はシリーズ中少し異色の切なさメインの話です。
「生きるものは必ず死ぬ」という当たり前のことを当たり前に受け入れるのは
死んでいくものではなく残されるものなのだ、と気付かされました。
8.ラッシュライフ/伊坂幸太郎
■ストーリ
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。
女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は
野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場。並走する四つの物語、交錯する
十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の
幕が、今あがる。
■感想 ☆☆☆☆*
久々に読み返して、「こんなにおもしろかったっけ?」と興奮しました。
おそらく1回目に読んだときの私はこの小説の面白さをまったく理解できて
いなかったと思われます。ラストに向けて張り巡らされた伏線に大きな
カタルシスを覚えました。
9.鷺と雪/北村薫
■ストーリ
帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。
良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和11年2月、雪の朝。
運命の響きが耳を撃つ。花村英子とそのおかかえ運転手ベッキーさんの
ミステリー・シリーズ第三弾。
■感想 ☆☆☆☆
一編一編は、いわゆる「日常の謎」。しかし、シリーズを貫く大きなテーマは
昭和初期のあの時代、日本を、日本の小市民を飲み込んだ大きな時代の力は
一体なんだったのか。不穏な時代の動きに気付きながらもいかんともしがたい
無力な市井の人々。それでも「わたくしは、人間の善き知恵を信じます」と
力強く語るヒロインがまぶしい。
疲れてるのかな?キャパシティオーバー?
1.骸の爪
■ストーリ
ホラー作家の道尾は、取材のために訪れた瑞祥房で口を開けて笑う千手観音と
頭から血を流す仏像を見た。話を聞いた真備は、早速瑞祥房へ向かう。20年の
時を超え彷徨う死者の怨念に真備が挑むシリーズ第2弾。
■感想 ☆☆*
フィールドワークもの、うんちくものが割に好きなのにどうしてもこの世界観に
入りきれません。やはりどうしても道尾さんが苦手な模様。もっとも年末から
読書に対しての拒否反応が強いのでその(私のコンディションの悪さの)せいか
とも思ったり。時間を置いてまた読み返したいと思います。
2.阿川佐和子の会えば道連れ(この人に会いたい5)
■内容
「私、こんな正直に答えていいんでしょうか?」
江國香織、カルロス・ゴーン、浜口京子、斎藤茂太、木佐彩子、岩城宏之、
岸部一徳、平野レミ、野中広務、小倉昌男たち18名がアガワの舌に乗せられて
爆笑・感涙の秘蔵エピソードを次々開陳していく。「週刊文春」連載対談の
ベストセレクション第5弾。
■感想 ☆☆☆☆☆
いつもながらその道の専門家と読者の間を分かりやすい言葉でにとっても楽しそうに
とりもってくださる阿川さん。既に読んだことがあるにも関わらず
また手に取りたくなるのは、ジャンルを選ばない多彩な顔ぶれのゲストの方々に
対して気負うことなく自然体で接する彼女をまた見たくなるからだと思う。
素直な言葉で自分の疑問をぶつける彼女を見ていると、円滑なコミュニケーションに
「相手への好奇心」は必要不可欠なのだと納得させられる。
阿川さんの持つ好奇心と親しみやすさを感じさせる語り口のおかげで
テレビでよく拝見する方の新しい一面を知ることができ、そして今までまったく
知らなかった経済界や政界の大物の功績をきちんと理解することができた。
3.姑獲鳥の夏/京極夏彦
■ストーリ
二十箇月もの間、子供を身籠り続ける妊婦、彼女の夫は行方不明、同時期に
発生した連続嬰児死亡事件、久遠寺家に代々伝わる「憑物筋の呪い」など、
久遠寺家にまつわる事件に巻き込まれた小説家、関口。人の記憶を視ることが
できる超能力探偵・榎木津礼二郎や警視庁の刑事・木場修太郎らも巻き込んだ
この謎を解くべく、関口は「憑物落とし」の京極堂に助けを求める。
■感想 ☆☆☆☆
年末から久々に京極シリーズを読み返し始めました。・・・トイレで。
トイレで読み返すにはあまりに長大。シリーズ中最も短いこの作品ですら
読み終えるまでに1ヶ月半かかりました。久々の京極堂は相も変わらず
知的で冗長で不親切。でもこの寄り道の多さ、蘊蓄の多さがとてもいとおしい。
主人公、関口君はまだまだまっとうです。まっとうな状態の1作目ですら
読みながら「どう考えても彼を演じるのは永瀬さん(映画化の際に関口さんを
演じた俳優さん)ではないよね。」としみじみ思いました。
4.いっちばん/畠中恵
■ストーリ
兄の松之助が長崎屋を出て所帯を持ち、親友の栄吉は菓子作りの修業へ。
病弱な若だんなは周囲の人たちの新たな出発に寂しそう。妖たちは若だんなを
慰めようと、競って贈り物探しに出かけるが。長崎屋と商売がたきの品比べに、
お雛をめぐる恋の鞘当て、果ては若だんなと大天狗の知恵比べ。
さて勝負の行方は?「しゃばけ」シリーズ第7弾。
■感想 ☆☆☆*
シリーズ第7弾は若だんなよりも若だんな周辺の人々に重点が置かれているため、
若だんなの活躍は若干少なめ。それでも、体が弱いなりに自分にできることを
諦めずに探し続ける若だんなが実に爽やか。脇役を主役に据えられるのは、
シリーズものならではの安定感があってこそ。けれど、その安定した面白さが
マンネリにつながらないところが畠中作品が愛されている理由だと思う。
個人的には自分に自信が持てず厚化粧を施していたお雛さんが厚化粧から脱却し
幸せを自分の手で掴めて心の底から安心した。
5.ゆめつげ/畠中恵
■ストーリ
夢の中では見えざるものが見えるはず。小さな神社の神官兄弟、弓月と信行。
しっかり者の弟に叱られてばかりの弓月には「夢告」の能力があった。
しかしそれは全く役に立たないしろもの。ある日、ふたりは迷子捜しの依頼を
礼金ほしさについ引き受けたが・・・。
■感想 ☆☆☆
幕末の江戸が舞台。「倒幕」だの「尊王攘夷」だの色々な主義主張が横行し
彼らの言い分のどれが正しいのか、日本はこれからどちらに向かうべきなのか
まったく先が見えない不安定な時代の日本。「ゆめつげ」という特殊能力が
あっても未来はわからない。何が正しいのかもわからない。結局は自分たちが
信じる道を自分たちが信じるままに進むしかない。そう思わせられるラスト。
主人公ふたりは「しゃばけ」シリーズを彷彿させるのほほん兄弟なのに
不安な時代背景、政情が背景にあるため、「しゃばけ」シリーズとは異なる
読後感が面白い。
6.約束された場所で/村上春樹
■内容
癒しを求めた彼らはなぜ無差別殺人に行き着いたのか?
オウム信者へのインタビューと河合隼雄氏との対話によって現代の闇に迫る。
■感想 ☆☆☆☆
オウム真理教の信者によって引き起こされた地下鉄サリン事件。
私は彼ら末端信者と自分との境界線を見つけられず、読みながら胸が苦しくなった。
出会う順番が違っていたら、私がこの作品に登場していたかもしれない。
そういった想いがどうしてもぬぐい去れない。地下鉄サリン事件は起こっては
いけない事件だった。許されてはならない事件だし、何が起こったのか、
なぜああいった事件が起きてしまったのかを丁寧に追う必要がある事件だとも思う。
けれど、それとは異なるところで、この世の中に生きにくさを感じ、まじめに真理を
追求し、何かを信じたいと願っていただけの信者たちが彼らの追求していたものと
現実に引き起こされた事件の間に起きた乖離を理解できずに苦しむ姿に共感して
しまう自分もいる。その一方で、彼らの言葉、生き方に対する違和感もやっぱり
あって、それなのにこのもやもやを未だにきちんと言葉にできない。
7.ちんぷんかんぷん/畠中恵
■ストーリ
江戸有数の大店の若だんな、一太郎は摩訶不思議な妖怪に守られながら、
今日も元気に寝込む日々。しかし、日本橋を焼き尽くす大火に巻かれ、
とうとう三途の川縁を彷徨う羽目に。「しゃばけ」シリーズ第6弾。
■感想 ☆☆☆☆
シリーズものならではの醍醐味で、登場するキャラクターみんなに愛着があって
みんなの幸せを願わずにはいられない幸せな物語。
若だんなの三途の川縁冒険譚は大好きな鳴り家の登場頻度が高めで大満足。
「はるがいくよ」はシリーズ中少し異色の切なさメインの話です。
「生きるものは必ず死ぬ」という当たり前のことを当たり前に受け入れるのは
死んでいくものではなく残されるものなのだ、と気付かされました。
8.ラッシュライフ/伊坂幸太郎
■ストーリ
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。
女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は
野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場。並走する四つの物語、交錯する
十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の
幕が、今あがる。
■感想 ☆☆☆☆*
久々に読み返して、「こんなにおもしろかったっけ?」と興奮しました。
おそらく1回目に読んだときの私はこの小説の面白さをまったく理解できて
いなかったと思われます。ラストに向けて張り巡らされた伏線に大きな
カタルシスを覚えました。
9.鷺と雪/北村薫
■ストーリ
帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。
良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和11年2月、雪の朝。
運命の響きが耳を撃つ。花村英子とそのおかかえ運転手ベッキーさんの
ミステリー・シリーズ第三弾。
■感想 ☆☆☆☆
一編一編は、いわゆる「日常の謎」。しかし、シリーズを貫く大きなテーマは
昭和初期のあの時代、日本を、日本の小市民を飲み込んだ大きな時代の力は
一体なんだったのか。不穏な時代の動きに気付きながらもいかんともしがたい
無力な市井の人々。それでも「わたくしは、人間の善き知恵を信じます」と
力強く語るヒロインがまぶしい。
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