迷える羊のメモ帳

こんな言葉 あんな花に癒されて生きる

メモ帳146ページ目 萩       

2011-09-22 07:48:57 | 日記

わが町自慢の公園で「萩のトンネル」が見頃を迎えている。
花の色も形も、目立たないが、細い枝に薄桃色と白の小さな花を沢山つける
姿は、控えめながらもたくましさを感じる。
子供の頃から親しんできた花だけに、思い出も多く愛してやまない花でもある

野山を駆け回っていた頃見た「萩」は、かくれんぼの格好の隠れ場所にもなる
程、一杯に花をつけた枝が重なりあって姿を隠してくれたが、かすかに感じる
風にも大きく枝を揺らし、隠れる私の鼻先やほほを撫で回すので、こらえるの
に必死だった。

思春期になって見た「萩」は、校庭の隅に置かれた壊れかけたベンチの脇で
話の糸口が見つからず、二人の揺れる心と共に大きく、小さく揺れていた。

青春時代に見た「萩」は、細い登山道の脇でススキとオシロイバナの鮮やかな
ビンク花の勢いに押されながら、控えめに枝をしならせて道行く人々の足元で
震えながら咲いていた。ひいきにしている薄桃色も色あせて花の終わりを告げ
る様に揺れていた。

人生の岐路に立ったときに見た「萩」は、満開の時期で、薄桃色と白の花をつ
けた枝が折り重なって咲き誇っていた。満月も過ぎ二人の気持ちも満ちていた。

あの時、あの人は何気なく白い花が好きだと云った。花屋の前を通り過ぎる時
も白い花がいいねと云ったり花の名前を知りたがったりもした。

あの時、私は特に反論はしなかったが心のどこかが揺れた気がした。小さい頃
から庭にあった萩の桃色の花を思い出していた。
冬囲いの為に父が容赦なくばっさばっさと枝を切るのを見て、来年は枝先まで
花を付けるのにと切り落とされた枝に思いをはせたものだ。

数年後の秋、人生の決断後に見た「萩」は公園の散策路の両脇に、桃花と白花
が交互に整理されて植えられていた。
私の好きな萩は自由奔放に枝を広げ、細い枝に沢山の花をのせて、風が通り過
ぎる度に枝を揺らし、花を愛でる人々へ何かを語りかけてくるような花達なのだ
が少し様子が違って見えた。自分自身の環境が変わった時期でもあった。

来る秋ごとに色々な気持ちで「萩」を見続けてきたが、特別美しい花ではないが
何故かいとおしく思えてならないのです。
何歳になっても、何かを求めて心ときめかせて揺れる私と重ね合わせているの
かも知れない・・










コメント (8)
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