時には荒れ時には平穏な洋上の奇跡的な体験、人生で大切なことを悟る風や波のうねりがやってくる。
ファンタジーにも、実話的な漂流映画の範疇にも収まらない。
原作の本題は、ありえない出来事と現実とのミックスが「うそ?ホント?」的奇妙な現実を作り上げるアメリカ映画の現実的なマジック?で、都合のいいように本人が作り上げたフィクションが混る。
自分が意図とはしていない運命に翻弄された主人公の成長を描く過酷なひと時の神話?寓話?だが、映像がなんとも豊な味わいを見せてくれる。
回想で物語は進む。
幼少期、いじめと言う困難からからどう立ち上がったか。
少年期、貧困から動物たちと共に移住する船旅で大嵐の海原に投げ出された少年は、生き延びる為にどう立ち上がったか。
中年になった現在の主人公が、どう伝えていくか。
始まりは美しすぎる日常、やがて超自然的な美しいビジュアルの大波を顔面に浴びせかけて、まれな体験に観客を巻き込み、さらには嘘のような話は本当に起きたことなのか?と問う様は、思考が混乱する。
ぼくは2D鑑賞でしたが、これは絶対に3Dの方が良いかも。
アトラクション的効果を超え、豊かな寓意によって、希望を失わずに生き抜くためのさまざま知恵を授けてくれる。
最も重要なのが、救命ボートに同乗することになるトラという獰猛な存在だ。
当初は、逃げ回り敵対するのだが、次第に共闘することで、大自然に立ち向かう必要性を実感していくプロセスは感動的。
絶体絶命の下、ただ生きながらえるのではなく、脅威を身近に感じることで緊張がみなぎり、自らの衰弱を防いで生命力を保つ。
トラは捕食者ではなく、守護神だったのかもしれない。
摩訶不思議な漂流譚は、命の尊さを思い知る宗教的な体験にさえ昇華していく。