2009年、ソマリア沖での事件。レーダーが捉えた明滅点はフィリップスのコンテナ船へ迫り、襲い来る。
正体は周辺海域を縄張りとする海賊。
世界を震撼させたソマリア海賊による米船舶襲撃事件を「ボーン・スプレマシー」や「ユナイテッド93」の監督が迫真で紡いだサバイバル・サスペンス。
サバイバル。
これは本作のキーワード。
フィリップスは妻との会話で息子らの世代を「サバイバルの時代」と口にする。
まさか直後、自身が生死を賭けた岐路に立つとは想像もしないまま。
一方、シージャックに打って出るのは、こちらも生きていくために決死の覚悟で海賊となった漁村出身の若者たち。
世界は無数のサバイバルに満ちている。
文化や価値観、世代も全く異なる両極は、運命の海域にて魂を衝突させる。
本作の緊迫感は凄まじい。
神経をすり減らすほどの駆け引きを展開させ、ひとり人質となったフィリップスの救出劇では駆逐艦やネイビーシールズをも投入し破格のスケール。
知略を尽くし勇気を振り絞るフィリップスを英雄として讃えるのではなく、人間として冷静に提示する。
彼の姿は今を生き抜く魂とも同調し、深い余韻をもたらす。
時代の爪痕を語り、これも実話ベースの傑作に。