主人公は証明書を持つ自由黒人。生まれたアメリカ東部では、白人同様の生活を営んでいる。
でも社会の一員ではない。
しかし奴隷社会の一員でもない。
白人社会でも主従関係が成り立っている。
その立ち位置を象徴的に表す場面がある。
奴隷として働かされる農園で、白人大工の面子をつぶしたが為に縛り首のリンチにかけられる。
リンチを止めに入った監督官のおかげで、死を免れる。
が、監督官が農園主を呼び戻すまでの間、首に縄をかけられたまま爪先立ちの姿勢で放置される。
そんな彼の様子を、冷やかに見下ろす白人婦人。
背後に映し出される黒人奴隷たちは、目をそらし働いている。
子供は無邪気に遊んでいる。
白人から見下され、黒人には厄介者として無視される。
どれほどの試練を抜けねばならないかを、不気味に語っている。
白人でもなく、奴隷でもない。
ニュートラルな立場の主人公を見ている我々の目線におき、人権を持たない奴隷の境遇に対する驚きや屈辱感を追体験させる。
頭を低くして生き抜こうとしている人々が、今もこの世界にいることを思い起こさせる。
そんな現代的かつグローバルな視野がある。