
『ナイトクローラー』で怪演したJ・ギレンホールが、見事な肉体改造やボクサーとしての動作はまだ序の口、物語全体を通しての表情の変化が素晴らしい怪演をしてみせた。
主人公のボクシングスタイルは、相手を挑発して殴られ痛め付けられ、怒りを高め、それをエネルギーに変えるスタイル。
だから彼は試合の度にズタボロ。
半ばパンチドランカーになりかけていて、顔も動作もまるで麻薬常習者のようにぼんやりしている。
だが復帰を決意してからの彼は、まるで憑き物が落ちたかのように、みるみる精悍な顔付きへと変わり、目の色も澄んでいく。
やり場のない怒りを抱え、自分以外の何者も眼に見えていなかった彼が、自分の娘のみならず、トレーナーや見ず知らずの少年にまで気遣いを見せる人間に変貌していく様....
妻を失った主人公、母をなくした主人公の娘、そして選手を失ったトレーナー。
内で処理しきれないほどの怒りと悲しみを抱えている3人。
感情と人は、どうやって何に向き合えば良いのか?
3人は3様に何かサンドバッグが必要だった。
娘は父親である主人公へ感情をぶつけた。
トレーナーは主人公を指導することへ感情をぶつけた。
そして主人公はそのエネルギーをも受け止め赤い炎から青い炎へと自身のパワーをコントロールし何に向けるかの術を自覚した。
理不尽な人生から、もたらされる怒りや悲しみと、どう向き合うかを...