ｻﾘｰﾎｰｷﾝｽ２

甘美で倒錯的なヴィジョン。
実写ならウッディーアレン、空想ならティム・バートンなど。
そして実写でありながらもファンタジーのようなギレルモ・デル・トロ。
傑作「パンズ・ラビリンス」の寓話世界から、冷戦下のアメリカに置き換え、不条理な愛を表現する。
主人公イライザはアマゾンの奥地から運ばれた”彼”に惹かれ、恋に落ちる。
しかし、冷酷な軍人は“彼”を虐待し、果ては生体解剖を提案する。
一方で、宇宙開発競争でしのぎをけずるソ連が暗躍し、無謀にも“彼”を救出する計画を思いつく。
口のきけないイライザ、ゲイである隣室の画家、黒人の同僚に象徴される肉体的・精神的な外傷、疎外感を抱えたマイノリティたち、さらに醜貌、畸形的でグロテスクな存在への真情あふれる偏愛はデル・トロ作品ならでわ。
美女と野獣へのオマージュと言ってもよい。
そしてそれが”水”というキー。
ファンタスティックな寓話がつねに童話的な残酷さに満ちているのは、いつの世も善悪が共存するゆえんか？。