Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

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ゴーストライター

2011-10-08 07:45:48 | 映画
映画を見ている者は、次に何が起こるかをびくついている。
しかし映画の中では、抑揚の無い語り口のように、血の通わない人のように物語が進行する。
映画らしい映画を久々に見た感じだ。
不注意で、ジャムを塗った食パンを、床に落としてしまう。
ジャムを塗った面が下にならず、床に落ちてくれと願いながらも、ジャムを塗った面が下になって床に落ちる。
不幸の予定調和、そんな感じです。
作品の序盤、ロンドンの出版社に顔を出した瞬間から、彼は情けない。
見くだされ、恫喝され、挙句の果てには腹を殴られ、運が無い。
そしてヘマが多い。
人間の組成は悪くないのだろう、しかし運の悪さがつきまとう。
どう見ても幸運な人間ではないようだ。
そんな男が、自分で不幸を手繰り寄せて、回顧録執筆に手を貸した元英国首相(ピアース・ブロスナン)のトラブルに巻き込まれる。
観察し、発見し、探偵の真似事をするうち、彼自身が危地に陥る。
でも、ドン臭い彼はその引き金を引いたのが自分だともわかっていない。
じょじょに高まる不穏な気配、反面して落ち着きはらった語り口のような進行。
鉛色の空と海。
冬の小島の寂しく飾られていない風景。
色の無い世界。
右往左往するゴーストライターの不安をかきたてるかのように、元首相の周囲を取り巻く人々は、つぎつぎと不可解な行動に出る。
不思議なタッチだ。
まるで自らが首を突っ込んだかのように、周りの人物はそれに対して自然な振る舞いをする、悪事の演技のように。サスペンス?コメディ?やはりスリラー?。
わからないことは多い。
それは観客の想像に任すしかない。
深い中身は自分で考えてよいのだ。
でも本質からは、観客はとまどわない。
名無しの主人公は終始びくついているかもしれないが、映像が見せる語りが泰然自若としているからだ。
怖くて、つじつまがあわせ難く、おかしく、緻密で、不敵な余裕を感じさせる。
映画らしい映画を久々に見たという満足感を得た。


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