
幾ら辛い日々をすごしていても...今が自分にとってダメなときでも...ユーモラスな瞬間をどこか自分で持ち合わせれば、何か良い方向へ向かうんじゃないだろうか?
良かった人生って、そんな瞬間を思い出させてくれるものだろう。
この映画はどこか乾いたユーモアと冷静な自分自身への批評を示してくれている。
ある昔、明らかに自分の過ちから、修道院での規則で無理やり息子と引き離された母親が、50年後、自分の過去を偽るのも罪だと思い、生き別れになった息子を探し始める。
ストーリーは実話。
シットリと心寂しい映画になるか、当時の修道院の行為を糾弾するような社会派映画として描かれるところだろう。
これはどちらでもない。
純真なまま、年を経た信心深い主人公と、息子探しを手伝い汚名を挽回しようとする、元BBC記者で英国政府のスタッフの対照的なふたりのどこかドライなユーモアがセンチメンタルな雰囲気に陥りそうな映画のカラーを乾燥させてくれる。
一定の距離感や、深刻な中に時おり笑いが入る加減は、シリアルになるであろう展開に微笑みをもたらす。
どこかとぼけた味。
どこか世間ずれしていない。
そんな2人の掛け合いもこの映画の良さかも。
ラストの主人公の選択は気高く、慈愛に満ちている。
シビアな現実に目をそむけない...
自分の過去の過ちが有ったからこそ、こう言った仕打ちが有った...
辛くても、一度は逃げたいと思うが、それをも受け止めてしまう...
彼女のそんな生き様に襟を正す思いをする。
しかし彼女は万能の聖人ではなく、愛おしい隣人のよう。
チョットしたユーモアに換えて辛いことも乗り切ってしまった。