礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

ナチス侵攻直前におけるポーランド内の反ユダヤ主義運動

2013-02-14 05:42:05 | 日記

◎ナチス侵攻直前におけるポーランド内の反ユダヤ主義運動

 昨日の続きである。H・G・セリグマンの論文「ユダヤ人問題の将来」(一九三七)の付表の後半を紹介したい。

付 ヨーロツパに於けるユダヤ人の地位(承前)

国名     人口   *ユダヤ人口  ☆圧迫状態  ★ユダヤ人の経済社会状態
イタリー    41,176,671 *5・2万 ☆特にユダヤ人に対して差別待遇はない。 ★ユダヤ人攻撃は、イタリーがドイツと接近して以来猛烈となつて来ている。これとても公然締結されたものではない。
ユーゴースラヴイア 13,934,038 *7万 ☆ナチ中央部は反ユダヤ煽動を政治的に展開することを約した。 ★反セミチズム鞏固。
ラトヴイア   1,900,045 *9・7万 ☆立法はないが、ユダヤ人は職業戦線から逐はれ、政府の専売局はユダヤ人をして実業界から徐々に駆逐を企てゝゐる。 ★急進反ユダヤ運動は次のリスアニアと同様盛んである。両国には極端に貧困したユダヤ人が多い。
リスアニア   2,340,038 *17万7500 ☆ユダヤ人教授の講座は全部閉鎖された。実業界からも消えた。但し政治的拘束はない。
ノールウエイ 2,814,194 *1400 ☆自由平等を愉む。
ポーランド   31,927,773 *315万 ☆就職戦線から駆逐され、政府の専売は拡充され救貧政策は起されてゐるが、ユダヤ人は除外されてゐる。政府銀行組織によりユダヤ人の信用貸は為さず、連合条約を固守してゐる。ユダヤ人ボイコツトは政府により黙認され、政府のユダヤ人社会保証は徐々に取り消されてゐる。但し、貧農労働者による反ユダヤ運動攻撃は滅すことが出来ない。 ★貧困化したユダヤ人の群、文字通り百万人の彼等が餓死しつゝあり、二百万人は生活の為に絶望的死闘を続けてゐる。彼等のボイコットは正しく「飢餓封鎖」に等しい。必要なパンをさへ売らないのだから。ユダヤ人に対する広義経済戦は散発的暴行である。地方では虐殺さへ行はれてゐる。
ポルトガル   6,825,883 *2600 ☆差別待遇なし。
ルーマニア   18,025,037 *105万 ☆例の連合条約はルーマニア大学内規と類似して行きつつある。上からの高圧的ユダヤ人駆逐は、法の欠如にも不拘〈カカワラズ〉行はれる。「市民権修正」により、幾百とないユダヤ人が土地を失つた。 ★北方ルーマニア特にベツサラビアには極端に貧民がゐる。而して世界的指弾は此の国にゐるユダヤ人をして最早絶望状態に立ち至らしめてゐる。
ソビエート・ロシア 1億6500万 *300万 ☆平等自由。反ユダヤを口にする者は懲罰される。 ★五十万ユダヤ人はウクライナ、クリミアで農業に就く。彼等はアグロ・ジヨイントなる政府の指導下に地方委員会を通じて働く。ユダヤ人の生活根本基礎となるものは、農業、手工業、その他の生産作業である。
スエーデン   6,141,571 *7200 ☆自由平等を愉む。 
スイス     4,066,400 *17600 ☆右に同じ。 ★反ユダヤ運動は主として海外より移植され、存在することはするが、勢力あるものではない。

 この付表を見て一番ショックだったのは、ポーランドの項にある記述である。これを見る限り、ポーランドは、一九三九年にナチスの侵攻を受ける以前から、反ユダヤ主義という思想的侵攻を受けていたと解せざるをえない。
 と同時に、一九三〇年代のヨーロッパにおいて、ナチスのファシズムが猛威を振るったのは、それが反ユダヤ主義運動と結びついたからに違いないという感を改めて強くした。

今日のクイズ 2013・4・14

◎ベッサラビアについて正しいのはどれでしょうか。

1 今日のモルドバ共和国の領土に相当する地域の古名。
2 今日のウクライナ(国名)の南端に位置する地域の古名。
3 今日のルーマニア(国名)の北端に位置する地域の古名。

【昨日のクイズの正解】 3 1936年にベルリンで結婚式を挙げたときには、ヒットラーも出席した。■オズワルド・モズレーは、イギリスの上流階級に生まれ、サンドハースト陸軍士官学校に入学したが、途中で退学した。また、イギリス・ファシスト同盟の代表として総選挙に出馬した際は、議席を獲得できなかった。ウィキペディアに拠る。

今日の名言 2013・4・14

◎ユダヤ人に対する広義経済戦は散発的暴行である

 1937年段階のポーランドでユダヤ人がおかれていた状況についてのコメント。セリグマンの論文「ユダヤ人問題の将来」の付表「ヨーロツパに於けるユダヤ人の地位」のポーランドの項に出てくる。上記コラム参照。

コメント (2)
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