◎「岸に咲く色香も軽い草錦」昭和初年の回文俳句
以下に、昭和初年の回文俳句を紹介します。出典は、興文社の小学生全集の第七四巻(上級用)『面白文庫』(一九二七)です。なお、小学生全集については、三月一九日のコラム「興文社『小学生全集』全88冊のタイトル」などを参照してください。
クサノナハシラスメツラシハナノサク 草の名は知らず珍し花の咲く
ケサミナハウチムレムチウハナミサケ 今朝皆はうち群れ夢中花見酒
キカタケカミスカスカスミカケタカキ 木か竹か見すかす霞影高き
キツツキノトブヤコヤブトノキツツキ 啄木鳥の飛ぶや小薮と軒続き
カミノルストホクフクオトスルノミカ 神の留守遠く吹く音するのみか
キビコイダヤトヒノヒトヤダイコビキ 黍こいだ雇ひの人や大根曳き
キシニサクイロカモカロイクサニシキ 岸に咲く色香も軽い草錦
ナカメシハノキクノクキノハシメカナ 眺めしは野菊の茎の初め哉
キユルコノカタミニミタカノコルユキ 消ゆる子の形見に見たか残る雪
キユルマタニハノキノハニタマルユキ 消ゆるまた庭の木の葉に溜る雪
いずれも、旧かな遣いで、しかも濁点を無視している場合があります。そういうこともあってか、今日では、紹介される機会は少ないように思う。
今日のクイズ 2013・5・3
◎「キジノカタモモタカノジキ」という回文があります。最後の「ジキ」を漢字に直すと、次のうち、どれになるでしょうか。
1 直 2 時期 3 磁器 4 食 5 自棄
【昨日のクイズの正解】 2 二万部 ■戦後の木村素衛『日本文化発展のかたちについて』は七万部。この叢書は、営業的にも成功したもようです。
今日の名言 2013・5・3
◎桜木の訪ひし香りは花の園縄張り侵し人の気楽さ
回文短歌です。小学生全集『面白文庫』(興文社、1927)の49ページに紹介されています。
* 先月の29日に、アクセス数が急増し、歴代トップとなったことは、一昨日お知らせしました。30日は、一転して急減しましたが、それでも歴代6位です。昨日も意外に健闘。以下、歴代10位の日付と、その日のコラムのタイトルを示します。
1位 本年4月29日 かつてない悪条件の戦争をなぜ始めたか(鈴木貫太郎)
2位 本年2月26日 新書判でない岩波新書『日本精神と平和国家』(1946)
3位 本年2月27日 覚醒して苦しむ理性(矢内原忠雄の「平和国家論」を読む)
4位 昨年7月2日 中山太郎と折口信夫(付・中山太郎『日本巫女史』)
5位 本年2月14日 ナチス侵攻直前におけるポーランド内の反ユダヤ主義運動
6位 本年4月30日 このままでは自壊作用を起こして滅亡する(鈴木貫太郎)
7位 本年1月2日 殷王朝の崩壊と大日本帝国の崩壊(白川静の初期論文を読む)
8位 本年1月10日 『新篇路傍の石』(1941)における「文字の使用法」
9位 本年5月2日 「日本叢書」第1冊から第31冊までのタイトル
10位 本年1月25日 品川の侠客・芳賀利輔がおこなった炊き出しの顛末