◎昭和17年発表、文部省「標準漢字表」
戦中の一九四二年(昭和一七)一二月、文部省は、「標準漢字表」を発表した。情報局編輯、内閣印刷局発行の週刊誌『週報』三二四号=一九四二年(昭和一七)一二月二三日号に、その「標準漢字表」が掲載されている。
最初に、次のような説明がある(一二ページ)。
標準漢字表について
國語國字の調査研究とこれが愛護の精神を培ふことは、國民精神の作興上、また國民教育の發達上、缼くことのできないことで、さらに大東亜共榮圏の共通語としての醇正な日本語普及の根基であることは、いふまでもないところであります。
元來、漢字は支那に發達した文字でありますが、わが國に傳來してから歳久しく、漢字によつて記された年代の確實な文献をもつやうになつてからも、すでに一千数百年を経てをります。
このやうに久しい由來を持つ漢字が、わが國の交化と密接不離の關係にあることば當然のことで、漢字が國民精神の作興、國民文化の進展の上に多大な寄與をしたことは、想像以上のものがあります。
從つて、貴重な文化財としての漢字は、十分尊重すべきであつて、これによつて國民は、わが國の歴史と文化とに對して正當な認識がもて、またこれを活用することによつて、將來の國民生活の向上を期待できるのであります。
文部省では、今回、義務教育で習得せしむべき漢字の標準を示すために、標準漢字表を作り、去る十二月四日、閣議決定をみましたが、今回の標準漢字表の作製は、このやうな漢字の尊重と活用との趣旨に基づくもので、多数の漢字の中で(最も必要なものを選び、義務教育で習得せしむべき漢字の標準を確立し、漢字特有の機能を十分に發揚させようとするものであつて、漢字の使用を制限しようとするものではありません。
本表は國語審議會が、本年六月答申した標準漢字表を基礎として、さらに検討審議を加へたもので、漢字の総數二千六百六十九字となつてゐます。なほ本表中には、現在社會で普通に行はれてゐる簡易字體八十字を採用し、これを括弧内に示し、教育上、必要に應じてこれの使用を認めることにしました。また同日の閣議で、
各官廳においては、標準漢字表に照應して今後の用字に考慮を用ひること
の申合せを行ひましたが、この申合せの趣旨は、義務教育上、漢字の標準を定めたことに即應して、各官廳でも各種の公文書当の發表には、力めて平易な文字用語を使用し、これによって政府の施策に對する國民一般の理解を容易にさせようといふところにあります。
文部省
文部省は、「漢字の使用を制限しようとするものではありません」と、強調しているが、これは漢字制限反対論を意識した表面的な言葉であって、その本音は、漢字制限にあったと思われる。そうした文部省の本音は、「簡易字體八十字」の採用という姿勢に見ることができよう。
なお、作家の山本有三が、その作品『戦争と二人の婦人』で、「簡易字體」を使い始めたのは、一九三八年(昭和一三)のことであった。これについては、昨年一一月三日の当コラムを参照されたい。
さて、『週報』では、右の説明のあと、標準漢字二千六百六十九字が列挙されている。その順序は、部首画数順、すなわち、漢和辞典と同様の順序となっている。本日はとりあえず、部首一画、部首一画のものを紹介してみる。
●部首一画
一丁七丈三上下不且丕世丘丙中串丸丹主乃久之乍乎乏乗乙九乞也乳乾亂(乱)了事
●部首二画
二云互五井亙亞亡交亦享京亭人仁仇今介仍仕他付仙代令以仰仲件任企伊伍伏伐休伯伴伸伺似但位低住佐佑何余佛作佞佩佳佻使來侈例侍供依【侮】侯侵侶便係促俄俊俗保俠信修倶俳俵俸【併】倉個倍倒候倚借倡値【倦】倫倭假(仮)偉偏偕停健側偵偶傅傍傑傘備傚催傭傲【伝】債傷傾僅働像僑僕僚【偽】【僧】【価】儀億【倹】儒償優儲允元兄充兆兇先光克【免】兎鬼兢入内全兩(両)八公六共兵其具典【兼】冀冉冊再冒冗冠冥【冬】冶冷凄准凍凝凡凱凶凸凹出函刀刄分切刈刊刑列初【判】別利到制刷【券】刹刺刻則削剌前剖剛剥【剰】副割創劇劑(剤)劔カ功加劣助努勃勅勇勉動勗勘務【勝】【労】募勢勤勲【励】【勧】【勺】勾勿匁包化北匠匡匪匹匿區(区)十千升午卒【半】卑卒卓協南博占印危劫卵【巻】卸【卿】厄厘厚原厥厭去【参】又叉及友反叔取受叡叢
( )内は、その前の文字の「簡易字體」、【 】内は、代替の新字を使用したことを示している。
今日のクイズ 2013・5・9
◎この表では、冒の部首は、次のうち、どれとされているでしょうか。
1 けいがまえ 2 ひらび 3 めへん 4 わかんむり 5 その他
【昨日のクイズの正解】 3 映画監督 ■仲木貞一は、多芸多才の文化人でしたが、映画の監督はしていないようです。
今日の名言 2013・5・9
◎こうすりゃいいじゃないの
長嶋茂雄さんの言葉。プロ入りしたころの長嶋選手は、実践に即したスイングで、豊田泰光さんら先輩打者から注目されたという。つまり、バットを短く持って、スイングスピードと精度を両立させたという。本日の日本経済新聞「チェンジアップ」欄で、豊田泰光さんが紹介しているエピソードである。