◎「ナチス」は、その反対者による蔑称か
昨日の続きである。木下半治著『新体制辞典』(朝日新聞社、一九四一)で、「ナチ」の項を見ると、次のようにある。
ナチ(独 Nazi)
ナチスともいはれる。ヒットラー氏の「国民社会主義ドイツ労働者党」の略称(「国民社会主義ドイツ労働者党」の項を見よ)。
ここでは、「ナチ」と「ナチス」の区別はしていない。なお、同書の「国民社会主義ドイツ労働者党」の項は、先月二三日のブログで紹介した。
続いて、丸山眞男ほか編『政治学辞典』(平凡社、一九五四)で、「ナチス」の項を見ると、次のようにある。
ナチス〔独・英〕Nazis, Nazi ヒトラーひきいる民族(国粋)社会主義ドイツ労働者党Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei(NSDAP)の一般的呼称。前身は第1次大戦後の混乱期に下士官、手工業者、小商人の間に起つた反革命団体であるドイツ労働者党Deutsche Arbeiterpartei(1919年1月5日創立、翌年改称)。【以下略】
ここでも、Nazisと Naziの区別はしていない。この項の執筆者は、村瀬興雄である。
さらに、『旺文社 世界史事典 三訂版』(電子辞書)で、「ナチス」の項を見ると、次のようにあった。
ナチス
国家(国民)社会主義ドイツ労働者党(Nazis Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei、略称NSDAP)に対する反対者がつけた蔑称。ヒトラーを党首とし、反民主主義・反ユダヤ主義・反ヴェルサイユ体制を掲げて、ゲルマン民族による強力な統一国家の建設とその世界支配をめざしたファシズム政党。
ここでは、「ナチス」を蔑称としている点が注目される。
以上みたように、「ナチ」、「ナチス」の説明は、辞書によってマチマチであり、どれを信じてよいのかわからない。
なお、Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterparteiの日本語訳は、『新体制辞典』や『広辞苑』のように、「国民社会主義ドイツ労働者党」とすべきと考える。【この話、さらに続く】