◎幸福実現党本部に家宅捜索(2016・8・2)
今月二日、幸福実現党本部に家宅捜索が入った。同日の「livedoorニュース」に、次のようにあった(執筆は、紀藤正樹弁護士)。
公選法違反容疑で、ついに幸福実現党本部に家宅捜索へ!
現在、公職選挙法違反(買収など)容疑で、逮捕されているのは、タレントのテレンス・リー=本名・加藤善照=容疑者(51)、会社役員、一木昭克容疑者(48)と同、今井一郎容疑者(61)の3人。
警視庁捜査2課は、同法違反容疑で、さらに幸福実現党本部(東京都港区)を家宅捜索し、党本部が主導して複数の選挙区で買収工作をしていた可能性もあるとみて全容解明を進める、という。
同法違反での政党本部の家宅捜索は異例とのことであり、捜索差押えで得られた証拠次第では、政治団体である「幸福実現党」の枠組みを超え、その母体である宗教法人「幸福の科学」の選挙応援の実態にメスが入る可能性が出てきた。
宗教団体の選挙応援の実態も、解明されれば、異例のことと評価できる。
紀藤正樹〈キトウ・マサキ〉弁護士も指摘しているが、この家宅捜索は、たしかに「異例」である。
今月九日、書店の店頭で、大川隆法著『幸福実現党本部 家宅捜索の真相』(幸福の科学出版株式会社)という本を見つけ、購入した。発行日を見て驚いた。「2016年8月5日」である。家宅捜索の、わずか三日後である。
本を開いて、さらに驚いた。いきなり、次のようにあったからである。
安倍政権の国家社会主義的体制は着々と進みつつある。マスコミ各社の国家総動員化を進めつつ、警察の特高化【とっこうか】も押し進めている。
これは、「まえがき」の冒頭二行である。署名は、「あなたがたの主【しゅ】 エル・カンターレ」、つまり、幸福の科学グループの大川隆法〈リュウホウ〉総裁が書いている。
これまで、幸福実現党が掲げるスローガンなどを見てきて、この党、あるいはその母体である幸福の科学グループの思想は、かなり「右寄り」だと思っていたが、この先入観は改めなければならない。というよりは、現政権の思想が、右に寄りすぎたために、幸福実現党、幸福の科学の思想が、中庸に思えてきたということか。
「まえがき」の三行目以降には、アイヒマンの名前が出てくる。このことから、大川総裁のいう「国家社会主義」が、ナチズムを指していることは、ほぼ明白である。
ナチズムは、「国民社会主義」Nationalsozialismus(ドイツ語)の俗称である。日本では、「国家社会主義」、「民族社会主義」などと訳されることもあるが、字義通りに訳せば、「国民社会主義」である。ナチ党(正しくは、「国民社会主義ドイツ労働者党」)のイデオロギー、政策、実践のことを、一般に「ナチズム」と呼んでいる。戦中の日本の国家総動員体制が、ドイツの国民社会主義に範を取ったものであることは、よく知られている。
ちなみに、ナチ(Nazi)とは、国民社会主義者(Nationalsozialist)の略称(実は蔑称)である。
いずれにしても、大川総裁は、安倍政権の政治体制、あるいはイデオロギーに、ナチズム的なものを見出したということであろう。
今回の捜索は、幸福実現党という政党を対象としたものであり、これを、即、「幸福の科学」に対する宗教弾圧と捉えることはできない。しかし、油断すべきではない。ひとつ、忘れてならないことがある。それは、近代日本における宗教弾圧が、必ず、「犯罪」の摘発から開始されているという事実である。
「大本」しかり、「ひとのみち」しかり、「創価教育学会」また、しかりである。敗戦直後、急成長した宗教団体「璽宇」は、「食糧管理法違反」を問われ、弾圧されている(璽光尊事件、一九四七年)。国家権力を甘く見てはならないのである。