◎マッカーサー、幣原首相の提案に驚く
今月一二日の東京新聞の一面トップ記事の見出しは、
――「9条は幣原【しではら】首相が提案」/マッカーサー 書簡に明記/「押しつけ憲法」否定 新資料――
であった。
マッカーサーGHQ最高司令官と幣原喜重郎〈シデハラ・キジュウロウ〉首相との会談がおこなわれたのは、一九四六年(昭和二一)一月二四日のことであった。この会談の席で、戦争放棄を提案したのが、マッカーサーだったか、幣原だったかについて、かねて議論があったらしい。しかし、「新資料」の発見によって、幣原の提案だったことが、ほぼ明らかになったという。
この新資料とは、一九五八年(昭和二八)一二月、渡米中の高柳賢三・憲法調査会会長がマッカーサーにおこなった書状での質問に対し、マッカーサーが書状でおこなった「回答」である。
記事によれば、この新資料を発見したのは、堀尾輝久・東大名誉教授で、三面には、堀尾名誉教授に対するインタビューも載っている。
インターネットで、関連する情報を調べてみると、堀尾名誉教授は、雑誌『世界』の本年五月号に、「憲法9条と幣原喜重郎」という論文を発表されていることがわかった。こちらも読んでみたが、非常に周到な論文であり、学ぶことが多かった。
ところで、東京新聞でこの記事を読む数週間前に、たまたま私は、ビデオで『マッカーサー』(ユニバーサル、一九七七)という映画を観た。映画の最後のほうで、マッカーサー(グレゴリー・ペック)と幣原首相(ユキ・シモダ)が会談する場面があった。たしかに、戦争放棄は、幣原首相のほうから提案していた。
東京新聞記事を読み、再度、ビデオを取り出し、その場面だけチェックしてみた。幣原首相の突然の提案を受けたマッカーサーは、驚いた表情を見せ、思わず副官のほうに目をやっている。しかし、幣原首相の平和への熱情に、深く心を動かされ、最後は、幣原の提案に賛同するという展開になっていた(あくまでも、「映画では」ということだが)。
幣原首相を演じたユキ・シモダ(一九二一~一九八一)については、よく知らないが、アメリカ生まれの日系人俳優だという。映画『ミッドウェイ』(ユニバーサル、一九七六)にも出演しているようなので、いずれ、チェックしてみたい。
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