職場の外国人労働問題の続編のそのまた続編です。数少ないアラブ料理のレストランを見つけて、さっそく味見に行ってきました。
大阪市中央区の玩具問屋街・松屋町(まっちゃまち)にある「ミスター・ハラル」というお店が、そのレストランです。最寄駅は地下鉄長堀・鶴見緑地線の松屋町ですが、堺筋線の長堀橋からも徒歩で行く事が出来ます。松屋町の問屋街から東横堀川を渡ったオフィス・マンション街の一角に、そのお店はありました。マンションには厨房だけが入居し、店舗はマンション前の広場にビニールハウスを広げて、その中に椅子と机を配置する形になっていました。
定休日は月曜日で、11時から14時がランチタイム、17時から22時半までがディナータイムです。ランチメニューには、バスマティ・ライスというお米のカレーやビリヤニ(炊き込みご飯)、ケバブ(焼肉)やチキン・魚などのセットメニューが800~1200円の価格で並んでいました。(写真左上がディナーも併せた全体のメニュー、右上がランチのみのメニュー)
私はその中のカレー・コンボ(800円)を注文しました。すると、ほどなくしてアラブ人と思しき店員が、チキンと野菜の二種類のカレーとサラダが乗ったご飯をお皿に盛りつけて持ってきてくれました(左上写真)。
ご飯は前述のバスマティ・ライスです。ジャポニカ種(日本のお米)と違って長粒種のインディカ米なので、舌触りがサラッとしています。日本食に例えると、お米とソーメンの中間みたいな、非常にあっさりした舌触りです。ベトナム料理のレストランで食べたお米とも違う触感です。それがカレーとマッチして、日本とはまた違うカレーを堪能する事が出来ました。
そして、帰りがけにポケットサイズの店のチラシをもらいました(右上写真)。そこに載っていたアラブ庶民料理の定番メニューについて、とりあえずネットで調べた内容を次にまとめておきます。
まずファラフィル(ファラフェルとも言う)ですが、これはヒヨコ豆やソラ豆のコロッケです。豆にパセリやコリアンダーなどの香草や様々な香辛料を混ぜて揚げたものだそうです。
次にハモス(ホムス、フムス、フンムスとも言う)ですが、これはヒヨコ豆のペーストです。ゆでたヒヨコ豆に、ニンニク、練りゴマ、オリーブオイル、レモン汁などを加えて、すり潰したものだそうです。それをお皿の上に、土手鍋の味噌みたいにドーナツ状に盛り、真ん中にオリーブ油を垂らして、ピタパンなどに付けて食べるのだそうです。日本食に例えれば納豆みたいなものなのでしょうか?
ここでピタパンについて説明しておくと、ピザ生地のような丸い形のパンで、中東ではこれを主食として食べます。イースト菌を加えないのでパン自体はパサパサしています。だから、ハモスなどを付けて食べるようになったのでしょう。
最後にカブサ(カブセとも言う)ですが、鶏肉の炊き込みご飯です。ご飯はもちろん前述のバスマティ・ライスです。
いずれも、ウィキペディアやイーフードなどのサイトに載っていた記述を私なりにまとめました。もし内容に誤りがあれば、教えていただければ助かります。
Dinner with the Saudis
なお、このイーフードのHPには、サウジの食事風景や市場の様子を映した上記の動画も掲載されていました。その動画では、サウジは絶対王政のイスラム教国家で、女性の人権が侵害されているという割には、女性の服装や表情が意外と垢抜けていたのが印象的でした。
そして、イーフードのリンクから、「サウジアラビア滞在記」という、まさに今の私にうってつけのHPにもたどり着く事が出来ました。そのHPを読むと、女性のベールや一夫多妻制についても、「必ずしも女性蔑視ではない。むしろ女性を保護する為のものだ。一夫多妻制も、元は戦争未亡人の救済制度として始まったものであり、夫にはどの妻も平等に扱わなければならないよう義務付けられている」という記述があります。だから、動画に出てくる女性の表情が垢抜けていたのかも知れません。
しかし、その一方で、フィリピンからサウジに出稼ぎにきた家政婦が、主人から暴行されそうになって、やむなく正当防衛で主人を殺してしまっても、サウジでは一方的に女性だけが悪者にされ、死刑判決が下され実際に処刑されてしまい国際問題になったというニュースも、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのHPに載ったりしています。一体どちらの言い分が正しいのか、今の私には判断が付きません。
これは、最近のIS(イスラム国)を巡る報道についても言える事ですが、必ずしも日本や欧米のメディアが流す情報が正しいとは限りません。しかし、だからと言って、近代以前の伝統なるものを、そのまま現代に当てはめようとしても土台無理です。現代のルールは、あくまでも個人の人権を尊重するものでなくてはならないと思います。
職場の外国人労働問題の続報です。
私の勤め先で働いている外国人男女10名のうち、9名がベトナム人で、残りの1名だけがアラブ諸国(サウジアラビア)から来た女性です。このアラブ人女性とコミュニケーションを取るのに苦労しています。別に業務指示を聞かない訳でも、仕事でトラブルになった訳でもないので、私の方で勝手に気疲れしているだけかも知れませんが。
だって、そうでしょう。同じ国の人間がまだ何人もいれば、私もその国の事を勉強して、相手に話しかけたり、その国の人間の輪の中に入って雑談の一つでも出来るのですが、異国の人間がたった一人だけでは、私も何から話したら良いか全然分かりません。
しかも、相手の国がサウジアラビアなので、余計に始末が悪いのです。サウジと言えば、ニュースやビジネスの話にはよく出てくる中東の大国ですが、日本の一般庶民にとっては、「油田、砂漠、イスラム教の聖地メッカ」ぐらいしかイメージが湧かない、謎の国でしかありません。後は映画「アラビアのロレンス」ぐらいか(右上写真)。それならまだ、最貧国ながらも世界遺産が一杯あって、内戦ぼっ発までは観光客もそこそこ多かった隣国のイエメンの方が、まだ興味も引いて知ろうという気にもなります。
サウジについても少し調べましたが、出て来る情報はマイナスイメージの物ばかり。いわく、いまだに議会も選挙もない専制君主制国家で、女性の人権が制限されている。女性には選挙権はおろか自動車の運転免許も与えられない。近年になってようやく、地方議会が置かれ女性にも選挙権が認められるようになったが、議会と言っても名ばかりの国王の諮問機関にしか過ぎず何の権限もない。なのに、米国も日本も他の国も、北朝鮮や中国には人権問題でやかましく言うのに、サウジに対しては石油欲しさに見て見ぬふり・・・そんな情報しか出てこないじゃないですか。(ウィキペディアのサウジアラビアのページ参照)
では、食生活からアプローチしようとしても、大阪にはアラブ料理のレストランなんて全然ありません。ネットで調べても、ヒットするのはトルコ料理のレストランばかり。それに、アラブ諸国と言っても、西端のモロッコと東端のオマーンでは、同じアラブ人でも食べ物も生活習慣も全然違うじゃないですか。最近になって知られるようになったクスクスやタジンも、あれは全部モロッコやチュニジア限定の料理でしょう。アラビア語についても、あんなミミズが這った跡のような文字では、まるで勝手が違い、荷が重すぎて、とても覚えようという気にはなりません。
それを社員に言ったら、「うちの会社の方からは、派遣会社にバイトの国籍指定までは出来ない。そんな事をしたら民族差別になってしまう。日本語ではコミュニケーション取りにくいのであれば、英語でコミュニケーションを取ればどうか」と返されました(呆)。いやいや、民族差別する気なぞ全然ないです。別にどこの国の人でも構わないから、たった一人だけ雇うのではなく、せめて二人以上で雇って欲しい、その方が当人の為になるし、私の方も変に気を使わなくて済むし、会社の方でも仕事がスムーズに回るはずなので。
彼女の場合も、別に日本語が通じない訳ではなくて、一応は通じるのですが、他に雑談を話しかけようとしても、サウジについての私の知識が何もない(前述の様に悪い情報しか知らない)状態では、一体何から話しかけて良いか分からない。だから、このサウジ女性に対しては、他のベトナム人とは違って、ただ業務指示をするだけの味気ない関係しか持てない。彼女は英語はペラペラで、本当は私よりもはるかに優れた能力の持ち主である事も薄々は分かっています。そんな女性が、なぜ、より近い欧米ではなく、わざわざ遠い日本に一人でやって来たのか。知りたい事は彼女に対しても山ほどあるのです。最近ニュースになっている、サウジ・イラン両国対立の行方も気がかりです(下記のニュース解説参照)。
しかし、サウジに関する知識が決定的に欠けており、ネットで探しても碌な情報しか出てこないので、どう話しかけて良いのか見当がつかないのです。まさか、いきなり「お宅の国では、いまだに中世さながらに石打ちの刑が行われているのですか?」なんて失礼な事なぞ聞けないでしょう。それで、「どうしたら良いか?」と社員に相談したのに。「そもそも、一バイトにしか過ぎない私が、なぜこんな事まで心配しなければならないのか。本当は社員のお前こそが、もっと心配しなければならない事だろうが!」という気持ちを、ぐっと抑えながら。
以下、イランとサウジアラビアが国交を断絶(ヤフー・ニュース)より。
●中東が一気に緊張状態
2016年1月、サウジアラビアが国内のデモを主導したイスラム教シーア派指導者ニムル師を処刑したのに、シーア派 を国教とするイランが激しく反発し、市民が国内のサウジ公館などを襲撃したのを受けて国交断絶を宣言 しました。中東が一気にきな臭くなってきました。
イスラム教徒の9割を占めるスンニ派の盟主で預言者ムハンマドが生まれた聖地メッカがあるサウジアラビアは近年、シリア情勢などでイランと対立してきました。ただこの地域の緊張はそれだけでははかれないようです。
シリアに関してはアラウィー派(シーアの分派)を信奉するアサド政権をイランが、国民の多数派であるスンニ派の反体制組織をサウジアラビアがそれぞれ支持していて敵対関係にあります。アサド政権はロシアが、反政府勢力はアメリカが支持しているため、背後に米ロの綱引きも垣間見えます。
●イランはアメリカを敵視
1979年の革命以来、イランはイスラエルを支えるアメリカを敵視してきました。サウジは91年の湾岸戦争で同盟関係を結んで以来、親米です。ところが以後のアメリカの政策が少なくとも結果的にはサウジに好ましからぬ結果を残してきました。
1つは2003年に始まったイラク戦争の結果です。独裁者のフセイン政権を倒したのはいいとしても、後にイラクでは多数派のシーア派政権が誕生してしまってイランとの緩衝地帯の意味合いもあったイラクが一挙にイラン寄りになってしまい、警戒を強めてきました。
そして2015年のイラン核問題の最終合意です。アメリカなど国連安全保障理事会常任理事5か国にドイツを含めた交渉団がイランと話し合い、核兵器に転用可能なウラン濃縮の能力を大きく制限して厳しい監視下に置くのを条件に、これまで課されてきた経済制裁を解除するという合意です。核拡散を防ぐという意味では画期的な内容ながら、サウジからみれば、宿敵と同盟国が妥協したように映るのは当然です。経済制裁はイランを締め上げていたので解除となれば発展が見込めます。また両国とも有数の産油国なのでイラン原油の増産は相対的にサウジの地位を危うくします。
したがって合意前からサウジは強く反発してきました。皮肉にもサウジともイランとも悪いイスラエルまで強烈に不満を表明しています。ここで気になるのは「アメリカは誰の味方なのか」という不信感でしょう。
日本にも経験があります。13年に習近平氏が中国の国家主席に就任した際、オバマ大統領は訪米先で厚遇しました。この時も「オバマ大統領は日米より米中を重視する気ではないのか」と不安の声が挙がったものです。
●サウジにとっても重要なイランの存在
サウジの体制維持という面でもイランの存在は重要です。サウジはサワード王家による世界でも珍しい絶対王政です。イランは西欧の民主主義とはまったく異なるとはいえ共和国で選挙もあります。ここに11年からの「アラブの春」がやってきました。チュニジア、エジプト、イエメン、リビアの独裁政権は倒されました。バーレーンにも波は及び同国少数派のスンニ派政権が多数のシーア派のデモに脅かされました。この時サウジは軍を出して政権を守ります。イエメンでは独裁者退場後に登場した暫定政権をフーシ派(シーアの一派)が追い詰めており、ここでもサウジが暫定政権を救うべく出兵しています。
民主化運動とシーア派が連動して力を持つと絶対王政のサウジ王政へと矛先が向きかねません。サウジにも15%ほどのシーア派がいて処刑されたニムル師もその1人でした。多くは東部に住んでいます。
加えて近年の原油価格暴落がサウジ王政を揺るがしています。国王は建国者の息子達が順に継いでおり、近年は高齢化が目立ちます。一夫多妻のため、同じ王族でも多数の派閥があって次世代がどうなるのか常に注目されてきました。さまざまな矛盾や反発を抑え込んできたのが、オイルマネーでシーア派対策にも使われてきたようです。そこが危うくなってきたので絶対王政を揺るがすような大きな動きが出てきてもおかしくない雰囲気が一部で漂い始めています。
アメリカの中東政策は典型的な二重基準といわれています。民主主義の旗手を自認しているのに中東親米国にはそれを求めません。言い換えるとサウジに民主化運動が起きてもアメリカは止められないとなります。