新しい最低賃金が10月1日からいよいよスタートする。この日より最低賃金は全国平均で時給874円に、大阪でも909円から936円に上がる。厚労省の審議会が正式決定したと先日のニュースで言っていた。
最低賃金 全国平均で時給874円に 26円引き上げ(NHK)
最低賃金、23県「目安」超え 人材確保狙い近隣県を意識(朝日新聞)
※上記画像は当該朝日新聞の記事とツイッターのつぶやきから。左の朝日記事の画像にある「目安」とは、都道府県別の最賃引き上げ目安額(Aランク27円、Bランク26円、Cランク25円、Dランク23円)。
これを「アベノミクスのお陰だ」と言うバカが今も少なくないが、実際はむしろ逆だ。上がったのは名目賃金だけで、物価・税金上昇や福祉削減分を差し引いた実質賃金はむしろ下がっている。アベノミクスなんて、日銀にお札刷らせて無理やりインフレ引き起こそうとしているだけじゃないか。そんな粉飾決算まがいの手法で景気が良くなるはずがない。
日本の最低賃金の低さは実際のデータでも裏付けられている。ウィキペディアによる最賃比較(2018年の名目年給・米ドル換算)でも、オーストラリア28,179、スイス27,432、イギリス24,950、アイルランド22,091、ドイツ20,449(2017年)、フランス19,998、カナダ17,872、韓国15,396(2019年発効)、アメリカ15,121(2009年)、日本15,063…と最下位クラス。「最賃引き上げ、毎年連続更新中」の今も、まだこれが現実。本当に景気が良くなっているなら、子どもや若者、女性、老人の貧困がこれだけ話題になるはずがない。もっと余裕のある暮らしができるはずだし、「バイト募集しても外国人しか来ない」なんて事もあり得ない。これでもまだ「アベノミクス万歳!」と言えるのか?
社員リストラで低賃金の非正規雇用ばかり増やして、結婚もできない人間を大勢増やした挙句に、「団塊の世代」が退職した後、今頃になって「少子化で人手が足りない、日本人が来ないので外国人雇うしかない」と。バカじゃないか。
何の事はない。今までの低賃金搾取や悪政のツケが最賃上昇となって跳ね返って来ているだけじゃないか。
しかも、これはあくまで「最低賃金」に過ぎない。
朝早くから、通勤に不便な臨海の埋立地にある職場で、交通費も全額出ないのに、寒い冷蔵庫で、重い荷物を運ばなければならない上に、今や言葉の通じない外国人バイトまで相手にしなければならなくなった。それで最低賃金並みの時給909〜950円しか払えないとは…。うちの会社は我々労働者をバカにしているとしか思えない。我々にはそれ以上の賃金を受け取る権利がある。
小さな町工場ならいざ知らず、物流業界ではそこそこの規模にまで成長した会社に、時給千円程度の給料が払えない訳がない。払えないのではなく、払いたくないだけなのだ。今度の契約更改面談では、ただ単に「時給上がります」「はい、分かりました」で済ますだけでなく、会社の今までの怠慢を徹底的に追及しようと思う。私は話し下手なので上手く話せない。何か決め手になる言い方がないか?
例えば次の様なトークとか。
所長「××さん、今度から大阪府の最低賃金が時給936円に上がるので、××さんの時給も936円に上がります」(渋々言ってる所長の顔が目に浮かぶw)
私「所長、たったそれだけしか上がらないのに、恩着せがましく言わんといて下さい。
小さな町工場ならいざ知らず、既に業界では多少とも名の知れた企業に成長したウチの会社が、何故いつまでも最賃ギリギリの給料しか払えないんですか?」と切り出し、下記のトークを展開する。
①時給千円でも年収では200万。たったこれだけの給料では家賃や光熱費払ったら食べていけない。
②日本の最低賃金は今や韓国・台湾にも追い抜かれ先進国最下位。
③素人の短期・応援バイトには時給千円相当の賃金払いながら、何故ベテランの長期バイトには最賃ギリギリしか払わないのか?
④計算も出来ないバイトや漢字も書けない社員をずっと放置しながら、我々にばかり「赤字経営だから仕方ない」だの「もっと生産性上げろ」だの言うのは本末転倒。
⑤社内報では「我が社は家族経営だ」と言って女性パートに花までプレゼントしながら、肝心の給与は最賃ギリギリしか払わないのは偽善だ。
⑥世間の人は生活保護受給者に対して「自己責任」「自業自得」と罵声を浴びせる。そんな冷酷な論理が通用するなら、我々もダメ経営者に対して同じ事を言う権利がある。
即興でも、これだけ切り返しトークが思い浮かんだ。これを適宜組み合わせて、「納得行く回答があるまで雇用契約書に署名・捺印しない」と迫るのはどうだろうか?
しかし、文章ではこの様にスラスラと書けるのだが、いざ口で言うとなると、なかなかパッパッと切り返しが出来ないのが何とも…。他にどんな決め手トークがあるか?皆んなも是非考えて欲しい。(次の記事に続く)
>アベノミクスなんて、日銀にお札刷らせて無理やりインフレ引き起こそうとしているだけじゃないか。そんな粉飾決算まがいの手法で景気が良くなるはずがない。
経済学者の松尾匡氏(※この人はマルクス主義経済学者で大月書店辺りから著書を出しているような人です)は欧米では金融緩和政策は左翼が主張している政策であり、アベノミクスを全否定する日本の左派の主流はおかしいと主張していますね。
ただ、松尾氏はアベノミクスは金融緩和政策で得られた富を庶民に還元せず、逆に労働規制を緩和したり、福祉を切り捨て、庶民を豊かにさせないのが間違いだと指摘しています。
従って、左翼やリベラルは金融緩和政策自体を否定するのでは無く、金融緩和によって得られる果実を労働者にもっと還元しろ、社会保障に回すべきだと松尾氏は指摘しています。私も松尾匡氏の主張に概ね賛成です。
たしかに「異次元金融緩和」というものは、長らく日銀の建前上の「独立性」が保たれていたために、「失われた10年」が「失われた20年」になるまで、中途半端な状態に抑え込まれてきた金融政策を――「民主的」であるかどうかはさておき――少なくとも「政治主導」で劇的に解放するものではあったんですよ。これについては一定の評価はしなければならないと思います。
もっとも、黒田(東彦)日銀は、実は肝心なところでお金を出し惜しんできたきらいがあるので、野党が言っているのとは逆に、「足りないぞ」という批判をしなければならない。消費増税のあともグズグスして、追加緩和が実現するまで半年もかかったし、2016年頭に中国株が暴落して世界市場が荒れて円高が進んだあとなど、すぐに追加緩和して円高を抑える必要があったのにしませんでした。(略)
【松尾】そもそも、この「第一の矢」については、「目標インフレ率2パーセントを達成するまで緩和を続ける」ということでずっとおこなってはきたのですが、別にそれは安倍政権が「経済にデモクラシーを!」と思ったからではないんですよね。安倍さんの一番の関心は、やっぱり安保法制や憲法改正のほうにあって、景気対策のほうは、あくまでそのための手段みたいなものなのでしょう。
安倍政権としては、選挙前にできるだけ好景気な状態をつくり出して、憲法改正のための基盤を固めたいと考えて、政権を運営してきたわけですよね。だからこそ、下手にインフレにして支持率が落ちかねない危険を冒すよりは、まだほとんどインフレになっていなくて雇用拡大効果だけが出ている状態をキープしておいたほうが安倍さん的にはかえって都合がいいということなのだと思います。結局、あくまで選挙のための手段としての経済政策なんです。(略)
【松尾】僕の見る限り安倍政権は、メディアで報じられるほどには積極財政ではなくて、実質的に緊縮傾向に引きずられがちのかじ取りをしてきたように思われます。実際、財政赤字の拡大を恐れて、介護保険や生活保護の見直しなどを進めて社会保障費を縮小させてきましたから、その点では明確に緊縮的です。財政出動と言っても、コービンのように福祉や介護、住宅政策などの人びとのための事業に投資しよう、という発想がまったくないのです。そのせいで、その財政政策の振り向け先も、旧来型の自民党的な公共事業やオリンピックなどに向けられるばかりです。
でも、不況の際に社会保障費の削減なんかしたら、人びとはますます生活不安でお金を使わなくなるじゃないですか。そうしたら、人びとの消費(需要)がますます縮んでいって、総需要不足の状態が解消されないので、むしろ景気回復の足を引っ張ることになるわけです。だから、僕はよく「『アベノミクス』はアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものだ」と言って批判しているんですけどね。(以下略)
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