アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

鴨ネギ

2007年09月10日 09時22分17秒 | 福田第2次投げ出し政権
 安倍首相が、APEC首脳会議出席の為に訪問中の豪州で、「テロ特措法の延長が認められなければ内閣総辞職も辞さず」なんて事を言い出しましたが、正直言って、「今頃になって、何をトチ狂った事を」と思いますね。
 当の安倍首相本人にしてみれば、今までの度重なる閣僚の不祥事やら辞任劇にも関わらず政権にしがみついている様をマスコミに叩かれ続けてきたので、ひょっとしたら、ここで退路を断っての「ボクちゃんにも勇気があるんだぞう」発言で名誉挽回のつもりなのかも知れませんが、今更そんなパフォーマンスをしても、もう遅いって。只の猿芝居にしか見えません。そんな事ならもっと早くに退陣していた方が、自民党政治への傷が今ほど酷くはならなかったのにと、他人事ながら心配してあげたい気分にもなります。

 しかも許し難い事に、その「内閣総辞職も辞さず」記者会見の場で、「日本人24人も犠牲になった9.11テロを忘れるな」などとの給ったそうですが、何をか況やですね。その9.11テロを口実としたアフガン・イラク戦争で、一体どれたけの民が犠牲になったと思っているのでしょうか。
 イラク戦争に引き続いて、アフガンでも米国流の「対テロ戦争」の化けの皮が次第に剥がれて来ています。テロの温床となる貧困・差別・少数派迫害・政治的抑圧の解消には一切手をつけないまま、徒に「目には目を歯には歯を」に走り、自分たちもテロリストと同じ様な事を繰り返し、テロリストと同じ穴のムジナと看做されて、逆にテロをどんどん誘発しているのが現状ではないですか。下記のペシャワール会のアフガン現地報告を読むと、それがよく分ります。

 しかし安倍首相は、そういう物事の本質とはかけ離れた所で、テロ特措法延長問題を、あくまで自身の政権延命策としてしか捉えていないようです。当人は「一生に一度の大博打」のつもりなのでしょうが、傍から見たら「追い詰められた末の自爆・リストカット」「わざわざ自分から鴨がネギをしょって来るような事をして」ぐらいにしか思えません。
 恐らく首相当人は「自民党内の政権たらい回しでやり過ごせる」ぐらいの認識でいるのでしょうが、ここまで自民党政治が国民に愛想を尽かされてくると、とてもそんな「ガス抜き」では収まらなくなります。今以上に醜い内紛劇や政治家の不祥事がこれを機に更にどんどん噴出し、「小泉・安倍レジーム」そのものが危機に陥っていくでしょう。80年代以来の「自民党政治擦り寄り」政界再編劇とは質的に異なる、「小泉・安倍レジームからの脱却」の可能性をも孕んだ「真の政界再編」が、いよいよ本格的にその姿を現してくるでしょう。

 そんな折りしも折り、共産党が5中総(第5回中央委員会総会)で、今までの全小選挙区候補擁立の方針を見直す事を表明しました。それによると共産党は、今後は小選挙区候補の擁立については得票率8%以上の実績のある選挙区などに絞り、比例区に力を集中する事になりました。この選挙戦術の転換は「民主党を意識したのではない」との事ですが、それでも民主党には大きな呼び水になる事は否めません。
 これは単に民主党一党の思惑を超えて、社民党や国民新党をも巻き込んでの「平和共同候補」擁立の動きを促すものとなるでしょう。参院選では東京・大阪・京都などを中心に、民主党とともに「平和共同候補」が議席を獲得する所が出てくるでしょうし、それ以外でも沖縄選挙区の様な形での野党統一候補の擁立や、民主党とのバーター取引で議席獲得の可能性が出てきます。
 来るべき衆院選にしても、今までは小選挙区制優位の下で与党が「虚構の多数」議席の上に胡坐をかいて「やりたい放題」してきましたが、ここまで与党の力が落ちてくると、さながらオセロゲームの如く、小選挙区の「勝者総取り」方式が逆に勢いのある野党の方に有利に作用する場合も出てきます。

 ここまで来れば、如何に民主党が本質的には第二自民党であり、また小沢の思惑がどうあろうとも、そう簡単に80~90年代の様な「自民亜流、似非・非自民」路線への回帰は出来なくなります。今まで散々「小泉・安倍政治」に騙され苦しめられてきた庶民が、それをそう簡単には許しませんから。米国や中曽根辺りは、そこまで睨んだ上で「自民・民主の大連立」を主張しているのであって、そうさせない為に我々は民主党に左から圧力をかけ続ける訳ですが、果たして安倍はそこまで考えているのだろうか?考えていたら、こんな「鴨ネギ」発言など、みだりにはしない筈なのですが。
 若し民主党が裏切ったら。残念ながらその可能性も、「真の政界再編」の可能性と同じく五分五分です。そうなったらそうなったで、かつての村山社会党や今の自公与党と同じ道を、民主党にも歩ませるだけです。相手も、そうさせない為に共謀罪やら何やら出してくるでしょうが、それに怯んでいるだけでなく、それを上回る英知と戦略を、こちらも持たなければ。

(関連記事)
・安倍首相:「職を賭す」…自衛隊の給油活動継続問題で(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070910k0000m010015000c.html
・給油活動継続できねば退陣 首相「職を賭す」と決意強調(産経新聞)
 http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070909/shs070909004.htm
・特措法否決で「安倍政権崩壊も」 米紙Wポスト(産経イザ)
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/83393/
・2006年度概況 悪化する難民情勢の中、活動の原点を固守(ペシャワール会・会報92号より)
 http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/2006gaikyo.html
・戦争以上の忍耐と努力 天・地・人の壮大な構図の中で実感(同上・会報89号より)
 http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/kaiho/89nakamura.html
・全小選挙区での候補擁立見直し 共産党、次期衆院選で(中日新聞)
 http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2007090802047432.html


※追記:
 参考資料として、911テロ6周年に際してのピースフル・トゥモロー声明を別途掲載しておきます。ピースフル・トゥモローというのは、2001年9月11日に起こったNY同時多発テロの犠牲者遺族が中心になって作った米国の市民団体です。テロにも戦争にも反対し、アフガン・イラク反戦や帰還兵支援の活動を行っています。思えば、私がこのブログを立ち上げたのも、911テロとそれに続くアフガン・イラク戦争や、その後の北朝鮮・拉致問題がキッカケでした。現在のテロ特措法延長論議に際しても、この声明文の精神に立ち返って、そこから改めて今の世界を見つめ直す事の大切さを痛感します。
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« TBリンク集1 | トップ | どこまで庶民をバカにするつ... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日米関係 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2007-09-10 18:14:18
>米国や中曽根辺りは、そこまで睨んだ上で「自民・民主の大連立」を主張しているのであって、・・・・

私が掴んだ間接情報によると、アメリカ民主党の一部には、日本のテロ特措法廃案を歓迎する勢力やそのことを日米関係の障害とは全く考えていない勢力があるようです。

つまり、安倍流の「国際貢献」は、対米貢献でさえないブッシュ貢献だということ。

日本人は、眉にタップリとツバをつけて提灯持ち達のプロパガンダを聞けということかなwww
返信する
忘れ去られているもう一つの「9.11」 (南雲和夫)
2007-09-11 22:59:44
「9.11」とは、チリの国民にとっても、忘れられない日だということを、あなたはご存知だろうか?

「私の国には 山がある
 おいで一緒に 私たちと
 私の国には 川がある
 おいで一緒に 私たちと

 山に登るのは さびしいから
 おいで一緒に 私たちと
 川を下るのは 悲しいから
 おいで一緒に 私たちと

 私の国には 山がある
 おいで一緒に 私たちと
 私の国には 川がある
 おいで一緒に 私たちと
 ・・・・・・・
 おいで一緒に 私たちと」
(パブロ・ネルーダ「おいで一緒に(原題:山と川)」)

 この歌を読んだ詩人は、34年前の今日、すなわち9月11日に起こったチリの軍事クーデターが原因の病気の悪化で死んだ。ノーベル文学賞受賞者だった。

 首謀者はアウグスト・ピノチェトという軍人だったが、それを支援したのはアメリカのニクソン政権、ITT、アナコンダなどの多国籍企業、それに群がる政治家、官僚、軍人など。

 当時、史上初の議会制民主主義の手続きによって大統領に当選した社会主義者サルバドール・アジェンデは、クーデターの最中大統領府で戦死した、とも言われている。

 世界は、なぜもう一つの「9.11」を忘れているのか?

 チリで、数千人の労働者、学生、農民を拷問・虐殺したのは誰だったか?
 それを背後で支えていたのは誰だったか?
 チリの民衆は忘れてはいない。

 サルバドール・アジェンデを殺し、
 ビクトル・ハラを殺し、
 パブロ・ネルーダを死に追いやった真犯人は誰であったか、
 アメリカ合衆国よ、よもや、忘れたとは言わせまい。

 パブロ・ネルーダは生きている。
 チリ人民の心の中に。

「祖国の労働者よ 祖国の婦人もまた
 学生よ 農民よ われらとともに進もう
 血塗られた祖国を 慈しみ守り
 銃剣の前に われらは胸を張る
 ベンセレーモス ベンセレーモス
 鎖を断ち切ろう
 ベンセレーモス ベンセレーモス
 苦しみを乗り越えよう

 ベンセレーモス ベンセレーモス
 鎖を断ち切ろう
 ベンセレーモス ベンセレーモス
 苦しみを乗り越えよう」
(「ベンセレーモス」クラウディオ・イトラ作、麦笛の会訳)
返信する
パブロ・ネルーダ(訂正) (南雲和夫)
2007-09-13 17:33:06
昨日、パブロ・ネルーダの死んだ日を勘違いしていたが、厳密にはクーデターの9月11日ではなく、24日である。

 そのとき、書かれた詩を引用しておこう。

「腹黒い奴ら

 ニクソンと フレイと ピノチェトども
 ボルダベリと ガラスタソと バンセルども
 今日 この1973年9月のなんという惨たらしさ
 おお 貪欲なハイエナども
 多くの血と火でかちとった旗をかじりとるネズミど も
 大農場でたらふく満腹している奴ら
 極悪な略奪者ども
 千回も身を売った腹黒い奴ら
 ニューヨークの狼どもにけしかけられた裏切り者ど も
 わが人民の汗と涙を絞りとり
 わが人民の血で汚れた機械ども
 アメリカのパンと空気を売り込む売春やども
 淫売宿のボスども ペテン師ども
 人民を拷問にかけむちうち飢えさせる法律しか持た ぬ死刑執行人ども!」
(1973年9月15日:絶筆)

(出典:大島博光『愛と革命の詩人ネルーダ』国民文庫)

 ネルーダは、重病人であるにもかかわらず、一切の医療を受けることもできず、そして死んでいった。ピノチェトの軍事クーデター、そしてその背後にいるファシスト、そしてアメリカ合衆国を糾弾しながら。

 いまどきの日本の文学者や詩人たちに、彼のような詩が書けるだろうか?
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

福田第2次投げ出し政権」カテゴリの最新記事