私の勤め先は、大手スーパーの物流センター業務を請け負っている請負企業です。れっきとした民間企業ですが、実際は、お役所以上にお役所仕事しか出来ない会社です。何しろ、検品で使う個数表の運用すら、自社だけでは何一つ改善出来ないのですから。
先日も応援に出かけた惣菜部門の検品作業で、検品が終わった分から、個数表の出荷数の横にレ点でチェックを入れたら、早速クレームが付けられました。数字の横にレ点でチェックを入れるのではなく、出荷数を丸で囲むように注意されたのです(左上写真)。別にレ点であろうと、数字を丸囲みしようと、正確に検品できれば、どちらでも良いはずなのに。
むしろ、「作業のやり易さ」という点では、レ点で出荷数の横にチェックを入れる方が、いちいち数字を丸で囲むよりも、はるかにやり易いです。私が普段やっているように(右上写真)。丸囲みだと、個数表にびっしり並んだ数字を、ボールペンで丸囲みしていくうちに、どうしても数字に丸がかぶさり、数字が見にくくなってしまいます。しかし、横にレ点を入れるやり方だと、普通に書いている限り、数字にかぶる事はありません。それを惣菜の担当者に説明しましたが、先方は頑と言って聞きません。「そうするように上から言われている」の一点張りです。
しかも、それだけでなく、1店舗の出荷が2台以上にまたがる場合に、個数表の余白に記入する控えの数も、「10ケース満載の分しか書くな」と言って来ました。
例えば、A店の出荷数が17ケースだったとします。10ケース積み上がるたびに、商品は待機場に搬送されるので、仕分け場には残りの7ケースしか残りません。だから、私はそんな場合は、個数表の余白に「10、7」と控えておいて、後で個数表の出荷数「17」と照合するのです。その際は、控えの数も、出荷数のすぐ横に書くのではなく、その隣の店番・店名欄の間の余白に書くようにしています。そちらの方が余白スペースが広く、より多くの数字を控えておく事が出来るからです。
ところが、その惣菜担当者は、わずかな余白しかない出荷数のすぐ横に、満載10ケースの数のみ控えるように言って来ました。「それでは、残りの7ケースはどこに控えれば良いのか?」と私が聞くと、「そんな物控えなくて良い」と返されました。「検品する際に7ケースある事は当然確認しているから」だそうです。
これでは「だろう」運転と同じです。自動車を運転する際は、「誰も横から飛び出して来ないだろう」ではなく、「ひょっとしたら誰かが横から飛び出して来るかも知れない」と、細心の注意を払って運転するよう、教習所で習ったはずです。検品もそれと同じではないですか。
人間のする事だから、実際は1ケース不足で16ケースしか無かったとしても、つい惰性でうっかり17ケースあるものと見なしてしまう場合もあるでしょう。しかし、端数の6ケースを控えておれば、後で合算して個数表の出荷数と照合する際に、10+6=16ケースで、1ケース不足している事に気付きます。ところが、端数まできちんと控えていないと、もし不足入荷に気付かなかった場合、店から「1ケース足らない」と電話がかかってきても、正確な記録が残っていないので、どこで間違えたかも分からなくなってしまいます。
もし、検品時点で不足が見つかったとしても、次は、どこで余分に積んでしまったのか探さなくてはなりません。しかし、商品は、積み上がった分から、どんどん待機場に搬送されていきます。他の商品も次々に入荷して、どんどん仕分けしていかなければならないからです。検品も終わり、積み上がった商品を、いつまでも仕分け場に置いておく訳にはいきません。
そこで、ようやく積み間違えた商品を元に戻せたとします。端数も全て個数表の余白に控えていたら、戻した1ケースを合算して個数表の出荷数と照合すれば、それで一件落着です。しかし、満載の10ケースしか控えていないと、端数のケース数が一体いくらになるか分からず、合算して出荷数と照合もできません。端数の台車も、積み上がれば搬送されてしまい、仕分け場には別の商品しか残っていないからです。そうなると、また一から調べ直すか、うろ覚えで合算するしかありません。
こんな「だろう」作業で検品していたら、検品を間違わない方がむしろ不思議です。はっきり言って、たかが17ケースだけの出荷で、積み間違いもなかったから、こんな「だろう」検品でも仕事を何とか回していけるのです。これが数十や数百ケースもの出荷数になり、複数箇所で積み間違いが発生するような事になれば、もう対処できなくなるのは目に見えています。
そこで、この事を社員に相談したら、社員も惣菜担当者と同じ事を言って来ました。らちが明かず、所長に相談しても、答えは同じでした。しかし、所長に相談する事で、問題の背景がうっすらと浮かび上がって来ました。
私の会社は、某大手スーパーから物流センター業務を委託されている二次下請けの請負企業ですが、検品のやり方一つ、自社では改善できないのです。個数表の個数チェックで、横にレ点を入れるか、数字を丸で囲むか、控えの数を右の余白に控えるか、左の余白に控えるか。そんな事すら、いちいちスーパーや一次下請けにお伺い立てないと改善できないのです。
しかも、今回の場合、改善は望み薄なのだそうです。何故かと言うと、過去に決算棚卸しで、個数表検品のやり方が統一されていないと、監査法人からクレームが入った際に、現場の事をろくに知らないスーパーの担当者が、「チェックは数字を丸で囲む」「控えの数は出荷数のすぐ隣に満載の数のみ記入する」と、適当に決めてしまったからだそうです。「二次下請けに過ぎない我が社が、それを今更ひっくり返す事なぞ出来ない」のだそうです。
私は呆れて物も言えませんでした。誰が考えても、私のやり方の方が理にかなっているのに。そこで、「会社の恥部」を、企業名や店舗名の実名は伏せた上で、敢えてブログで公開し、一般読者の判断を仰ぐ事にしました。狭い社内の意見だけでは、「異常を異常とも気付かない」からです。一般読者の方は、果たして、これを読んでどう思われるでしょうか?
勿論、ブログだけで憂さを晴らして、それで終わりにするつもりはありません。今回の件は、会社にも正式に意見書として提出しています。下記写真が、その一部抜粋です。今日はシフト休みなので、明日出勤したら、また会社から何らかの返事があるでしょう。
先の大阪ダブル選挙でも、維新陣営は盛んに「大阪の成長を止めるな!」と宣伝していました。「都構想や民間活力の導入で、大阪経済を活性化するしかない!」と息巻いていました。昨今は、国鉄や郵便局、公立保育所や地下鉄だけでなく、水道事業も民営化して、旅館業も民泊でまかなおうと、公的部門の民間委託が進められています。確かに、公務員のお役所仕事は是正されるべきです。しかし、民間企業もピンキリです。
むしろ、日本の企業の多くは、普段は「官」の威光にすがり利権にたかりながら、社員リストラや労働条件の切り下げに、「民」の立場を都合よく利用してきたきらいすらあります。「労働基準法の規制を緩和する」という具合に。安倍政権の進める「働き方改革」や「外国人労働者の受け入れ拡大」なぞ、その最たるものではないですか。その行き着く先が、JR福知山線事故やNEXCO中日本の笹子トンネル崩落事故、格安深夜バスの過労運転事故でした。その挙句に、今や、日本語もまともに喋れない外国人労働者を、福島第一原発の廃炉作業に投入しようとしています。
私の会社の体質も、「現場の事を何も知らない管理職がのさばり」「細かな改善一つ自分達では何も出来ない」「奴隷のように、ただ上に従うしかない」という意味では、「お役所以上にお役所仕事な民間企業」と言えるのではないでしょうか。