脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小ボケからのカムバック 2ー愛情がカギ

2014年07月11日 | 認知症からの回復

またまた、友人からいい話をききました。
彼女は一人で娘さんを育て上げました。といっても、一人になった時、実家のご両親との同居を決め、フルタイムで働いたのです。娘さんは、おばあさんの大きな愛情とこまやかな配慮の中ですくすくと育ちました。(今日の写真は近所に開店したイタリアンレストランで)

友人
「ようやく娘の結婚が決まったの!」


「それはよかった。おめでとう!」

友人
「それがね、母が小ボケになっちゃってほんとにびっくりしたわ」

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「今回のように結婚とか進学とかで、かわいがって育てた孫が、家を出ることになった時に、それをきっかけにして脳の老化が早まることはよくあるのよ。

喜ばしいということはよくよくわかっているんだけど、どうしてもさびしくてたまらないという風によく聞くわ。

結婚のお話が本決まりになったのはいつだったの?」

友人
「彼を連れてきたのは去年の秋の終わりごろだったのだけど、続けてご両親が挨拶に来て下さったりして、何かとイベントがあるでしょ?
そのせいか、最初はうれしさの方が先だっているような気がしたんだけど、年明けにはあなたの言うとおりなの。
『あの子が結婚することはうれしいことなんだけど、いなくなると思うとさびしくて仕方がない』とか言い出して、それと同時になんだか元気がなくなってきたのね。何というか今までの母とは全く違うのよ」


「一言でいえばボーとしてるんでしょ?具体的にはどんなことが変と思ったの?」

友人 

「私がずーと働いていたでしょ。だから今でも夕食作りは母の担当のまま。 

今までなら、私たちが帰ってくるまでに下準備は全部終わっていて、ちょっと火を入れたらすぐできあがるとか、冷蔵庫で冷やしてあって冷たい状態で出してくれるとか、少しも待たされることなどなく、わが親ながら立派なものだったのに・・・。

それが、朝ちゃんと帰宅時間を伝えていても、夕食の準備ができてない。

できているときもあるけれど、やはり手順が悪いのね。だから私と娘は夕食をウンと待つことになったの。

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「献立が単調になったでしょう」

(これは前頭葉機能のうち発想力が低下したことの反映です。小ボケの特徴です。)

友人
「それがちょっと違うの。

もともと、月曜日から金曜日までの5日間、私がカレンダーに主菜だけ書いてあげるようにしていたの。

鶏肉。豚肉。ひき肉。魚。豆腐など毎日主菜の材料を変えて、その献立を書いておくと、冷蔵庫の中を見て、とっても適切な副菜を作ってくれていたし、たりなければ買い物にも行ってくれてね。

土日は二人で台所に立って、挑戦料理の日と名付けて新しい料理を作るようにしていたの。そうするとテレビや新聞から『作ってみたい料理情報』を母が見つけていた・・・
むしろそれを楽しみにしていたと思うわ」


「やっぱり、前頭葉機能の低下は明らかねえ。意欲なくボーとしてる。手順が悪い(見通しが立たない)。でしょ?

生活がイキイキできなくなるきっかけが、半年前ならうまくやればすぐに改善できるけど」

友人
「そうなの!今は元気な母に戻っているわよ。あなたからボケの話を聞いていてよかった。
これが小ボケだって思ったから頑張ったのよ」


「それはよかった。どんなことをやってあげたの」

P1000011_2友人
「まず娘に『よく話しかけるように』って言ったの。『日常的なことの他に結婚準備の細かいことも全部話してあげてね』って。

私は、母が温泉好きだから『今度はどこに行きましょう?』って話を持っていったら、前ならすぐに行きたい温泉が言えたのに、だってテレビや新聞から情報を掬い上げる天才だったから。

『うーん、結婚式もあるしいいわ』みたいな返事が返ってきて、それで小ボケって確信したくらいよ。
それにもめげず、近いところに連れて行ったり、結婚式の後に行く温泉地候補の話をしたり。
もちろん日曜日には買い物にも連れ出して。
そうそう夕食作りは一緒に台所に立つように心掛けたのよね」


「なかなか立派!でもお母さんがほんとによくお嬢さんのお世話をしてくださったから、あなたもお嬢さんも『お母さんのために』ってがんばれるのよねえ」

友人
「一番よかったことは、隣の駅前に新居が決まったことかもしれない。
母の行きつけの美容院の近所で、連れて行ってあげたらとっても安心したのがよくわかったの。
『ここなら一人でも行ける』と思ったみたいよ。バスに乗って15分くらいかなあ。
そうそう、実際一人で行ってみたりもしたみたい。(お、意欲が出てきていますね!)
結婚式に何を着て行くかみたいな話にもちゃんと乗ってくるようになったし、もちろん夕食も待たされることがなくなりました(笑)小ボケって治るのねえ。
それにしてもあなたから小ボケの話を聞いていてよかったわ」

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「ほんとによかったわね。
第2の人生では、楽しみごとは先送りにしないでなるべく早く実現させてあげて、楽しいと思うことをたくさんさせてあげて。

90歳を超えていると、来年の今頃はあるかどうかわからないって思ってね。

楽しいことを十分に体験した時に、ボケもしないし、納得してこの世とお別れができるんじゃないかと思ってるのよ・・・」

 

 

 


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