新・本と映像の森 18 いぬいとみこ『北極のムーシカミーシカ』角川文庫
角川書店、1975年(昭和50年)発行、229ページ、定価260円
北極で生まれたシロクマの双子の兄弟、ムーシカとミーシカ。そして他のメスグマの子マーシカ。
この3匹が織りなす“クマ生”の喜びと苦難の物語です。
副主人公のアザラシの子オーラや白鳥のむすめユーリ、エスキモーの子タヤウトも魅力的です。
北極圏の生きものたち、きつねやキョクアジサシ、かもめたち。
児童文学ではあるが、生態学を踏まえて、生態系の頂点に位置するシロクマが、つねに「食べる側」にいることも、よく描かれている。
そして北極圏のきびしい気候と、不安定な氷。
オーロラや夜のおおぐま星座もすてきです。
児童文学ではなく、大人の動物小説として扱っても、いいくらいだ。
☆
その点では、「夏祭り」の章は必要だったのか、意見の分かれるところだろう。ボクは「いらない派」である。
これが作品のテーマを、あいまいにしていると思うのである。
すべての生き物が仲良くする一日、それは必要なのか?
☆
この作品が書かれた 年頃はそんなこともなかったが、今となっては地球温暖化で北極の氷が溶けてたいへんだ。
ムーシカミーシカの子孫たちは、どうなるんだろう。
ただし北極の氷がとけても海水面は上昇しません。気候は激変しますが。
南極大陸の氷がとけると海水面は上昇しますけど。