新・本と映像の森 31(古代4) 斉藤光政『偽書「東日流三郡誌」事件』新人物文庫、2009年
447ページ、定価本体762円。
「東日流外三郡誌」は「つがるそとさんぐんし」と読む。
筆者は青森県の地方紙である「東奧日報」の新聞記者。1992年のこと偶然に、「東日流三郡誌」のからむ訴訟事件に遭遇し、その後、長く、この事件とかかわることになる。
「東日流外三郡誌」は、青森県の1民間人・和田喜八郎さんが「祖先が執筆し、わが家に伝わった古文書類」と主張したが、偽書か真実江戸時代の古文書かで、論争がされてきた。
ボクは、偽書で間違いないと思う。
「うそでまとめたジョンガラ節」(三上)
筆者は新聞記者のセオリーどおり、現場や当事者の取材を繰り返し、本を構成している。だからこそ、そこに浮かび上がってくる、人間像がほんとうに、おもしろい。
飯詰村、市浦町をはじめ、秋田県田沢湖町や全国の人々に、精力的な取材がおかなわれている。
文書は『東日流外三郡誌』『丑寅日本記』『東日流六郡誌絵巻』など、多数。
総称して『和田家文書』ともいう。これは、むしろ『和田喜三郎文書』と言った方が、いいのではないか、と思う。
安部晋太郎も信じてしまったのか、田沢湖のほとりに顔を出す。いまの安部首相の父親である。祖先が「東日流外三郡誌」に出てくると信じたらしい。
最後に、取材は和田さんの生まれた家、「古文書伝承の現場か、古文書ねつ造の現場か」へ行き着いて、本は閉じられる。
ボクも、いろいろ語りたいことは多いが、ひとまず、これを閉じる。また語る機会は、あるだろう。