雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 32(哲学1) 井尻正二『銀の滴金の滴』築地書館、1981年

2017年03月23日 10時03分04秒 | 本と映像の森

 新・本と映像の森 32(哲学1) 井尻正二『銀の滴金の滴』築地書館、1981年

 213ページ、定価1200円

 とても面白いエッセイ集。

  < 目次 >

  Ⅰ 生活のあなかで、
  Ⅱ 教育の原野、
  Ⅲ 人の心、
  Ⅳ 科学者の世界、
  Ⅴ 哲学の泉、
  Ⅵ 青い鳥をもとめて

 著者111冊目の著書。ただし共著をふくむ

 たとえば、「理屈や法律は、他人が勝手につくったもので、自分が創造したものではない。したがって、それらに従う理屈は絶対にない、という理屈がなりたつ。」(Ⅰ、理屈)

 ゆえに、井尻さんの理屈に、ボクが「従う理屈は絶対にない、という理屈がなりたつ。」というわけである。



 いちばん紹介したいのは、フクロウとニワトリのはなしである。

 よくヘーゲルの言葉として「ミネルバのフクロウは、たそがれがやってくるとはじめてとびはじめて飛はじまる」(ヘーゲル『法の哲学』「序文」)

 それに対して、井尻さんは「われわれにとって必要な哲学は「天神様のニワトリは、暁とともに鳴きはじめる」たぐいのものでなくてはならない。」

 これは、まったくそのとおりである。



 著者は古生物学者で、戦後結成された「地団研(地学団体研究会)」の指導者です。というより、ボクにとっては岩波新書の『地球の歴史』『日本列島』『化石』の著者として、とてもなじみがある。

 その後、長いあいだ、地質学などを読んだことがなかったので、大陸移動説やプレート・テクトニクスの消長にも、うとかった。

 最近になって、その大陸移動説やプレート・テクトニクスに、地団研(地学団体研究会)が反対を続けたというのを知って、驚いた。

 この本の162ページを引用しよう。

 「大陸移動説は、アメリカ生れの海洋底拡大説と同盟をむすび、現在では「国定教科書」ー文部省検定済み教科書の古名ーなみの権威をもって学界に君臨している。」

 「しかし、大陸移動説も、海洋底拡大説も、まだ法則として確立した(確認した)ものでもなければ、ましてや科学的事実でもなく、まだ仮説の段階にある一学説だ、と私個人は考えている。」

 主要部分は、これで全部である。はたして、1981年という時点に、このような「仮説」認識が成り立つのだろうか。

 どうも、この部分は『科学論』の著者らしくない。

 反対なら反対で、書くものがかなりの率で本になる井尻さんなら、科学者らしく反論本を書けばいいのではないか。

 事実と資料に基づいて、150ページに著者が「科学はまず「事実」からはじまる」と書いているように。

 あるいは、地団研(地学団体研究会)が書いた反論があるのかも知れない。だれか、知ってる方があったら、教えてくください。

 なお井尻さんは、1999年に亡くなられました。